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十七話 何度でも…

「泣くな、ルイーズ。君には笑顔が似合う」

『ルゥ、泣かないで。君には笑顔が似合う。僕は、ルゥの笑顔が大好きだよ』


 かつて、内気で泣き虫だった頃のルイーズに、スタニスラスが涙を拭いながら何度もかけてくれた言葉。

 先ほどジェルヴェールが発したその一言に、記憶の中の声が重なった。胸の奥に温かなものが込み上げ、一筋の涙が頬を伝う。


 だが今は、感傷に浸っている時ではない。

 ルイーズは手の甲で涙をぬぐい、深く息を吸って気を引き締めた。


 ──さて、どうしたものか。


 吹き抜けの渡り廊下に佇みながら、ルイーズは状況の処理に頭を悩ませていた。

 すぐ傍には、倒れたままのルベン。そして、腕の中で意識を失ったジェルヴェールの身体を、ルイーズは支えている。

 授業の終わった学園には、すでに人気はない。だが、いつ誰かが通りかかるとも限らない。

 ルベンを放置して立ち去りたい気持ちは山々だったが、そうもいかないだろう。


「サビーヌ」

「お嬢様、ここに」


 声に応じて現れたのは、ルイーズの忠実なる護衛であるサビーヌだった。


「これからジル様を休ませるために、別室へ転移するわ。ルベン殿下も連れてきてちょうだい」

「承知しました」


 静かに頷くと、サビーヌは難なくルベンを抱え上げる。

 ルイーズは周囲をもう一度確認し、手のひらにピッピコのテンを呼び出して転移能力を発動した。


 転移先は応接室。

 広くて豪奢なソファが設えられたその部屋に、ルイーズはそっとジェルヴェールを寝かせた。


「……わたくしのせいだわ」


 穏やかな寝顔のはずなのに、ジェルヴェールは時折眉をひそめ、苦しげに息をつく。

 彼がこんな目に遭ったのは、すべて自分のせいだ。ルイーズの胸に、強い後悔が込み上げた。


 ──わたくしはただ、好きな人の傍にいたかっただけなのに。


 まるで、乙女ゲームで見た悲劇のルートをなぞっているようだった。

 本来の展開と違い、今回のきっかけはルベンだったとはいえ、ルイーズがジェルヴェールと一緒にいなければ、あの争いも起こらなかったかもしれない。


 ルイーズが身を引けば、彼が傷付くことも、巻き込まれることもなかったはずだ。

 そうわかっていても、離れることなんて出来なかった。


 会えなかった六年間。

 募る想いは心の奥で静かに、けれど確かに積み重なっていった。

 会いたくて、触れたくて、名を呼びたくて──それでも、姿は見えず、声も届かず。


 寂しくて、淋しくて、何度も心が壊れそうになった。

 幸福だったはずの思い出が、時に刃のように心を刺した。


 どれほど想い続けても、この恋が報われるかどうかはわからない。

 それでも、幼い頃に交わしたあの約束を思い出すたびにルイーズは、忘れることも諦めることもできなかった。

 一縷の望みに縋りながら、彼を想い続ける。どんなに道が険しくとも、たとえ痛みを伴おうとも。


「苦しませて、ごめんなさい。諦められなくて、ごめんなさい。……それでも、どうしようもなく、あなたのことが好きなのです」


 震える声で告げるルイーズの表情が、苦悶に歪む。

 ジェルヴェールの手をそっと握りしめ、懺悔するように胸元へと引き寄せた。眠るジェルヴェールに向かって謝るその姿に、サビーヌは目を背けたくなった。

 サビーヌにとって、ルイーズはまだまだ子供で、彼女が苦悩する姿を見る度に、何度新しい恋をして欲しいと願ったことか。それでも、ルイーズはジェルヴェールへの想いを決して手放さなかった。


 好きな人に存在すら忘れ去られ、ようやく再会を果たしても、お互いの存在が互いを傷つけてしまう。


 その現実はあまりに残酷で、サビーヌの目には、二人が近づこうとすればするほど、深く傷ついていくように映った。


「サビーヌ、ジル様をお願い」


 立ち上がったルイーズは、涙を堪えた気丈な表情でそう告げた。

 本当は、片時も離れたくない。けれど、ルベンを放置しておくわけにはいかない。


「わたくしが、ルベン殿下を保健室に連れて行ってくるわ」

「お嬢様、それでしたら私が──」


 サビーヌが申し出ようとしたが、ルイーズは首を振って拒否する。


「保健室には恐らく、ラシェル嬢と取り巻きの生徒たちがいるでしょう。最悪、レナルド殿下と、無理矢理連れてこられたソレンヌもいるかもしれないわ」


 その言葉に、サビーヌははっと息を呑んだ。

 一介の侍女が、王族や名門貴族の令息令嬢を前に立ち回るのは難しい。何かがあったとしても、それを止める力は、彼女にはない。


「ジル様のこと、お願いね」

「承知いたしました」


 ルイーズの頼みに、サビーヌは静かに頭を下げて応えた。


 そしてルイーズは、再び気を失ったままのルベンを抱き上げる。姫抱きで軽々とその身体を持ち上げる姿に、サビーヌは思わず目を細めた。お嬢様は強くなった。そう思わずにいられなかった。


 校舎へと颯爽に戻ったルイーズは、保健室へと向かう。その途中、まだ下校していなかった生徒たちが数人、廊下を歩いていたが、ルイーズが王子を抱えて歩く姿に驚いた様子だった。

 だが、そんな視線も気に留めることなく、足を進める。


 ──後日、ルベン殿下がお姫様抱っこされていたという噂が流れるでしょうね。


 陰で笑いものにされることは避けられない。だが、それもまた、ルイーズにとってはちょっとした意趣返しだった。


「失礼します。先生はいらっしゃいますか?」


 器用に片腕で扉を開け、中へと足を踏み入れた瞬間、ルイーズは思わず立ち止まった。

 そこには、予想だにしない顔ぶれが揃っていたのだ。


「お姉さま……?」


 室内にいたソレンヌが驚きに目を見開き、ルイーズを呼ぶ。

 ルイーズは静かに息を吐いた。案の定、レナルドとラシェルの姿もそこにある。

 ソレンヌが無理矢理連れて来られたことは間違いないと確信し、胸の奥にわずかな苛立ちが生じた。

 しかし、それ以上に驚いたのはロランとセレスタンの姿である。

 なぜ彼らがここにいるのか。この状況は一体どういうことなのか。ルイーズは咄嗟に思考を巡らせたが、目の前の光景だけですべてを察するのは無理があった。

 いまは考えても仕方がない。ルイーズは思考を切り替え、静かに室内を見渡した。


「ルベン!!」


 気を失っているルベンを見て、レナルドが声を上げた。


「ルベン殿下が急にわたくしを呼びに来られたのですが、急いでいたようで廊下で滑って頭を打たれてしまったのです。心配で保健室にお連れしましたが、王宮の医師に診ていただいたほうが良いかもしれませんわ」


 ルイーズはできるだけ眉尻を下げ、憂いを込めた声音で説明しながら、ラシェルの隣のベッドにルベンをそっと寝かせた。

 ちなみにここへ来る前に、ピッピコの能力でルベンの記憶を一部消去していた。目覚めたとしても、彼がルイーズを呼び止めたあたりまでは朧げに覚えているかもしれないが、それ以降のことは霞がかかったように曖昧なはずだ。


「それでは、わたくし達はこれで失礼いたしますわ。皆様、どうぞご機嫌よう」


 模範のような優雅なカーテシーをひとつ。ルイーズは踵を返し、そっとソレンヌの手を取って保健室の出口へと向かう。

 このまま、どさくさに紛れてソレンヌを回収できれば、と淡い期待を抱いていたが、そう上手くはいかなかった。


「待て、ルイーズ」


 案の定、鋭い声でレナルドに呼び止められた。


「どこへ行くつもりだ。それと、ソレンヌは置いていけ」


 舌打ちしたくなる衝動を押し殺し、ルイーズは微笑を崩さぬまま、くるりと振り返った。


「お待たせしている方がいらっしゃいますの。……ああ、それと、ロラン様とセレスタン様には内密なお話がございますの。どうか、ご一緒していただけませんか?」

「私は構わないよ」


 ロランは一瞬でルイーズの意図を汲み取り、即答した。


「ロラン殿下が行かれるのであれば、俺も行きます!」


 セレスタンもそれに倣う。

 ラシェルの横やりで場がこじれた今、ルイーズの意を酌んで一刻も早くソレンヌをここから引き離すのが最善だとロランは判断したのだった。


「レナルド王子、話の続きはまた明日伺ってもよろしいかな?」

「……っ、はい……」


 ロランにそう促され、レナルドは明らかに不満を滲ませた顔で一拍置き、しぶしぶ頷いた。

 その一連のやりとりに、何かしらの因縁を感じたルイーズは、それ以上詮索せず黙って見守った。

 一方でラシェルが一人、何やらまだ喚いていたが、ルイーズは無視を決め込み、静かに保健室を後にした。


 ソレンヌ、ロラン、セレスタンの三人は、迷うことなく彼女の後に続く。

 廊下を進みながら、ロランがふと口を開いた。


「ところで、ルイーズ嬢。ジェルヴェールの姿が見えないが……彼はどこに?」


 そう尋ねられることは覚悟していた。

 さすがは一国の王子。柔らかな笑みを湛えながらも、その瞳の奥には明確な疑念が宿っている。

 ロランは、ジェルヴェールがルイーズを放っておけるような人間でないことを知っていた。

 しかも、ルイーズはルベンを一人で抱えてここに現れた。

 演習場には彼女と親しいレオポルドやドナシアンもいたはずだ。ルイーズとルベンの接触を放っておくはずがない。にもかかわらず、ルイーズは単独で動いていた。

 つまり、ジェルヴェールが何かしらの理由で動けない状態にあると、ロランは見抜いていたのだ。


「お話というのは、ジェルヴェール様のことですわ。今は、わたくしの侍女サビーヌが介抱しております」

「それは、どういうことだ?」


 ロランの声音が微かに鋭くなる。


「詳しい説明は、場所を移してお話いたしますわ。ソレンヌ、応接室に転移をお願いできるかしら」

「は、はい……。大丈夫ですわ」


 ルイーズはポケットから小さな袋を取り出し、中から一つの石を取り出してソレンヌに手渡す。

 ソレンヌは事の経緯を把握しきれていないようだったが、言われるままに頷いて石を受け取った。


「皆様、ソレンヌの半径二メートル以内にお集まりくださいませ」


 ルイーズの言葉に従い、一行がソレンヌの周囲に集まる。


「では、転移します」


 ソレンヌが握ったその石は、グエナエルから譲り受けた《パワーストーン》である。

 ストレンジと呼ばれる特殊能力が封じ込められた結晶体──それがパワーストーンだ。

 本来、ストレンジを込めたパワーストーンを使うためには、専用の装置に装着するか、特殊な加工を施す必要がある。無加工のままでは、使用者のストレンジと適性が一致しなければ力を引き出すことはできない。

 たとえば、水のストレンジを持つルイーズが、エドの“身体強化”のストレンジが込められたパワーストーンを使おうとしても、通常は行使できないのだ。


 だが、ソレンヌはその例外である。

 彼女は、どのようなストレンジが封じられたパワーストーンであっても、機械を介さずに直接力を発動させることができる“特異な能力”を持っている。


 ソレンヌのストレンジ領域は〈三域〉から〈四域〉相当。

 その力に応じて、たとえ元の持ち主の能力が劣っていても、彼女の手にかかればパワーストーンは本来以上の性能を発揮する。

 ただし、その逆もまた然り。ソレンヌよりも高い領域の者が込めた力であっても、発揮されるのはあくまで彼女の力量に応じた出力となる。


 なお、パワーストーンは内部に込められたストレンジ量が尽きれば、その場で霧のように消滅する仕組みだ。

 今回使用したのは、四域でも屈指の力を持つグエナエルが作ったもの。まだ原型を留めているため、あと数回は使用可能と見られる。


 一瞬の静寂の後、光が弾けた。

 ソレンヌの手の中で石が光を放ち、瞬く間に一行の姿がその場から消えた。


 転移先の応接室に到着してから、セレスタンがぽつりと尋ねた。


「ソレンヌ嬢のストレンジは瞬間移動だったんですね」

「いいえ。わたくしのストレンジは、【パワーストーンの行使】でございますわ」


 ソレンヌは控えめにそう答え、両手を胸元で組み直した。

 ストレンジを自ら使うのではなく、“パワーストーンを使いこなす力”。

 それが彼女の異能であり、ゆえにソレンヌは、ありとあらゆるストレンジの力を“間接的に”引き出すことができる。文字通り、ストレンジの媒介者とでも言うべき存在だった。


「ジェルヴェール!」


 ソファに横たわるジェルヴェールの姿を見つけ、ロランが駆け寄った。

 規則正しく上下する胸元を見て、眠っているだけだと確認し、安堵の息を漏らす。


「話を伺ってもいいかな、ルイーズ嬢」


 四人は、ジェルヴェールが眠るソファーとは別の席に、対面する形で腰を下ろす。

 ジェルヴェールはそのままソファで静かに眠っていた。

 ロランの問いかけに、ルイーズは一つ頷き、包み隠さず事の顛末を語った。

 彼が倒れた経緯を順を追って説明した。ただし、“スタニスラス”という名と、彼がダルシアク国の第一王子であるという情報だけは伏せたまま。


「……なるほど。君は……その、気づいていたのかい?」


 淡々とした報告の中に紛れ込んだ微細な言葉の選び方と、語り口。

 それらを敏感に察知したロランが、重く静かな声で問う。


「ええ。存じ上げておりました」

「……そうか」


 短い返答のあと、部屋に沈黙が落ちる。

 静まり返った室内に、かすかに時計の針が刻む音だけが響く。

 ソレンヌとセレスタンは状況を掴みかね、ただ固く座ったまま、二人の間に漂う張り詰めた空気に身を縮めていた。


 その時──


「ん……っ」


 微かな唸り声と共に、ソファに横たわっていたジェルヴェールが身じろぐ。ルイーズは咄嗟に席を立った。

 隣国の王太子が目の前にいるということも忘れ、思わず身体が動いてしまう。

 その動きに続くように、ロランも席を立ち、彼女に遅れずジェルヴェールの元へ向かう。


「……」


 ゆっくりと瞼が開く。

 静かに、しかし確かに視線を動かしながら、目に映る情報を取り込んで状況を把握しようとするジェルヴェール。


「お気付きですか!?」

「……目が覚めたかい」


 ルイーズの声に応えるように、彼は二人の姿を確認し、一瞬目を見開く。

 だがすぐに感情を制し、静かに上体を起こした。


「ロラン殿下……人払いをお願いできますか」


 目覚めて最初に口にしたのは、予想外の要望だった。


「……承知した」


 ロランは即座に頷き、振り返って他の者たちに告げる。


「申し訳ないが、皆には一度、部屋の外で待機してもらえるかな」


 続けて、ジェルヴェールは付け加えた。


「ルイーズ嬢には、ここに残ってもらってほしい」


 立ち上がろうとしていたルイーズは、その言葉にぴたりと動きを止めた。


「……分かった。では、ルイーズ嬢だけ、このまま残ってくれ」

「かしこまりました」


 ソレンヌとセレスタン、そして介抱していたサビーヌも一礼し、部屋を後にする。

 扉が静かに閉じられたあと、室内に残ったのはルイーズ、ジェルヴェール、ロランの三人だけとなった。


「ロラン殿下、ありがとうございます。早速ですが、私の話を聞いていただけますか」


 ジェルヴェールはそう言って、まっすぐにロランを見つめた。その瞳には、これまでの冷ややかな光ではなく、どこか芯の通った確かな意志が宿っていた。

 その変化に、ルイーズとロランはすぐに気付いた。


「私の本当の名前はスタニスラス。ダルシアク国の第一王子です。すべてを思い出したわけではありませんし、信じがたい話だとは思いますが……恐らく弟、ルベンとの接触をきっかけに、本来の名を思い出しました」


 ジェルヴェールの…いや、スタニスラスの告白に、その場の空気が一変する。

 ゲームの途中でも彼は第一王子である事を思い出していた。しかしここは現実であり、彼が思い出したという“記憶”がどこまでのものなのか。それはルイーズにとっても重要な意味を持っていた。

 ルイーズをこの場に残し、秘密を打ち明けたということは、全て思い出したということだろうか。

 ルイーズの胸が期待と不安で早鐘を打つ。


「そうか、思い出したのか。では、私と君が幼少の頃から友人だったことも、覚えているかい?」


 ロランの問いに、スタニスラスは一瞬驚いたように瞠目した後、すまなそうに視線を落とし、静かに首を横に振った。

 ロランは寂しげに微笑み、「そうか」と一言だけ返す。


「では、何をどこまで思い出したんだ?ルイーズ嬢をこの場に残したということは……彼女のことは?」


 問いかけとともに、スタニスラスがゆっくりとルイーズの方へ顔を向ける。視線が重なる。

 その瞬間、彼女の鼓動が跳ね上がった。期待、不安、恐れ、希望──複雑に入り混じった感情が胸に渦を巻く。無意識に、ルイーズは胸元を押さえた。


 スタニスラスの表情がかすかに揺らぎ、そっと手を伸ばして、彼女の髪に触れた。


「……まだ、思い出せない。思い出したのは、私の立場と名前だけです」


 その言葉に、ルイーズの心が氷のように冷たく凍えた。


「だけど、ルイーズ嬢。君は、私のことを知っているんだろう?なぜ、君はいつもそんなに泣きそうな目で私を見るんだ?君と私は、どういう関係だった?君が悲しそうに私を見るたびに、胸が締め付けられるように苦しくなるんだ……」


 毛先に触れたまま、スタニスラスは眉を寄せて苦しげに言葉を紡ぐ。


 ──なんて、顔をなさるんですか。


 ルイーズの心が、軋む。

 彼にこんな苦しげな表情をさせたかったわけじゃない。

 

 ── 私や王妃様を思い出すことはそんなにも苦しい事なのですか…。


 彼の額にはうっすらと汗が浮かび、眉間には深い皺が刻まれている。記憶を辿ろうとするたびに頭痛に襲われているのだろう。

 ルイーズは、そっとその手に触れ、髪に添えられていた彼の手を取った。


「無理に思い出そうとしなくて構いませんわ」


 そう言って、小さく首を振る。


「記憶を失う前のスタン様も、記憶を失ってからのジル様も、どちらもわたくしの愛しいお方に変わりありません。わたくしは、何度でも、何回でも、あなたに恋をいたしますわ」


 彼の手を両手で包み込み、そっと頬へと寄せる。少し冷たいその感触に、懐かしさと安堵が胸に広がる。


 名前がいくつ変わろうとも、彼の心根が変わらない限り、ルイーズの想いは変わらない。


「いつまでも、どんなあなたでもお慕いしておりますわ」

何よりも 誰よりも 君だけ愛しくて …



次回からストレンジ学園は大型連休に入ります。

大型連休では生徒誘拐事件勃発です!

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