見守る事しかできない状況が辛いの
小さなわが子を残して、先に死んでしまった。
なんて恐ろしいことをしてしまったのだろう。
わが子は洞窟の中を心細い顔をしながら、さまよっている。
数日前、観光のために洞窟に入ったけれど、その時に起こった地震の影響で、あちこち崩落があった。
落ちてくる岩は大きくて、子供が潰されては大変だ。
そう思った私は、子供をとっさにかばった。
だから幸いにも、我が子に落石が当たることはなかった。
けれど、その代わり死神は私に目をつけたようだ。
私の頭に大きな岩が当たってしまったのだ。
それで動けなくなった私は、数日後におそらく血の流しすぎが原因で、命を落とした。
ギリギリまで迷った。
子どもに、私を見捨てて外に出るように言うべきかどうか。
洞窟の中はまだ、あちこち小石が落ちてくるし、こういう時は動かずに体力を温存したほうがいいと思ったからだ。
しかし、救助が来る気配はない。
私は、最後の力をふりしぼって、我が子に外に出るよう促した。
子供はもう何もしゃべらなくなった私のそばから、数時間程はなれようとしなかったが、決意して歩き出したようだ。
どうか、無事に外に出られますように。
私には、そう祈ることしかできない。
死んでしまったこの身ではもう、何があってもかばう事はできないから。