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魔女と天使の女子会(見た目男女比2:1)

お読みいただききありがとうございます

「えと、天使様のことを教えて欲しい、ですか?」


つい先日、天使の巣窟である開拓地に放り込まれたラートリアは今、2人のプレイヤーにそうお願いされて困惑していた。


「あの、天使様──あ、お二人も天使でしたか。ドットレス様のことは、お二人の方が詳しいのではないでしょうか?」

「……すれ違った」

「ええでええで、うちらが天使とかムズ痒いわ。そんで理由か?守護神様がどっか行った後に、うちらはこの開拓地に入ったんでな。何やうちらの知らん守護神様を教えて貰いたいんや」

「はぁ。えと、守護神……?」


プレイヤー──ノアとエンドリューロンは『ネバーランド』の卒業生である。当然ドットレスとも面識があり、卒業後もミンストレルやジャガイモを通じて交流があった。

その様子を表すのは、色恋よりもファンの心理に近い。ノアの兄のサザナミはやや複雑な顔をしているが。


「ああそれ渾名や。色々あってな。でも本人は嫌がってるから内緒な」

「守護神、ですか。神界も色々あるのですね……」

「そういう理解でええわ。で、どや?代わりにこちらからも色々教えたるわ」

「別にそれぐらいなら構いませんが……」

「よっしゃ、交渉成立やな」

「……(ぐっ)」


大袈裟にも見える喜びようにラートリアは首を傾げたが、適当に地面に布を敷いて歓談に入った。




「──とまあ、故郷であるビネガー男爵領に入るまでは特に迷惑をかけてしまったのです」

「思い詰め過ぎてたんちゃうか?」

「……混乱してた?」

「そうですね、私としてはすっかり3年前のことなので細かい部分は朧気ですが……記憶も欠けている状態で、世話を焼こうとしてくる天使様を少し怖がっていた部分もあったと思います」

「そら確かに怖いな!」

「……ストーカー、みたい?」


ノアの指摘にエンドリューロンが吹き出す。


「わははっ、知らん奴にあーだこーだされるのは確かにそうやな!」

「ど、どうなんでしょう?その、情熱的な方とかはあまり見たことはないので何とも言い難く」

「ラートリアはんは良い人やな。こんなんノリで笑ってりゃあええんやで」

「……ノリで、おけ」

「は、はぁ」


ラートリアは初めて接するタイプのエンドリューロンに戸惑うが、別段悪い気持ちにはならなかった。


「ほんでどうなったん?そっからが本番やろ?」

「そうですね。その後も色々と説得されましたよ。自分は天使だけど人間で、それよりも私の方が天使に近いとかって」

「プロポーズやん」

「……ひゅーひゅー」

「ち、違っ!?そうじゃなくてですね!?ええと、ええと──」

「まあまあ落ち着きなされ。自虐気味だったラートリアはんをあの手この手で喜ばそうとしたんやろ?」

「そ、そうです!」

「……ひゅーひゅー」

「完全に挙動が不器用彼氏のそれやねんなぁ」

「違いますからぁ!そもそも天使様は女の子ですよね?いえ、天使に性別があるのかわからないのですが」

「「……ああー」」

「?」


ノアとエンドリューロンは今更ながら認識の差異に気が付く。2人はドットレスの中身が男と知っているが、ラートリアは知らないのだ。

完全に恋バナの気分でいた2人だったが──


「……いや百合もありか?汚いものがないし」

「……ありよりのありー」

「続き!いいですか!?」

「あはは堪忍な!結局どうして付いていこうと思うたん?」

「んん。それは最後の天使様の表情がとても寂しそうに見えたので……」

「(やっぱり惚気であってるよな?)」

「……(ぐっ)」


これ以上弄ると拗ねるだろうと直感的に嗅ぎ分けたエンドリューロンは静かに話を聞く。


「──最後は、天使様だけが私を生き延びさせようと考えてくださって。魔女にされたのは驚きましたが」

「ほーん。でも良かったんか?昨日からの他の住人達の守護神様への態度を見てると、堕天使も魔女もあまり歓迎されないんやろ?」

「確かにそうでも、それは永遠ではありませんし。それにここには、天使様がいらっしゃいますから」

「(特大の来おったで。ごちそうさまやな)」

「(……ひゅーひゅー。ごちそうさま)」


甘い話には耐性のある2人。胃もたれせずに消化して楽しく聞いていると、素朴な疑問をラートリアに投げる。


「にしても魔女ってなんや?守護神様もよう分かってなさそうやったけど」

「詳しいことは私もわかりませんが……大昔からいる不老不死の存在で、戯れに戦争を始めたり、戦争を終わらせたり、災害を起こしたりしてきた存在なので、あまり好かれてはいないとしか」

「そりゃまたけったいな存在やな」

「……ラートリアも、そうなる?」

「どうなんでしょう?正直今でも魔女の実感はないんですよね。特に変わったこともありませんし」


ラートリアは自身の体をあれこれ動かしてマジマジと見下ろしたが、すぐに止めて座り直した。


「私の方は以上ですね。エンドリューロン様、天使様の神界での振る舞いを是非聞いてみたいです」

「お?なんや、澄ました顔してラートリアはん興味津々やんか」

「……教えて、しんぜよー」

「そうやなぁ、守護神様の由来でもどや?」

「それは、渾名の付いた理由ということですか?」

「せやせや。あんなぁ、ラートリアはんが神界ゆうところにもな──」


話は盛り上がり、時間はあっという間に過ぎ去っていく。

この日から3人は意気投合し、一緒に行動する姿がしばしば見られるようになるのだった。

***用語解説***

【女子会】

女性の集い。男にとっての不可侵領域。


琥珀「ねえ、私ハブられたのどうして?」

福「他意はないで。偶々見かけたから話しかけただけや」

鈴「ん」

琥珀「本当に?」

福「ほんまほんま──7割くらい」

琥珀「3割わざとじゃん!?次は私も混ぜてー!」

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