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ゲルマンの相談事

お読みいただききありがとうございます

「ちょっといいか?」


防衛戦が終わって翌日の9月12日。子どもたちの誘蛾灯の役になっている俺はゲルマンから話しかけられていた。


「どうした?」

「いやその、俺の工房ができただろ?」

「できたな」

「工具がな、ないんだよ」


おっと、話の流れが読めたぞ?


「つまり工具の調達と、ついでに材料の木材を集めて欲しいってところか?」

「話が早くて助かる。頼めるか?」

「あー、俺は心情的に受けたいんだけど……」


話の展開が分かっていたため、俺は少し気まずく答えた。


「諸事情で俺は、その手の依頼は受けられなくてな……」

「どんな事情だよ」


奴隷の事情だよ。


「でもそうだな、俺じゃなくて──」


第98開拓地のプレイヤー19人で初期職業の内訳を出すと、美術家2人、小説家1人、音楽家3人、彫刻家13人と非常に偏りが発生している。彫刻家は全て子ども達で、年長組はそれ以外の3職業だ。

ジャガイモとエンドリューロンが美術家で、ノアが小説家。マイナーの中では1番人数が多い音楽家は俺と──


「ミンストレルとサザナミ。あいつらなら引き受けてくれると思う」

「ミンストレルはともかく、サザナミか……」


ゲルマンが少し難しい顔をする。


「何?この短期間でもうトラブったのか?」

「いやそうじゃなくて、その、話しかけずらい、というか……」

「……?あ」


ゲルマンがモジモジしていて、こいつまさか──と考えたところで、今の俺たちのアバターを思い出す。

リアルでは重度シスコンの兄貴なサザナミだが、GDOでは高身長のアルビノな美人さんだ。


確か鬼魔族と巨魔族のハーフって言ってたっけ?MPとDEXが駄々下がりする代わりにHPが高い組み合わせだ。

『ネバーランド』でもあれくらい背が高かった。羨ましい限りである。10……いや5cm分けて欲しい。


……ん?待て待て、そうだとしてもゲルマンお前、そんな純情派だったか?

あ、思い返してみれば今リアの顔とか見れてない時があった気がする……


……まあいいや。


「サザナミはノアの話題にさえならなければ至って普通の常識人だから、安心してくれ」

「お、おう?」


とりあえず、ゲルマンを送ってやろう。




「──というわけで、楽器が欲しい2人にはいいチャンスだから頼む」

クエスト(おつかい)ってわけだ。いいよー。正直ドレスの楽器羨ましかったんだよね」

「というか、多分彫刻工房を作るときも同じ事言われますよね?少し余分に集めてきますか」

「頼むわ。俺は適当に誘蛾灯してるから。ミンストレルは自分でユニーククエスト探して」


予想通りに2人に快諾して貰った。


「あ、でもそこらで落ちてる適当な石でいいの?木を加工するなら兎の牙とかが一番いいらしいけど」

「そうだな……俺も付いていっていいか?」

「おー、護衛依頼。了解了解」


と言うわけで、ゲルマンを2人に引き渡して、俺は帰還を待った。




夕方頃、ゲルマン達が帰ってきた。何故かミンストレルとサザナミはボロボロだった。


「……奥まで行ってきたのか?」

「まあそんな感じ。いやぁ、ユニーククエスト由来のNPCの依頼、甘く見てたっすわー」

「若くても職人ですね。こだわりが強い」

「わ、悪ぃ、2人とも。必ず作品で返すからな!」

「楽しみにしてるよー」


そう言ってゲルマンは足早に工房へと帰っていく。


「……何を狩ってきたんだ?」

「金ピカの兎とトレントの希少種。道中も少し」

「トレントの強さは知らないけど、よく希少種倒せたな」


先日の防衛戦で大量発生するという暴挙をかましてくれた希少種テラレプス・オーラウムだが、希少種は一般種と比べてかなり強い。俺のGDO初キル持っていったのもあいつだ。

しかし元がテラレプスということもあって、希少種であっても慣れれば対処がしやすい。


トレントはこの辺りではそこそこ強めに位置するエネミーで、その希少種となれば……俺も初見ソロでいける、といいなぁ。


「ちなみにトレントの希少種と激戦をしてボロボロになった後に金ピカ兎との戦闘でした。防衛戦よりもヒリヒリしましたね。レアドロ落としてたまるかって」

「それはお疲れ様、本当に」


サザナミが遠い目をしていたので、取り敢えず太腿をポンポンと叩いた。くっ、身長差が……


「どちらもゲルマンが見つけたんだよね。本人曰く、幽霊な3匹に見つけてもらったとか」

「え、イマジナリーフレンド索敵に使えるの?強くない?」

「まあゲルマン自体は、弱くはないけどプレイヤーよりは、ってところだけど」

「あー」


索敵が必要になるのは前線だからなぁ。戦力がないNPCを連れて行くのは難しいか。




────────────────


装備『白木のヴァイオリン』 500/500

分類:擦弦楽器(熟練度0/1000)

演奏効果強化(小)、演奏範囲上昇(小)

重量:1


『トレント・アルビカンス』の木材から作られたヴァイオリン。Bremenの刻印がなされている。


────────────────


装備『白木のリコーダー』 500/500

分類:無簧木管楽器(熟練度0/1000)

演奏効果強化(小)、演奏範囲上昇(小)

重量:1


『トレント・アルビカンス』の木材から作られたリコーダー。Bremenの刻印がなされている。


────────────────


翌日、ゲルマンが持ってきた楽器は、聖遺物と比べると圧倒的に弱いが。


「掲示板では普通、極小効果が1つ付くだけだから、大分すごいよ!?」


ミンストレルは興奮していた。

***用語解説***

【トレント】

樹木のケモノ。初心者エリアの雑魚敵の中では最強格だが、その中でも希少種はエリアボスを超える強さを誇る。希少種トレント・アルビカンスは白いトレントだが、普段は普通の樹木の樹皮を纏っているため見つけるのは困難。主な攻撃方法は枝殴り。希少種はそこに地中からの根による奇襲が加わる。


一「木魚と比べるとどっちが強いんだ?」

リア「そうですね、ソールラムスはマモノなので普通のトレントよりは強いですが、希少種だと同格かもしれません。魔法を使わない代わりに、攻撃と防御は優れていたかと」

一「つまり、遠距離で倒すのがベストか?」

リア「そうですね。ただ弓は効果が薄い他、魔法だと素材が劣化してしまうので、難しいところです」

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