夫婦の関係とは?
美姫は暇でゴロゴロとしていた日曜日、
メールで梨花と出かける。
美姫の行きたい店ではなく、梨花の好きな
お店へと行く事になり。
我慢をして付き合っていた。
人気というスイーツのお店に入り、
そこで近所の友達のお姉さんが働いていた。
姫と夫妻の世界
ベッドの上でゴロゴロと本を読んでいた。
「暇だぁ」
今日は学校もなければ、何もない。
お出かけをしてもいいなぁ〜、
誰か誘おうかな?
そんな事を考えていた。
すると、
ピロリーン
メール音が鳴った。
携帯電話をみると、梨花からのメッセージだ。
「どこか食べに行かない?」
やった!ナイスタイミング!
美樹はOKのスタンプを押し、服を着替える。
集合場所を決めると、急いで向かった。
私の名前は岡田美姫。どこにでもいる女子高生。
成績も普通、容姿も普通。
体が弱い為に、ベッドで寝ている事が多い。
しかし!気分の良い日には、こうやってお出かけも楽しめちゃうのだ!
「美姫、遅いよ〜」
と、顔を膨らませている少女は、
少ない友達の中の1人である。
名前は梨花。
可愛くて誰からも好かれるタイプである。
「ごめんごめん」
すぐに家は出たが、間に合ってはいなかった。
気になるお店や神社があると、見入ってしまう。
何回かふらふらと立ち寄ってしまった。
美姫が謝ると梨花は機嫌を直し
「じゃ、行こっか」
と、美姫の腕を引っ張って歩く。
梨花はオススメのスイーツのお店を見つけたらしい。甘いものに目がない梨花は、目を輝かせていた。
美姫は腕を引っ張られるままに、スイーツのお店へと連れていかれるのだった。
……服も見たいし、本屋にも行きたいんだけどな。
言いたい気持ちを、ぐっと堪える。
スイーツのお店が終わったら、きっと解放してくれるだろう。
そう考えて、今は、と言葉を飲み込んだ。
スイーツのお店に着くと、そこは女の子達が好きそうな、可愛いお店だった。
いちごやハートが彩られ、世間に慣れていない美姫は少し入るのを躊躇う。
男性はきっと入りにくいんじゃないだろうか。
可愛いものが大好きな梨花は、ますます目を輝かせていた。テンションが上がっているようで、
キャーと声を上げ、手を震わせている。
たじろいで後退りをする美姫の腕をまた掴み、
店の中へと入るのだった。
「いらっしゃいませ」
店員さんが明るい笑顔で迎えてくれる。
中は外よりも落ち着くイメージで、
いちごとハートの数は抑えられていた。
席に座るとメニューを渡される。
美姫はメニューを見るが、よく分からない。
どう選べばいいのか。
「美姫はパフェでいい?」
梨花の声にコクコクと首を縦に振る。
梨花は何回か来てるようで、慣れた様に注文をしていた。
「よくここに来るの?」
周りの邪魔にならないようにと、声を小さくして
梨花に聞く。
「友達のお姉さんが働いてるのよ」
梨花は自慢のように、鼻をふんと鳴らす。
そのお友達と家が近所で、小さい頃から一緒に遊んでいたらしい。
家にも遊びに行っていたので、お姉さんとも仲が良くなったようだ。
よくお菓子を作ってくれていた。
遊びに行くたびに、それが楽しみになっていた。
最近は結婚をして、新しい家に引っ越しをしたらしい。
お姉さんが作るお菓子を食べたい!
友達に聞いてみると、
この店で働いている事を知ったのだ。
「あら!来てくれたの?」
そのお姉さんが話をしていると現れて、
梨花に声をかけた。
梨花と嬉しそうに挨拶を交わし、梨花は私を紹介
してくれた。
私はペコリと頭を下げる。
「ゆっくりしていってね」
と、お姉さんは手を振りながら仕事へと戻っていった。
「はぁー素敵な人だね、綺麗だわ〜」
顔に手を当てながらポーっとする私に、
パフェ来たわよ!と、足でつつく梨花だった。
「美味しかったねー」
帰り道にパフェの感想を聞きつつ、次の店を探す。
美姫は本屋に寄りたくて、ウズウズしていた。
お気に入りの新刊が今日発売なのだ。
しかし、梨花は先々と歩き過ぎていく。
服屋も本屋も過ぎてしまい、ついたのはドラッグストア。
……私、連れ回されてるだけ?
梨花に付き合う以上は、我慢をするしかなかった。
家に着くなり、くたくたになり、ベッドに倒れ込む。
……疲れたぁ
気を使い過ぎた、梨花にも人混みにも。
熱が出てきそうだ。
「あ、新刊を買わないと」
諦めきれずに、今度は一人で買い物にいく。
すでに夕方になっていて、日が暮れていた。
夜の雰囲気も好きだな。
車のテールランプや街の灯りがキラキラとしてみえた。
ふと、公園を通り過ぎると、
梨花と行ったパフェのお店にいたお姉さんが、
ベンチに座っていた。
なんだか、泣いているような?
「こんばんは」
少し様子を伺いながら、声をかけてみる。
覚えてるだろうか。
「あら、昼間に梨花ちゃんと来ていたお友達ね」
ちゃんと覚えてくれていた事にびっくりし、美姫は
胸を撫で下ろした。
「こんなところで、どうしたんですか?」
座っていいですか?と、
お姉さんの横にそっと座る。
お姉さんはポツリポツリと話をし始めた。
新婚生活から一年して、赤ちゃんが産まれた。
みんな喜んでいたし、お姉さんも嬉しかった。
しかし、育児や仕事に追われて、毎日が辛くなってしまった。
睡眠も食事もあまり取れず、自分の時間もない。
自分の時間として仕事に出たものの、
育児を放棄していると夫から責められる。
家事や食事の用意も出来ない嫁はいらない、
仕事を辞めればいいじゃないか。と。
お姉さんは怒っているようだった。
なぜ私がこんなに頑張っているのに。
なぜ私が育児をしないといけないのか。
なぜ、なぜ。
なぜ自分を責められなければならないのか。
「言いたいことを我慢していたんですね」
そう美姫がポツリと言うと、
お姉さんはボロボロと泣き出した。
「そうだ、私、我慢して疲れたんだ」
疲れていても休まなかった。
弱音も吐く事もなく、育児も仕事も頑張っていた。
家事も夫の為にやっていたし、幸せになりたいからと頑張っていた。
その頑張っていた緊張の糸が、切れてしまったのだ。
「弱音、吐いていいと思います」
美姫はお姉さんの目を見ながら、そう言った。
お姉さんはハッと気付いたようだった。
育児で疲れたなら、疲れた!って言っていいんだ。
そもそも、一人で何とかしようとしていた。
夫に一言でも、手伝って欲しい!と頼っただろうか。
仕事は私の時間だから大切にしたい!と、
想いを伝えた事はあっただろうか。
夫を信頼していただろうか。
本当は?
幸せな家族を作りたい。
なら、話し合いも必要だ。
これからの困難な事も乗り越えて行けるように。
お姉さんの泣いていた顔が、
顔を上げて目には光が戻っていた。
もう、大丈夫だろう。
美姫は「では」と、挨拶を交わし、
本屋へと歩き出した。
無事、新刊を手に入れた美姫は、
家でゆっくりと読んでいた。
……プルルル
携帯電話が鳴る。
「はい」と出ると、梨花からだった。
「聞いてよ!お姉さん、旦那さんと喧嘩したんだって!でね!」
どうやら、お姉さんは、
言いたい事を我慢していたのを吐き出せたみたいだ。
喧嘩をするのが、悪い訳じゃない。
ただ、お互いの意見を出し合い、
そこから新しいものを作り出せばいいだけ。
別々の人ではなく、
新しい家族なのだから。
美姫はうんうんと頷きながら聞いていた。
が、梨花は話が長い。
終わりそうになく、ダラダラと続く会話に、
美姫は我慢するのをやめた。
「今読みたい本があるから、また学校で聞くね」
プツリと携帯を切り、
やっぱり我慢はいけないよね。と、
本をまた読み始めるのだった。
いろいろ連れ回されヘトヘトになった美姫。
一度帰り、目当てのものをと、また買い物に繰り出す。
すると道中にお姉さんを見かけて、声をかけてみると。
我慢を溜めていたお姉さんの心を、溶かして気付かせていく美姫の言葉。
言いたい事を我慢するのはやめようと決意する。