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ライトノベル=ポルノという式

作者:

ver.1.1.0.3.0


皆さんこんにちは!

バレ噺が大好きな本棚の紙魚が()ててみる独断と偏見に満ちたあざとい題名のランキング論です。

(ちなみに漢字の意味的にも間違ってない⋯筈!)


さて。

ラノベ界隈では2匹目の3匹目の4匹目の⋯⋯∞匹目の泥鰌を狙うのが当たり前、作者が違うだけのどこを切っても金太郎!な飴に類似した商いが横行しておりまして、その青田買い的な蘖の、いやどっちかって言うと穭(さあ辞典引けよお前ら!)の大本ともなっている「小説家になろう」ですが、ここのところ頻繁に目にするのが「ランキング上位って全部似たり寄ったりじゃね? なんなん?」「どこ見ても流行りの同じような話ばっかりじゃね? なんなん?」という愚痴です。


あーまーねー、分かるよ言いたいことは。

アイディアの剽窃(ひょうせつ)は著作権法に反しないとは言えすごいよねー。

どれが誰の作品だか分かんなくなるくらい俺tueeeで、追放でざまぁでチートで無双でハーレムだよねー。


でも、と言います。

しかし、と。

それは当たり前のことです。

なぜなら、そういった「現在」の所のラノベらしいラノベ、今読まれている、一見して何がどう違うのかわからないほぼ同じテーマの反復(da capo)若しくは残響(echo)である作品群は、ある種のカタルシスを得るための装置でしかないからです。

そしてポルノグラフィもまた、性衝動を解消し欲望を解放するための装置です。

その在り方のなんと似かよっていることか。


なべてそれらは「受け手を気持ち良くする」ための道具です。


どんな形であれ等身大の自分を肯定され、その身に剰る能力を/ポテンツ(固いチンコ)を得、(己にとって)不合理/不条理であるとする世界を/女たちを圧倒し蹂躙し歓迎される。

そのままでいいんだよと世界に囁かれ、まさにその平々凡々たる資質によって選ばれ、本来なら得られるはずもなかった(あらゆる意味での)富を手に入れる。

発見され賦与され称賛され獲得する。


その結果として享受する、快楽のための回路。

ハーレクインなどもその裡に含まれると思います(e.g. こんなに目立たない普通の私がスーパーダーリンに溺愛され女として最高の幸せを!)。


脳が快楽を感じるために必要なボタンは決まっていて、しかもそこに「手っ取り早く」という要求があるならば、詳細な心理経緯やもどかしい行き違いのストーリーの繰り返し、風俗や環境や場景描写、長大な時系列、重厚な書き込みなどは不必要です。

必要最小限の労力で最大効果を出し(一番気持ちよくなり)たい。

コストパフォーマンスの良さこそが消費者の欲する所なのです。

キックするために効率の良いスターター、あるいは弾丸を打ち出すために最適の撃針。

それがポルノグラフィであり、今のラノベの役割でしょう。

必要なのは受け手が気持ちいいと感じることのできる舞台立て。

条件を揃え(御都合主義でテンプレ)適当(いい加減)で聞こえのいい理屈の上に成り立つ、身勝手で個人的な形振(なりふ)り構わない自慰のためのストーリー。

そのルールに(のっと)った物語にオリジナリティなど望むべくもなく、類型のストーリーで如何に手数(てかず)を増やすかだけが命題となるのは当然です。

その結果が今のランキングと言うわけです。


ポルノはもう、様式美だけで成り立つジャンルだと思います。

寝取られるための妻、痴漢されるための女子高生、セクハラされるための女性ビジネ(ポリティカル)スパーソン(コレクトネス)

いやよいやよ、やめてやめてと懇願しながらの、あるいはソノ気満々でマウントし君臨するつもりで誘い、しかしながらの快楽堕ち。

極端に収斂してしまえば、たった一本のY染色体の表現型である雄性生殖器(つまりチンコ)に屈服する女たちを描写したものがポルノではないかと思います。


「セックスは暴力の中にある」と言うのが持論でありまして、それについてはいつかまとまったら書くかもしれませんがともかく、雄性生殖器(くどいけどチンコ)(かしづ)く女たちと無尽蔵に続くポテンツと精液(迷惑メールじゃない)がポルノグラフィであるならば、ライトノベルの着地点かつ出発点、集約され収斂される最も肝要な要素とは何か、となります。

そしてそれは多分たった一言で表現できます。


即ち太鼓持ち。


「世界」に(おもね)らわれ(へつら)われ媚びられ迎合され礼讃(らいさん)され重用(ちょうよう)され、たい。時々は鋭く批判されるようでも、それは真実人格や心情を損なわない。

切実なまでの全面承認と肯定に対する希求。


ではなぜ、読者は架空の物語にそこまで自己肯定を求めるのか。

以下はその理由の個人的な一考です。


伝聞でしかありませんが、私も含めて今現在のラノベ主力購入層は、昭和という時代に比べ大幅に優しく育てられていると思います。


親が子供を殴るなんて「酷い」。

毎日風呂に入れないなんて「酷い」。

子供を()めようとするのが「酷い」。

夢を否定するのが「酷い」。

更には使い勝手のいい毒親とい(その実在を否定)う概念(しているわ)を創作(けではない)してまで理想的な「親」として子供を養育しようと社会全体が傾き、また「横暴な親」を忘れられないかつて子供だった親世代もそれに賛同しその様にあれかしとの圧力のもと親として振る舞ってきた。

であれば、親世代も「理想の良き子供」を無意識に期待し強要するのは当然でしょう。

(良き親として対応しているのだから良き子供に育つ筈)

しかしながら物事はそう上手くは運ばない。

常に「良き子供」であるとは限らない子供。

それでも「良き親」はそれを否定しない筈。

そうは言えども心情的には不満が生まれる。

それがダブル(OkだがNo)バインド(、NoだがOk)として子に心理的矛盾と足場の不確かさを生み、優しく育てられながらもどこか足りないと有形無形に示され続けてきたラノベ世代の切実な承認要求に合致したのではないか、と。

或いは、「良い親」から、幼少期何をしても「すごいでしゅねー、えらいでしゅねー」と誉められ(否定ヨクナイ!)、さあいざ幼小期を卒業したら十把ひと絡げ団栗の背比べ、大して優れた人格や能力も突出した才能もなく、平々凡々、埋没する(いち)個人に過ぎず、社会活動に於ける課題はクリアして当たり前となり、故に抱え込んだ「えっなんで?もっと誉められてしかるべき」という日々の鬱屈を満たすためかもしれません。


夢を見るのは素敵なこと。いつかきっと叶うよ願い続ければ思いの強さが君の強さ、みたいな、益体もない(無責任きわまりない頭どうかしてるとしか思えない)妄言が世の中に溢れていることも一因かもしれません。

夢は叶うよ、と主張するのは常に、夢を実現した、才能と実力と努力と運に恵まれた特殊ケースである側だけであり、それに普遍性など欠片もないことを口を(ぬぐ)って言及しないのは、言うまでもなく狡猾な商売の手口です。


この主張が正しいかどうかはまあ置いておきましょう。


次に、有象無象の似たり寄ったりがランキングを占め、ランキング以下にも溢れ返ることへの是非についてですが、私はこれを全面的に肯定します。

読み手としては酷く食傷しますが、数多(あまた)の大同小異、凡百のごった煮、玉石混淆の川原石の中にあっても、人を惹き付けてやまない才能は必ず光るものだからです。

裾野が広ければ広いほど(母集団が大きいほど)光る才能も多くなる理屈になります。

その輝きが流星のごとく一瞬なのか、シリウスのように強く永く続くのかはまた別問題ですが。


なので、小説家になろうの書き手の方々にはどうか流行りに乗っかって戴きたい。

流行っているということは、そのテーマ、タグを頼りに検索する読み手が多く、それだけ読者の目に触れるチャンスがあるということです。

そこで惹き付けることができれば、なぜかあまりPV(まあでも実のところ)を得られない(理由はちゃんとある)、本来書きたくて書いたものにも目を通して貰える可能性が高いというものではありませんか。

読み手としても、ランキング上位しかし好みではない話があった場合、一読してみることをお勧めします。文章は(つたな)くとも多くの人の心を動かす(ポイント加点する)理由を見つけられるかもしれません。


小説を、文章を、誰か知らない他人が創作し書き綴ったものを読むという行為は冒険です。

親切ぶった(これ、読者の為じゃ)但し書(ねんだよなあ。)きと先走(作者の保身以外の)っての警告(なにものでもない。)つきの安全なもの、予定調和、知っているものしか知りたくないのであれば、桃太郎か猿蟹合戦、バターになる虎(家にある。絶版?)やクレシェンドする三匹のヤギのがらくた(グーグル翻訳仕事しろ)、巨大ホットケーキ製作に勤しむカヤネズミでも読んでいればよろしい。

(接続の良くない人の為に念のため言い添えておきますが、それらに価値がないと言っているわけではありません。人口に膾炙しているだろう著名な例として引いているだけです)


そうではない。普通ではない驚きを得たい。とても思い付かないような未知の世界を見たい。想像以上のなにか、心躍らせときめく新たなものの見方、自分にとって世界が(ひら)かれるような体験がしたい。

そうおっしゃるならどうか。

あなたの時間を浪費して戴きたい。

なろう小説をランキングにこだわらず掘り起こそうと意気込むことなく読んで下さい。

どんな読み方でも構いません。

斜め読みでも飛ばし読みでも、もちろん普通に読んでも。

歯牙にも掛けない駄作でも、洟も引っ掛けない愚作でもとにかく読んで下さい。

読んで読んで読んで、読むことに倦んだ頃、気がつきます。

ランキングの年間上位に君臨する作品がなぜ君臨するのかを。

PVもポイントも少ないのにどうしてか忘れられない、心を打たれ、感想を書いてしまうことすらためらうような作品が存在することを。

その二つの物語の、その他多くの物語の、売れている/感動する物語の通奏低音を。

その頃には、ランキングについてとやかく言い立てることの不毛さ、取るに足らなさも理解できると思います。


未熟な読み手には未熟な物語が。

習熟した読み手には習熟した物語が。

それが本の紙魚(bookworm)の鉄則です。


いつかどこかであなたと本の紙魚同士エールを交換できますように。

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― 新着の感想 ―
[良い点] なるほどー……と、目からウロコが落ちる思いでした。 私は宇宙人なので、読者が何を求めてらっしゃるかとか、ちっともわからないんですよね……(^.^; 人気ジャンルの上位作品なんかを読んで…
[良い点] 気持ち良くさせて客の懐から財布(この場合はポイント)を抜くのが目的ですから、すべてのサービス業は一緒ですよね 『ホステル』や『ソウ』などの映画は「拷問ポルノ」と呼ばれていましたし [一言]…
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