夜会に集う令嬢の、いけない企み(上)
救世の勇者ユーリは、召喚されてからずっと、王宮の一室に住んでいる。
褒賞を待つ身になった彼は、王の好意で(というか懇願で)部屋に住み続けていた。朝起きて、クレアを抱いて、ご飯を食べ。本を読み、昼飯を食べ、ルナリアを抱く。夕飯を食べ、風呂に入り、ふたりを抱いて寝る。
実に爛れた毎日であった。
当たったらどうしよう、と心配していたくせに、いざムラムラすると我慢出来ない。中学生男子もかくやという性欲で、ユーリは性生活に溺れていた。ルナリアもクレアも、求めれば喜んで応じてくれるので、際限無しにズブズブ浸かってしまうのだ。
さて、これはそんな夜のこと。
「勇者様、令嬢の皆様から夜会のお知らせが来ております」
「ユーリ様、少しは気分転換をした方がいいんじゃない? ずっと王宮にいるのも、息が詰まるでしょう?」
やんごとなきお姫様メイドと、従順な正統派メイド。身分違いのふたりをベッドに引き込み、代わりばんこにご奉仕させる。
そんな不敬なプレイを楽しんだ後のことだ。ユーリはとうとう、ふたりが遠回しに「たまには外に出たら?」「こんなことばっかやってていいの?」と言ってるんだと解釈した。
勝手にそう思い込んでゲンナリしたので、二人を抱き寄せ、おっぱいを触ってリフレッシュした。
「あはっ、まだまだ元気ね、ユーリ様♡」
「あんっ、勇者様ぁ」
よし、少なくともえっちは嫌がられてないぞ。
そう安心したユーリは、さくっと本音を吐露することにする。
「俺、このまま引き籠もってていいんだけどなー」
「あら、それがユーリ様のお望みなの?」
「そりゃ、働かなくていいなら、働きたくないさ。ニート最強!」
「勇者様、無知で申し訳ありませんが……にいと、というのは、元の世界の地位なのですか? 侯爵や、子爵のような?」
「あ、うーん、まあそんな感じだな。不労所得で生きる高貴な身分だよ。
ーーニートはね。働かなくて、いいんだ」
ユーリは遠い目をして、万感の思いを込め、そう呟いた。その横顔に浮かぶ切なさを、隣の二人はどう思ったか。
後に彼は、「あんなシリアスなムード作るんじゃなかった」と後悔することになる。
そうこうしているうちに、夜会の日になった。
馬車に揺られ、郊外に建つ迎賓館に向かう。
時間は夕暮れ。何故かその日は、ルナリアもクレアも忙しくて、朝から「そういうこと」が出来ていない。少しばかりムラムラしている。
さっさと帰ってふたりを抱こう。そう心に決め、馬車を降りた途端……爆発するような黄色い歓声に包まれた。
「きゃあ、勇者様、勇者様だわっ!」
「ああ、わたくしの故郷を救ってくれた、あの勇者様!」
「思ったより優しそうなお顔なのね……はぁ、素敵……!」
色鮮やかなドレスに身を包む、若くて綺麗なご令嬢が大集合している。金や黒、中にはピンクも混じる、色彩豊かな髪。色とりどりのドレスが、どれも胸元の開いたデザインなのは、流行なのか狙ってか。
白い胸の谷間がくっきり見えて、禁欲中(一日のみ)のユーリには目に毒だった。
「お、おおう……どうも、ユーリです」
「ユーリ様と仰るのね、素敵なお名前! さ、夜会の会場はこちらですわ」
気が付いたら、乙女達に手を引かれ、あれよあれよと館に連れて行かれてしまう。
お嬢様方は実に積極的で、左右から前後から、ユーリを揉みくちゃしていた。ひどく近い距離から匂い立つ、女の子の匂いにめまいがする。薄暗がりの中で、ぷるんと震える上乳の白さが目に焼き付いた。
「さあ、どうぞ。こちらが今夜の会場です」
立派な扉を開き、シャンデリアの輝く大広間に入る。そこには、ワインレッドのドレスに身を包んだ、派手な美少女が待ち構えていた。
自信に満ちた、いかにも傲慢そうな笑みを浮かべた少女。燃えるような金髪が、その性格を現すようだ。
「ようこそおいで下さいました。わたくし、ドミニナ公爵の娘、ヴェラと申しますわ。勇者様をお迎えできて、これ以上の誉れはありません」
ニッコリと、高慢さが滲み出るような笑い方。元の世界なら女子高生くらいの年頃だろう。身体のラインがピッチリ出るドレスに、大きく開いた胸元。発育のいいバストが作る、愛の谷間がはっきり見えて、ユーリは鼻の下を伸ばした。
まさに絵に描いたような「貴族令嬢」である。プライドも高そうだが、ボディもわがまま。
ついガン見してしまうユーリの視線を感じ、ヴェラはますます笑みを深めるのだった。
さて。
やんごとなき令嬢の集まる夜会。そう聞けば、あらあらうふふ、女神様が見ている、淑やかな情景を思い浮かべることだろう。
実際ユーリも、そんなのを想像してきたのだが。
「ユーリ様ぁ、わたくし、酔ってしまいましたぁ……♡」
「この果物、甘くて美味しいですよ? はい、あーんっ」
キャバクラという単語が、一瞬脳裏を過って、慌てて頭を振っては否定する。
とはいえ、やたら抱き付いてきたり、身を寄せてきたり、腕を取っておっぱいで挟んだり、セクキャバみたいな接待をされているのは事実。
しかし相手は、名のある貴族のご令嬢である。
手を出したら面倒だなあ、くらいのことは考えるのだ。
しかも話を聞けば、この夜会に来ているお嬢様方は、最年長でも17歳。下は14歳から来ていて、幾ら異世界でもJCに手を出すのは犯罪だろ、くらいには思う。
そんなユーリの隣に、すすっと侍って酌をするヴェラ。プライドの高そうなお嬢様なのに、距離感がおかしくて、ぴっとり触れ合う近さでお酒を勧めてくる。
グラスに酒を注がれるたび、ぷるぷるのおっぱいが触れるのだが、ユーリの中では17歳はギリギリセーフ。ということになっていた。
「こちらのお酒も良いものですわ、勇者様」
「お、サンキュー……ん、あれ、どこかで飲んだことのある味だな、これ」
「まあ。それは……そうですか、皆、考えることは同じですわね」
なんだそれ、と思った瞬間。
飲み干した胃袋から、かっと熱くなるような感覚が走り抜ける。
そして、ムラムラしていた下半身が、もう我慢出来ないとばかり、むくむくと。
「ご存じかも知れませんわね、これはナルクというお酒ですわ。
本日集めさせて頂いたのは、わたくしも含め、生娘ばかりで御座いますの。
勇者様に楽しんで頂くには、些か不安がありましたから、用意致しました。効果はもう……ご存じですわね?」
ヴェラは男の胸板に縋り付いて、指でのの字を書きながら、甘く囁いた。
もちろん存じている。股ぐらが痛くなるほど知っている。
「一応、ご説明致しますと。生娘を乱れさせて、殿方の精力を増す効果が御座いますわ。つまり、乙女の花を手折るには、うってつけの……あんっ」
言い終わる前に、ユーリはヴェラの唇を強引に奪った。むちゅ、くちゅっと、わざと音を立てながら、力任せに口を吸う。
もうこれ行ってオッケーだよね。
媚薬入りの酒を盛られたユーリは、茹だった頭でそう判断。
軽やかなヴェラの肢体を、お嬢様抱っこして、広間を出る。ヴェラの案内に従って、寝室へ向かって一直線。
後はもう、勢いのままにベッドインだった。