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はにとらっ!(一般版)  作者: けてる
プロローグ
5/7

救世の勇者、ヤリチンになる

 魔族が住まう暗黒大陸。その片隅に、今や世界で最も強大な存在が4人、真剣な顔で集まっていた。


 魔王ルキウス。

 不死女王エレミア。

 竜王アガメムノン。

 そして異界より来たる勇者、ユーリである。


 かつてなく真剣な顔をしたユーリを前に、他の3人も引き込まれてしまう。なにせ邪神復活を前に「おおー、お約束展開キタコレ!」と叫ぶキチガ……もとい、勇猛果敢な男に、こんな表情をさせる事態とは、一体?


 やがて、ユーリは厳かに、自分の人生に起きた一大事を口にした。


「どうしよう……王女様に手を出して、次の日にメイドさんに手を出しちゃった」


 共に戦った仲間達は、その告白を、いかにも真剣な顔で聞いていた。聞いた上で、3人ともそっと瞼を閉じーー


「ヤリチン超ウケる!」

「残念勇者め、下半身で失敗とか、草が生えるわ!」

「ぶはっ、種馬じゃ、種馬がおる!」


 爆発するように笑い始めた。

 いっとう酷いのはエレミアで、腹を抱えて大笑いするだけでは足りず、文字通り笑い転げていた。ひー、ひーっと、震えるように笑っている。

 仲間達の友情の温かさに、ユーリは涙した。泣きながら掴みかかり、しばらく乱闘になって地形が変わったりしたが、それはまあ、いつものこと。


 「あー、最高に笑ったわ……それでヤリチン、どうするの? 責任とって王様でもやる?」

 「余の心は晴れ渡る青空のようだぞ。さてスケベ勇者よ、次に誰に手を出すか悩んでいるのか?」

「わしはとても上機嫌じゃから、親身にアドバイスしてやるぞい。子供の名前なら、いくらでも考えてやろうではないか」


 なんて……役立たずな連中……!

 拳を震わせ歯を食いしばるユーリだが、この異世界で下半身トークが出来る相手など、こいつらしかいないのだ。仕方がない。


「そ、そんな簡単には、デキないと思うんだよな。それにほら、俺異世界人じゃん? 体のつくりとか、違うかもじゃん?」

「魔族は人族と子を成せるぞ。貴様は魔族より、だいぶ人族寄りだろう。はい論破」

「その、子供が出来なかったらヤリ逃げ出来る、って発想がほんとヤリチンよね」

「……ぐぬぬ……」


 別に、ルナリアとクレアに不満があるわけではない。自分には分相応な、素晴らしい女の子達だ。

 ただ、20を少し超えたくらいのユーリには、この年で結婚と言われても尻込みしてしまうだけで。

 それに現代っ子のユーリには、性交→結婚→子育てが一直線に結び付けられるのは、抵抗感があった。端的に言えば、もっと遊んでいたい。


 そんなことを馬鹿正直に話したところ、意外な助け船を出したのがエレミアである。


「でもヤリチン、王族とか貴族は、ハーレム、っていうのを持つんでしょう?

それに貴方、異世界から来た男はハーレムを作るのがセオリーだって言ってたじゃない。それで有耶無耶にはならないの? 木を隠すなら森って事で」

「……そうなった主人公は、絶対に帰れなくなるんだけどな」

「ざまぁ」


 結局、その日は遅くまで酒盛りとなり、特に実りのある議論にもならず、ユーリ以外の3人が馬鹿笑いをするだけで終わった。

 なお、酒盛りも終盤になると、自棄になったユーリが初体験を語り出したのだが、それについて魔王は後日「実にキモかった」と漏らしたという。



 一夜が明けて、転移を使い王宮に戻ったユーリを迎えたのは、やんごとなきルナリア姫と、忠実なるクレアである。

 なぜか浮気男のような気まずさを覚えるが、やましいことは何もないで、馬鹿正直にユーリは話した。


「やー、あいつらと朝まで飲んじゃって」

「あいつらって、魔王様に、不死女王様に、竜王様のこと? 本当に仲がいいのね」

「ま、しょっちゅう会ってはバカ話するからなあ。エレミアなんか、何かあるとすぐ念話使ってくるんだぜ、もう」


 ふわぁ、と欠伸をかいて、寝室に向かうユーリ。それを追うクレア。

 そして残ったルナリアの頬に汗が伝う。

 仲がいいとは聞いていたが、そんなに密に連絡を取り合う仲とは!


「……ちょっとお父様、本当に急いで褒賞出さないと、不味いわよこれ」


 3人とも、今の世界では最高の権力者だ。一方、ルナリアの祖国は、人族国家では真ん中くらいに位置する、そこそこの王国でしかない。

 ユーリは何故か、そんな王国の王にも随分と敬意を払っているが、本来は彼の方がずっと上の立場にいるのだ。

 只でさえ各国から「勇者の褒賞はどうなっている」と突き上げられる中、当の勇者と3王が蜜月の仲というのは、非常にまずい。別にユーリが、この国にいなければいけない理由など、何処にもないのだから。


 こうして王家に頭痛の種が増え、大臣達が喧々囂々の議論をする中、ユーリはぐっすり昼間で眠った。何故かクレアが添い寝をしていたので、寝ぼけた頭で行為に及び、スッキリしてから二度寝した。いいご身分だった。

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