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はにとらっ!(一般版)  作者: けてる
プロローグ
4/7

救世の勇者、メイドさんにも手を出す

 メイドさんの名前はクレア。ユーリの専属メイドである。

 年は20代前半だろうか、黒髪を結い上げて、隙一つ無いクラシカルなメイド服に身を包み、丁寧な仕事をする。

 どこか薄幸そうな美人で、万事控えめな彼女は、ユーリにとって安心感のある相手だった。別の世界からやって来た彼を、事あるごとに心配してくれるのも、助かっている。


「大丈夫です、お部屋は私どもで掃除しておきますので。姫様のお召し物も、用意が御座います。

 勇者様も、浴場の準備が出来ておりますから、ゆっくりおくつろぎ下さいませ」

「う、うん……そ、その、本当に、すんません……」


 尚も頭を下げ続けるユーリを、ふわりと、温かなものが包み込む。

 彼女に抱きしめられているのだと、気付くのには少し時間が必要だった。


「勇者様……異なる世界からやって来られて、帰る術もなく、さぞ心細いのでしょうね。でも、これだけは信じて下さい。

 たとえ誰が敵になっても、私、クレアは、勇者様に、勇者様だけにお仕えするメイドです」

「クレアさん……」


 あれ、こんなシリアスなシーンだっけ?

 ユーリは内心首を傾げたが、押し付けられるおっぱいの柔らかさに屈してしまった。大人の女性のバストは、ルナリアの瑞々しいおっぱいとは別の、豊潤な良さがあるのだ。




 ユーリがさっぱりしようと、浴場に向かった後。

 姫君の部屋の掃除に、お付きのメイドを駆り出すと、クレアはひとりため息を吐いた。


「勇者様……なんて、お可哀想に……」


 打算半分、好意半分のルナリアと違い、クレアは全身全霊でユーリのことを心配している。100%の善意は、加減というものを知らない。


「私が、慰めて差し上げなくては」


 古今、弱った男に身を任せ、慰めるのは女の務め。

 露出の少ないメイド服を着た彼女だが、その胸やお尻に、ユーリの視線がチラチラ向くのには気付いている。

 ユーリが知ったら穴に入りたい気分だろうが、男のチラ見は女のガン見。もっとも忠誠が突き抜けた彼女は、光栄だとしか思っていない。

 

 使命感に浸りながら部屋を片付けるクレアに、ルナリアが冷静な声を掛けた。


「ねえクレア。ユーリ様のことで、少し相談があるのだけれど」

「ルナリア様……?」


 後にユーリを雁字搦めにする、ハニートラップ包囲網。

 その始まりである。



「ふいー……風呂はいいなー……」


 王宮の大浴場。王族を始め、限られた地位の者だけが使える場所を、今はユーリが独占していた。

 時間は真っ昼間だが、気分は朝風呂。

 石鹸で全身を清め、湯船に浸かれば、心配事が溶け去りそうだ。


 こうしてリラックスしていると、脳裏に思い浮かぶのは昨夜のこと。夢のような一夜の、官能的な情景だ。

 えっちなビデオなら情景で終わりだが、絡みつくルナリアの指、耳元をくすぐる甘い吐息、その生々しい肌触りを、全身が覚えている。忘れられるわけがない。

 そうして思い出すたび、煩悩はむくむく大きくなって、その度に冷水を浴びに行く有様である。


「うう、中学生かよ、もう」


 童貞を卒業したら、大人の男にレベルアップすると思い込んでいたが、むしろ逆だ。瞼を閉じれば、思い浮かぶのは女の子のことばかり。


 と、そんな風に煩悶していたときだった。


「勇者様……お背中を、流しに参りました」


 クレアが、バスタオルを巻いただけの姿で入り込んで来たのは。



「く、くくくっ、クレアっ!?」


 ユーリは大慌てで股間を隠した。パニックになって口をパクパクさせる彼のもとへ、クレアがしずしずと歩み寄ってくる。

 控えめだった筈のメイドさんは、今、かつてない距離感の縮め方で、ユーリに迫っているのだった。


「おとなり、失礼致します……」


 肩がぴとりと触れあう近さ。

 前を隠そうと必死なユーリだが、それでもチラチラ横を見てしまうのは、男の性というもの。

 艶やかな黒髪を結い上げたクレアは、それはもう、息を吞むほど色っぽい。

 白いうなじを見ると、反射的に顔を埋めたくなってしまうが、それを鋼の自制心で堪えていた。お湯に浸かったタオルは透け初めて、たわわなバストとピンクの乳首がうっすら見える。

 美しく整った顔は赤く染まり、思い詰めたような表情。クレアもまた、ユーリの方をチラチラ見ていたが、やがて意を決して。


「ユーリ、様……」

「うはっ!?」


 嫋やかな手が、ユーリの首に優しく巻き付けられる。

 そうして耳元に囁かれる、蕩けそうに甘い言葉。


「ここでなら、痕跡は残りません。私のような端女をお抱きになったことも、何も……

 だから、何も考えず、憤りをぶつけて下さいませ。お情けを頂いたことは、私が、私だけの秘密に致しますから」

「クレア……」


 ユーリは我慢出来ず、クレアのしなやかな身体を抱き寄せて、キスをした。

 生々しい行為の音が、浴場に響き出すのに、それほど時間はかからなかった。




「ルナリア様、宜しかったのですか? クレアは本気ですよ。きっと今頃、勇者様と……」


 ベッドから起き出して、優雅に紅茶を楽しむルナリアへ、お付きのメイドが心配そうに声を掛ける。

 それを王女は、何でも無さそうにあしらった。


「いいのよ。ユーリ様を囲うのだもの、女の数は多いに越したことはないわ。

 いっそ子沢山なら、もっといいわね。寂しさを感じる暇もない、大家族にしましょう。きっとそのことで、心がいっぱいになるわ。

 ーー元の世界を忘れるくらい、ね」


 その時、ルナリアの唇が形作った笑みの、なんとも言えない底知れなさ。

 打算だけではない。好意だけでもない。獲物を罠に掛ける、狩猟者の笑みだった。

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