表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
はにとらっ!(一般版)  作者: けてる
プロローグ
3/7

救世の勇者、王女様に手を出す

 ファンタジー世界の夜は早い。

 庶民は日が沈んだら眠る、という生活だ。現代っ子のユーリが適応するのは難しい世界である。

 幸い、王宮ともなれば魔石を使ったライトが据えられていた。ネットもゲームもないが、本は山ほどあるので、それを読み漁るのがユーリの夜更かし方法である。

 

 だが、その夜には来客があった。

 静まり返った夜の宮殿に、コツコツとドアのノック音


「ユーリ様ー、ちょっといい?」

「ルナリア? まあ、いいけど」


 見知った声だ。何だかんだで、気安い相手。お転婆なお姫様に付き合わされ、二人でカードゲームやら双六やらで遊ぶこともある。

 今夜もそんな感じかな、とドアを開けて、ユーリはその場で固まった。


「……そ、それ、何だよ」

「えへっ、ユーリ様、こういうのが好きなんでしょ?」


 それは、フリルとレースで飾られた、優雅で派手なメイド服。

 短めのスカートを摘まんで、くるりと一回転し、「どう?」と笑う姿は、アイドルのようだ。


「あ、ああ……」


 ユーリはルナリアから目が離せないでいた。

 言ってしまえば、エセメイド。メイド喫茶とかにいそうな、コスプレ姿である。

 しかしエセとは言え、フリフリの改造メイド服を着こなす姿は、文句無く美少女。

 胸元が開いた、あざといメイド服が、似合ってしまう。

 そして胸の谷間に目が行ってしまうのだ。

 男の悲しい性だった。


「ね、入っていい?」

「お、おう」


 もうユーリは、「ああ」とか「おお」とかしか言えない状態になっている。そうしてまんまと部屋に潜り込んだルナリアは、こっそり部屋に鍵を掛けた。これでよし。


「前言ってたよね? メイドさんが好きなんだよなー、って」

「あれ、覚えてたのかよ……」


 他愛のない世間話、悪ふざけも込めた話だった。

 それを逐一覚えられて、衣裳まで用意されたら、もう穴にでも入りたい気分になる。


「ユーリ様の言ったことなら、大体覚えてるわ。それで、どう? ユーリ様だけのメイドさんだよ? ムラムラしちゃったり、しない?」


 ごくり、と思わず喉が鳴る。

 吸い込まれそうに大きく、宝石のような青い瞳。元の世界なら、どんなアイドルグループでもセンターになれただろう、驚くほど綺麗な顔立ち。

 キラキラ輝くアッシュブロンドの髪には、フリフリのカチューシャが乗っかっている。

 もちろん彼女は、メイドではない。やんごとなき王族の血筋を引いた、正真正銘のお姫様だ。それが、勇者の好みを聞き出して、わざやざメイド服を仕立てさせ、押し掛けてける。

 

 どう見てもハニートラップだった。


 勇者とパイプを作ると言うか、パイプを結合させる気満々なのである。

 そこまでするか、とユーリは軽く引くのだが、下半身はその逆で。いいじゃん据え膳頂いちゃおうぜ、と節操なく持ち上がってしまう。


「ね、難しいことは考えないで。一緒に気持ちいいこと、しましょ?」


 いつの間にか、息のかかるほど近くまで来ていたルナリアが。

 後ろに手を組み、ぐいっとバストを強調するようにして、妖艶に微笑んでいる。綺麗な形をした唇。それが、ゆっくり、どんどん近付いて。


「んむっ……!? むー、むーっ」


 唇を、乙女の艶やかなそれが塞いでいる。

 至近距離だ。

 柔らかい。いい匂いがする。

 アイドルも目じゃない、2次元から飛び出して来たような綺麗な顔。

 ぷるんと揺れる、豊かなバスト。

 わざとらしく胸板に押し付けられたそれは、ブラによって抑えられているとは思えない自由さで、むにゅむにゅと形を変える。


 ユーリはもう、許容量オーバーで、目を白黒させることしか出来なかった。ルナリアの睨んだ通り、童貞だったのみならず、これがファーストキスだったのだ。

 ふたりの唇が離れた時、ようやくユーリは理性を取り戻した。


「る、ルナリア。俺は、その、もし元の世界に帰れるなら、今でも帰りたいって思ってるんだよ」

「んっ……それならそれでいいわ。ねえユーリ様、それならこの世界のことは一夜の夢みたいなものじゃない。

だったら少しくらいのアバンチュールは、楽しんでもいいでしょ? ね?」


 再びのキス。

 今度は舌も入ってくる、濃厚なもの。

 互いの舌を絡み合わせ、唾液を交換しながら、ユーリは少しの違和感を覚えた。

 ルナリアから仄かに香る、ワインのような匂い。


「おまえ、酒、飲んできたのか?」

「うん……ナルクっていう特別なお酒。女の子がね、旦那様と結ばれる夜に飲むの。その、初めての時、痛くなくなるんだって」


 頬を赤く染めるのは、羞恥かそれとも興奮か。

 深いキスを終え、二人はしばらく向き合って、互いに見つめ合っていた。

 やがてルナリアが、その微笑みを深めて、メイド服の胸元をはだける。ぽろりとまろび出る、ぷるんとしたおっぱい。

 白くて、丸くて、大きくて。完璧な形をしたお胸様。


「る、ルナリアっ!」

「きゃんっ♡」


 あからさまなハニートラップに、勇者ユーリは、あっけなく落っこちてしまった。




「……あれ、朝か」


 気だるい目覚め。

 既に陽は高く昇り、真昼の明るい寝室で、ユーリは目を開いた。胸板にしなだれかかる、柔らかくて温かな、美少女の重みを感じつつ。


「……んふぅ……」


 気持ち良さそうに眠るルナリアの、美しい髪を撫でながら、しばらくそうしていて……


「はっ!!!」


 一晩遅れの賢者タイムが、ようやくやって来た。

 慌ててシーツをめくれば、当たり前のように破瓜の赤い染みが残っている。

 というか、全裸の美少女と寝ている時点でお察しだ。

 部屋を見渡せば、あちらこちらに脱ぎ捨てられた、二人分の服。とっても事後な朝の景色であった。


「ルナリア、ルナリアっ! そろそろ起きないと、メイドが来るって!」

「ん……あら、お早うユーリ様。ごめんなさい、昨日はあんなに激しいんだもの……もう少しだけ、寝させて……」

「あ、はい……」


 ユーリはそっとルナリアを寝かしつけると、ベッドサイドに腰掛けた。よりによって、王女様に手を出したぞ!という、やっちまった感が広がる。

 とはいえ、今しなければいけないことはただ一つ。


 証拠隠滅であった。


 この、「昨夜はお楽しみでしたね」な部屋を、一刻も早く掃除しなければ!

 邪神を討伐したときすら、ここまでの危機感は無かった。

 ユーリは急ぎ服を身に付けると、ヨレヨレの状態で部屋を出ようとする。さりげなくメイドさんに声を掛け、着替えとタオルを用意してもらう。酒盛りでワインを零したと言えば、シーツの染みだってワンチャン……!


「お早う御座います勇者様。昨夜はよくお休みでしたね」


 ドアを開いた先には、折り目正しい黒髪のメイドさんがお待ちであった。詰んだ。


「大変申し訳ありませんでした」

「え、え!? 勇者様!?」


 それは流れるような土下座であった。

 10代の少女といけない行為。それも王族。あまつさえ、事後を従業員に見せつけるセクハラ案件。

 フカフカの絨毯に額を擦り付けても、大して誠意は伝わるまいが、やれるだけはやってみせる!


「あ、頭を上げて下さい勇者様っ! こ、困りますっ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ