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第二章

お待たせいたしましたです!

更新遅くなりましたすみません><;

テストも終わり、やっと一息です♪


それでは、第二章、お楽しみ下さい〜☆


―私は、いつから孤独ひとり・・・?








 暗い、暗い、足元も見えない深い闇。

 喩えるなら、千羅はいつもそこにいた。


 自分の桁外れの強さを、千羅はよく分かっていた。

 そして同時に、ある理由から自分がアルタに住むフレア達と普通に接する事ができない事も、冷静で思慮深い千羅はちゃんと分かっていたのだ。

 だから、誰とも関わる事なく一人で生きる事を千羅は選んだ。自分に与えられた悲しい運命を、千羅は決して恨まなかった。

 それこそ、真に強い者だった。


 しかし人である以上、生きている以上、傷つく心を持っている。

 千羅は強いが故に、誰よりも大きな傷を抱えた。強かったから、一人で悲しみを抱え込んでしまえたからこそ、心に深い傷を負った。

 千羅は強い。強いからこそ・・・脆い。












 「嗚呼・・・この世界は、なんて空虚なものなのだろうか・・・・・」












 

―何もかもが暗いから、旅に出ようと思った。何も変わる筈はないけれど、それでも、希望だけは捨てられなかった。希望を抱いても仕方がないと分かってはいても、どうしても捨てることが出来なかった。



 千羅はふらり、一人旅に出た。

 誰にも知られないようこっそりと。

 彼は風の様に気紛れで、つかみ所がなかった。

 そう、それはただの気紛れ。けれどそれは、逃れようのない必然。






















 千羅が雑兵総勢58名を瞬殺してから一週間が経った。

 ここはアルタに流れる情報の中心部、『アルタの泉の水鏡』。今、水鏡を囲むように人が集まり、皆が顔面蒼白になって水鏡を見つめている。

 千羅の雑兵瞬殺事件は、当然ながらアルタ各地のフレアへと伝わっていた。そして同時に、千羅が何処かへ謎の失踪を遂げた事も伝わっていた。

 アルタの長老が、今回の件についてフレア達に説明をする為に水鏡の傍に立っている。顔面蒼白でざわつくフレア達とは違い、長老は動揺するでもなく、ただ静かに、眉間に皺を寄せ難しそうな顔をしていた。


 「皆の衆、静まれ」


 長老の一言で、ざわついていたフレア達が瞬時に静まり返る。

 皆の視線が集まる最中、長老はコホンと咳払いをし、現状についてゆっくりと重みのある口調で話し始めた。


 「皆も知っての通り、千羅は数日前、荊の洞窟を訪れた雑兵総勢58名を瞬殺した」


 フレア達が息を呑む。しかし彼らにとっての問題はそこではなかった。

 フレア達はじっと長老の次の言葉を待つ。


 「そしてその後、千羅は謎の失踪を遂げた。行方はまだ掴めていない」


 その言葉にフレア達は一気にざわめく。挙句、恐ろしさから失神する者まで現れた。


 「やはりまだ行方を掴めていないのね!?」

 「あぁ・・・なんてこと!千羅が何処に潜んでいるかも分からないなんて!」

 「恐ろしい・・・いつ千羅に殺されるかも知れないなんて!!」


 などと様々な言葉が飛び交っている。


 「千羅は歯向かう者には容赦ようしゃをしない。もしも千羅にとって代わろうとする者が現れたのならば、千羅は迷うこと無くその者を殺すだろう。殺されたくなければ、大人しくしていることだ・・・」


 長老は皆に聞こえ渡るような声で釘を刺すように言うと、そのままゆっくりとどこかへ去って行った。


 フレア達のざわめき一向に止む気配を見せない。


 そんな中、漆黒のまなこで静かに水鏡を見つめる少女が一人。

 深紅しんくの肩まで切りそろえられた髪が風に遊ばれ静かに揺れる。


 「“白狐”の、千羅・・・」


 まだ少しの幼さを残す高い声で、少女は呟いた。それはほぼ無意識に、何かを確かめるかのように少女の口をついて出た。


 「・・・懐かしい響きが、私を呼ぶの・・・」


 どこか虚ろな瞳は、まるで夢を見ているかのようで。少女の姿はフレア達がざわめくこの情景には、ひどく不釣合いなもののように幽玄ゆうげんな美しさを醸し出していた。


 「会いに、行かなきゃ・・・」


 そして少女は、風に紛れるように、ごく自然な動作で、何処かへと消えていった。
















 †     †



 「千羅だ・・・あそこに居るのは千羅だ・・・」


 「殺せ・・・白狐を殺せ・・・」


 虚ろな瞳、ゾンビのような姿の者達が、千羅を捕らえる。

 あからさまな殺気に、千羅はピクリと眉を顰めた。


 「はぁ・・・折角一人になろうと思っていたのに」


 千羅はため息混じりに呟く。

 そしてどこからともなく現れた輝く剣を手にし、後ろを振り返った。


 「出て来い」


 静かに千羅は茂みに言い放つ。その瞳は冷酷無情。

 茂みががさっと音を立てる。もう隠れても無意味だと分かった今、刺客は千羅の前へと姿を現す。


 「お前達はっ・・・!」


 千羅の瞳が驚愕と悲しみに彩られる。











―ザシュッ





 雑草も無い枯れた大地に、赤い花が咲いた―・・・

 


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