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◆閑話:異世界へ渡った彼と彼女の話:第三話(彼女視点)

主人公視点となります。

私の両親が死んだ。


私の目の前で。


家族水入らずで歩いて近くにあるスーパーに買い物へ行く途中だった。


18歳の免許を取ったばかりの若者の暴走車に引き殺されたんだ。


父と母は私を守るため私を突飛ばし、両親は電柱と車に挟まれ死んでいった。


この世界は残酷で死人にくちなしと、加害者の家族は18歳の息子を守るため、私の父と母を悪者にしようとした。

私達が道路に飛び出して来たんだと……。


そんなことありえないのに、当事者の私が何度も主張しても聞き入れてもらえなかった。


18歳の若さで起こしてしまった事件に、検事や裁判官も18歳の少年の罪が軽くなるように働きかけた。


後からわかった事だが18歳の少年の父親は警察幹部だったそうだ。



憎い……憎い……悔しい……。

怒りと諦めにも似た感情が心を押し潰していく。

両親は駆け落ち同然の結婚で私に親族はいなかった。

誰も引き取り手もなかった私は、16歳の春ひとりぼっちとなった。


世界が憎い

なぜ自分の両親がこんな目に。

なぜ、なぜ、なぜ?

何度問いかけても答えはでなかった。


空虚を見つめ、砂浜を踏みしめながら、私は父と母が残した海の家へと帰って来た。

父と母は保険に入っていたらしく、私は莫大な保険金を手に入れ、生活するのに問題はない。

だけど私は孤独だった。


海の家の扉を開けると、懐かしい香りがした。

家族3人で住んでいた部屋は一人ではとても広く、あまりの静けさに私はずっと泣いていた。


寂しい 寂しい 寂しい……。


お母さん、お父さん……。


今まで母がやっていた料理や洗濯、掃除を覚え、高校へ進学せずアルバイトをして生活を送っていた。

なるべく保険金には手をつけたくないから……。


そんな慌ただしく日常が過ぎていく中、ようやく一人の生活慣れてきた頃の事だった。

私は一人、オレンジ色に輝く空を見つめながらに、浜辺を散歩していた。


「夕方は人も少ないし、何だ落ち着く」


そう人地ごちながらに、空を見上げ、夏の潮の匂いを感じながら、私は海辺をただただ歩いていた。


どこまでも続く砂浜を進んで行くと、ふと波打ち際に黒い影を見つけた。

なんだろう……?

少し海辺に近づいてみると、それはどうも人のようだ。

もしかして……死んでいる……。

不安に思いながらも近づいてみると、影がムクリッと起き上がった。

よかった生きている。


もう少し近づいてみると、その人はじっと海の向こうを眺めたままに動かない。

大丈夫かな……?

恐る恐るにもう少し近づいてみると、彼は漫画に出てくる王子様のような服装をし、あきらかに日本人ではないだろう……彫りが深く、プラチナの髪が夕日に照らされ輝いていた。


思わずそんな彼の姿に見惚れていると、私に気が付いたのだろう……ルビーのような深紅の瞳が私を見つめた。

途轍もないイケメンだ。

そんな事を心の中で呟く中、魅入るように紅の瞳を見つめていると、突然に彼が倒れた。


ドサッ


「ちょっ 大丈夫?どうしたの?」


私はハッと我に返り、慌てて彼の元へ駆け寄ってみるが、彼からの返事はない。

パチパチと頬を叩いてみるが反応はなかった。

どうしたものか……。

ここに放置していく訳にもいかず、私は砂浜の上を引きずると、彼を自分の家へと運んでいった。


汗だくになりながら、ようやく海の家へとたどり着くと、濡れた服を脱がせ、彼をベットへ引きず込み布団巻き付ける。

疲れた……。

私はコキコキと肩を鳴らすと、シャワーを浴び、夕食の準備を始めた。

太陽が沈み海に静けさが訪れる中、彼はまだ目覚めない。

仕方なく私はソファーへ横になると、そのまま眠りについた。

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