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ノボリザト君
同級生のノボリザト君は、僕が小学五年生の時に我が家の近くに引っ越してきたんだけれど、ちょっと冷たい雰囲気があって、なかなか近づき難い男の子だった。
体が六年生よりも大きくて、あと少しでビームが出るんじゃないかと思うくらい、いつも目に力を入れていた。朝に吹く山の風みたいな清々しい声をしているのに、滅多に人と話をしなかった。
けれど僕は知っている。ノボリザト君には三つ下の弟がいて、その子と二人して遊んでいる時は、まるでウサギの親子みたいに、跳ねたりじゃれあったり、笑ったりなんかして、僕よりかよっぽど明るい子なんだって。
大人たちがノボリザト君の家の噂をしていた。引っ越してくる一週間前に、母親は事故で亡くなったらしい。父親は子供二人を親戚に預けて、どこか遠くで仕事をしているらしい。
もし僕のお母さんが死んで、お父さんが遠くに行ったら、どうなっちゃうのだろう。僕は目からビームを出すようになるのかな。誰とも喋らなくなるのかな。兄弟とあんなに楽しく笑い合えるのかな。
ノボリザト君ってなんだか、カッコイイな。僕はそう思った。




