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無言の勇者  作者: 水鏡
8/9

番外編 届かない想い

更新遅れて申し訳ないです。


夏期講習 あるなら一日 やって欲しい。


夏休みなのに朝6時に起き、たった数時間の授業のために登校し、お昼を食べて帰る愚痴の一句。


サラリーマンはサビ残とかあると思うと先が思いやられます。






「兄さん、起きて。」


朝、お寝坊兄さんを起こすのは妹たる私の役目であり、楽しみでもある。いつも仏頂面なくせに寝顔は純粋無垢そのもの。

そんな寝顔を見ながらサラサラな髪を撫でている事を、たまに抱きしめている事を、兄さんは知る由もない。当たり前の日々。若干シスコンの兄と超ブラコンの妹。そんな関係が大好きだった。


けれど、最近は何故か兄さんの前で素直になれない。頭を撫でられれば抱きつきたくなるし、落ち込んだ時に慰めてくれたら兄さんの匂いをずっと感じていたいと思ったりする。




それでも、なんだか恥ずかしくなって押しのけてしまう。なのにそういう時に限って兄さんはすごく優しい目をして笑ってくれる。





・・・・・・・・・・ほんと、ずるい。





その日も、いつものように素直になれないことがあった。




「いつも、いつも、頭を撫でるのはやめて。子供扱いみたいで嫌。」





帰り道にたまたま兄さんを見つけた私は走って追いつこうとした。兄さんはすぐ私に気づいて止まってくれた。私はそんな些細な事がすごく嬉しかったけど、すぐに不機嫌になった。


兄さんの影から知らない女の人が出てきたのだ。



「妹さんなの?可愛いね!!」


「だろ。小雪は世界一可愛い。」


「小雪ちゃんっていうんだ。ていうかシスコンないわ。」


「シスコンじゃなく家族としてだから!」


「はいはいそうですね。」


「・・・もういいよ。」


水月小雪 それが私の名前。兄さんと一文字違いなので私はこの名前が大好きだ。そして兄さんに名前を呼ばれるのも。

けれど、今は心がずきりと痛んだ。兄さんはいつもの態度とは裏腹に心を開いた人とはすごく楽しそうに話すのだ。

私の知らない所で知らない女の人と仲良くしている。それが途轍もなく嫌だった。

途中の別れ道で女の人が居なくなるまで私はひたすら我慢した。2人の楽しい会話なんか無視して。




そのまま家に着いて、あらかた家事をし終えてソファに座っていると、兄さんはいつものように私の頭に手を乗せてきた。



「まだ機嫌悪いか。ごめんな、小雪を放って白夜と話し込んじゃって。」


白夜さんって言うんだ。


「かっこいい名前だね。」



兄さんが喜びそうなことを言う。尤もそう思ったのは確かだけど。


「そうなんだよ。白夜 麗華って言うんだけどかっこいいよな!そもそもその話から仲良くなってさーーーーー」



別に兄さんを独り占めしたいとかじゃないはずなのに何でこんなに胸が苦しい。


やめてよ、

私以外の話でそんな顔しないで。




気づいたら私は兄さんの手を振り払って、強めに兄さんを拒絶した。




言葉を発した後、私は後悔していた。大人として、女として見て欲しかった。家族だけど、家族だとしても、見て欲しかった。そう言いたかったのに言えるわけない。


だから許して。今のは嘘なの。

いつもみたいに優しい目で素直じゃないなって、言って。






けれど、手を払われた後の兄さんは凄く寂しそうな目をしながら、


「ごめんな。」


そう言い残して二階に行ってしまったのだった。







次の日の朝、私は気まずくて兄さんを起こさずに学校に行ってしまった。






兄さんはちゃんと起きれただろうか。話がしたい。笑ってほしい。声が聞きたい。匂いを嗅ぎたい。顔が見たい。

髪に触りたい。抱きしめたい。寝顔が見たい。また、撫でてほしい。



なんて勝手なんだろう。自分で嫌がったくせに。ぐるぐるといろいろな感情が私の中に渦巻く内に、学校が終わった。



家につく頃には、私は決心していた。

素直に謝ろう。本当は、白夜さんに嫉妬していただけなんだって。兄さんに甘えたかったのに恥ずかしかっただけなんだって。

そして、いつものように話したい。

ゲームをしたり、テレビを見たり、アニメを見たり、たまに一緒のベットで寝たりして甘えたい。そんな気持ちで、ソファに座って紅茶をすする。










1週間待っても2週間待っても、

兄さんが帰ってくることはなかった。






小「兄さん、今日、一緒に寝ていい?」

黒「勿論。だが、妹よ甘いな。そう言う時は枕を抱きながらくるんだ!あと上目遣い」

小「え、あ、うん。次からそうするね」

黒「よし、じゃあ、おやすみ。」

小「おやすみ。」


小雪は次の日も来た。

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