第3話 穢れを嫌う者
長くなりました。後で修正するかもです。
「刈り・・・すぎたかな?」
木にもたれかかりながら、俺は目の前にある草の束に目をやる。
集中力が高いのか、止め時を見つけづらい性格のせいかは知らないが、なぜ依頼ではない方の草をひたすら刈ったんだろう。
「・・・・帰るか。」
依頼は達成したし、きっと青い方の草も買い取ってくれるだろ。
ギルドに着くとやはり人目を感じる。まあ、絡まれないことを祈りながら、受付に並ぶか。
受付に並ぶこと約十分、ようやく俺の番が来た。
登録の時と同じ人にしたので、取り敢えずカードと草を渡す。と言っても、なんとか両手に抱えていた状態でだけども。アイテムボックスはまだ使いたくない。
受付嬢は、目を見開きつつも奥へと行ってしまった。恐らく、査定だな。
受付嬢は少ししてから帰って来ると、かなりの量の貨幣が入った袋とカードを返した。特別報酬?かな。
「*****!!*****?******?」
なんかテンション高い。切れ長の目をしていて、クールな感じの人だったから印象が変わるな。今なんかすごい疲労感に襲われている俺からすると、果てしなく面倒だが。適当に相槌をしておいて適当に去ろう。ひとまず宿を探してそこで寝よう、食事と風呂は明日にしよう。
そう、決めた俺は例のごとくお辞儀をしてギルドから去る。なんか後ろでまだ言っているが、ごめん、凄まじく眠いんだよ。また明日。
宿屋を探しに街を歩いていると、突然腕を引かれ、路地裏に連れ込まれる。
「**、***?*****、***。」
またこれかよ。言語って素晴らしいね。
俺の腕を引いた何者かはフード目深に被り、俺に何かを話しかけてくる。感情を感じない声。抑揚がなく、なんとなく女っぽい感じがする程度か。
背は俺の目線あたりで、妹もこのぐらいだったな。
俺は首を横に振って、逃げようとするが、
ーーこいつ、力強すぎるだろっ!?
腕を掴む力が強くなり、逃げられない。
焦る気持ちとは裏腹に、秒を読むごとに強くなる眠気。
「・・・・やべ・・・ねむ・・す・・・ぎ・・・・・
・・・・・」
薄れかける意識の中で、俺は仄かに良い香りを感じながら、あぁ、やはり女だったのか。という呑気な考えを持ってその女に倒れ込むのだった。
「目が、覚めましたか。勇者さん。でしたら早く退いて下さい。これ以上、穢れるのは嫌なので。」
ーーーーー何故だろう。恐ろしい程無感情な声なのに、ひどく懐かしいと感じでしまうのは。
ーーーーーひどく毒舌な気がしなくもないが。
包み込まれるような安心感に浸ろうとしていた時、俺はほぼ反射的に体を起こす。
「君、俺の言葉が分かるのか!?それとも話せるだけとかか?」
「返答は、はい、です。あなたが私の膝枕をもっと堪能したい、というのは分かりますがら これ以上寝ていられると、体に毒なので。」
途轍もなくひどい言い草だ。だがまぁ、気持ちよかったのは嘘じゃない。因みに、君と呼んだのは少女からそんなオーラが出ていたからである。俺は、ついさっきまで膝枕をしてくれていた少女に体を向かせる。
「えっと、さっき襲って来たのは君、だよね?
あと、ここどこ?」
「君ではございません。私はクロエ・ルーナ。そして、あなたをここに連れて来たのは私であり、ここは私の寝床でございます。」
あたりを探ると、蝋燭が部屋の明かりとして使われており、机とベッド、椅子があるだけだ。どうやら建物の一室らしい。
かなり昔の建物なのか、年季が入っているように見える。そして静かだ。
クロエさんは何故かメイド服を着ている。長く伸びた真っ白な髪に、真っ赤に染まっている瞳。どこまでも透き通っていて、吸い込まれる感じがする。
ーーーー綺麗だ。瞳が。そんなことを考えながら俺は尋ねる。
「えっと・・クロエさ「クロエで。」
「・・・・じゃあまずクロエはなんで俺の言葉が通じるの?襲って来た理由は?」
「私が、あなたと同じような境遇、と言えば良いのでしょうか。そして襲ったのではなく、話し掛けただけです。」
成る程。俺の早とちり・・でもなかった気がするがまあいい。それより、俺と同じ境遇。ということは、
「クロエも異世界転移したのか!?」
「いえ、この世界で生まれ育ちました。同じ境遇というのは、神の使いということです。」
神の使いというのは女神に頼まれたってことか。言葉が通じる理由がわからんが。
俺が考える素振りをしていると、クロエが口を開く。
「恐らく、スキルでは?」
「いや、言語理解は作れなかったんだが。」
「作る?という事は知りませんが、私のスキルの事です。」
あぁ、そっちね。何だろう、何でもできるのは自分だけとか思い上がっていたかもしれない。気をつけよう。ここは異世界。死は今までとは比べ物にならないくらい身近なのだ。
「成る程。取り敢えず、俺の名前は水月黒雪。一応、この世界を救うつもりだ。ただ、この世界のことをほとんど知らないから、いろいろ教えてくれると助かる。」
「・・・了解です。非常に不本意ながら、私、クロエ・ルーナが勇者さんの手助けをさせていただきます。」
「いや、勇者さんじゃなくて黒「勇者さん。」
「・・・・はぁ。・・・・わかったよ。」
なんだか、妹に似ている。妹は全く押しが強いとかではないのだが、背丈というか雰囲気が。後俺がなんや感やでいうことを聞くところとか。
改めてクロエを見てみる。まつ毛長いな。白いし。う〜ん何か引っかかるが、まあいいか。
「?私の美しさに見惚れるのはいいですが、
これ以上穢れを増やす気ですか?それよりお互いのステータスを確認しましょう。」
「クロエは罵倒が趣味なのか?言ってみ?お兄ちゃん怒らないから。後、ステータスの見せ方わかんない。」
「はぁ、使えない。ステータス・オープンと言って、
見せる対象を念じれば良いのです。」
華麗なスルー。からの罵倒。まぁ、この際諦めよう。意外に面倒見は良さそうだし。
「ステータス・オープン」
そう念じてステータスをクロエに見せる。
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名前:スイゲツ クロユキ
種族:人間
性別:男
年齢:16歳
称号:異世界転移者 龍を統べる者 探索者
Lv121
体力:6050000/6050000
魔力:5000/7150000
筋力:587000
物防:595700
器用:1000000
敏捷:790500
魔防:579000
運:8000〜
スキル
全属性魔法
鑑定
成長速度10倍
必要経験値1/10倍
アイテムボックス
治癒魔法Lv120
結界Lv1000
スキル付与
スキル削除
探索Lv28new!!
固有魔法
武術の極み
魔術の極み
万物創造
魂の収束
手加減
言語理解
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うん?言語理解がある。作れなかったのに。変わりに魔力がごっそりないからできたのか。と思い、言語理解の欄を見やる。
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言語理解
あらゆる言語を理解できる。常時発動。
但し、精霊、悪魔、上位生命体以外と話すことはできない。
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何この素晴らしすぎる、最悪の固有魔法。意味ねえじゃん。てか、上位生命体ってなんだよ。あと運が何故か下がってるな。ともかく、クロエは何者?とクロエを見ると、クロエは俺のステータス画面を凝視していた。チートならそっちもじゃないのかよ。
「今日異世界に来たと聞いていましたが、何ですか、この壊れステータスは。」
「何か龍に会って倒したんだよ。それよりそっちのステータスは?」
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名前:クロエ・ルーナ
種族:人間
性別:女
年齢:14
称号:呪いを受けた者 神の使い(隠蔽)不幸者
探求者
Lv?
体力:80000/80000
魔力:50000/50000
筋力:3000
物防:3000
器用:2000000
敏捷:4500000
魔防:4000
運:1
スキル
氷属性魔法
風属性魔法
水属性魔法
光属性魔法
生活魔法
鑑定
成長速度1/2
必要経験値4倍
隠蔽
料理
気配察知
危険察知
潜伏
呪:悪魔の怒り
固有魔法
不幸の極み
敏捷倍加
共通言語
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何というか、聞かないほうがいいな。当人はあまり気にしている様子はないが、ステータスの不幸オーラが半端ない。そして人間だったことに少し驚きだ。
「・・・この共通言語理解ってのは?」
話を変えたい。これも凄く聞きたいからちょうど良いしな。
「ありとあらゆる言語を理解し、話すことができます。但し、悪魔や精霊、上位生命体は無理ですが。」
「俺の固有魔法の下位互換か。下位でも何でもないけど。まあ、言葉がクロエに通じるだけマシか。それよりこの後どうするんだ?今からとこれからと。」
ひとまず話は切れた。見え見えだが、それでもいい。傷ついた時の痛みは、誰よりも知っているから。
「・・・取り敢えず寝ましょう。詳しいことは明日説明します。そして、これから私と勇者さんで旅をします。泣いて喜んで下さい。こんな美少女と共に行けるのです。その無駄に高い運に感謝するのですね。あと、あまりの可愛さにクロエたんはぁはぁと発情したら殺しますので。」
・・・言い終わった後にほんのり頰が赤くなってるが、照れてるのか?自分で言って自分で恥ずかしがってるのか?
何それ可愛すぎる。
「やった、最高の旅になるな。じゃあ寝るか。」
つい、いつもの癖で髪をを撫でてしまったが、クロエは特に抵抗も罵倒もせず、ぷいっと顔を背けただけだった。
ーーーーーーその晩、夢を見た。
クロエの膝枕のせいか、妹のことをずっと考えていたせいかは分からない。
けれど、その夢の中で俺は小さな頃の自分になっていて、誰か大切な人といた気がする。
初めて見た夢なのに、今まで何度も見たように感じる。白い、白い空の中で何かを見ていた。
そんな気がする。
その夜ーーー
黒雪「因みに俺はどこで寝れば?」
クロエ「私が膝枕をしましょう」
黒雪「ベット他の部屋にもあるよね」
クロエ「これ以上穢れるのは嫌なので」
黒雪「ベットが!?そんなに嫌か!?」
クロエ「服なら洗えばいいのですが、
ベットは匂いが染み込みすぎます」
黒雪「もうやだこの子」
無事別の部屋で寝れたのたのだった。