国の名
今回の主役は扶桑型戦艦。
個人的には『扶桑』の艦橋の抉れてる所が凄く好きです。
『扶桑』『山城』はガングード級戦艦一番艦『ガングード』と対決していた。
ガングード級戦艦は、元々三○糎三連装砲四基一二門を装備する戦艦で有った。速力も二三ノットしか出せないものであった。併し、それも過去の話である。
昭和一一年に行われた大改装により、ガングード級戦艦は、速力こそ二二.五ノットと下がったが、主砲を三六糎連装砲四基八門に換装しており、打撃力は上がっている。
対する我らが扶桑型戦艦は当初から三六糎連装砲六基一二門を持っており、防御もそれに準じた物に成っている。一隻単位でもガングード級を凌駕する。
しかもそれが『扶桑』『山城』と二隻いるのである。最早負ける要素は何処にも無い。そう、『扶桑』艦長、木下三雄大佐は自信満々に海戦に挑んだ。
「砲撃始め」の命令が下ると共に、『扶桑』の艦上に火焔が踊り、それを切り裂き、六つの砲弾が飛ぶ。
敵五番艦にも、同様に発射炎が走るが、『扶桑』とは比べものにならぬ程小さい。
「弾着」
敵五番艦の左舷に巨砲は落下した様で、敵艦は水柱の影に隠れてしまう。一拍遅れて『山城』からの砲弾も落下した。これは敵艦を飛び越え、向こう側に着弾した。
敵五番艦の砲弾は、『扶桑』の前方に落下した。『扶桑』は、水柱の幕に正面から突っ込んで行く。
沸騰した滝が『扶桑』に浴びせかけられる。併し『扶桑』はそれに構わず、第二射撃を放った。
『ガングード』艦長、アルトラリーストは、大波に翻弄される葉の心地を味わった。
『ガングード』は主砲換装をして、現在戦っているフソウ・タイプと同じ、三六糎砲を装備したとはいえ、元は三○糎砲搭載艦である。装甲も現在の主砲口径に合っておらず、『ガングード』は三六糎砲弾を数発でも喰らったら、スクラップ同然と成ることは想像に難くなかった。
そもそも赤色海軍は沿岸警備隊と揶揄されていた様に、かつての露西亜帝国海軍とは比べものにならぬ程、小さい海軍であった。
それが十年前から急速に軍拡へと乗り出した。四○糎砲艦が二隻も建造され出した。それに伴いガングード級戦艦も改装を施された。
対艦攻撃訓練も行われて、それ程本格的な軍拡であった。
それがどういう原因からで有るかは、一介の海軍将校であるアルトラリーストには、思いもよらない。ただ、命令が有るから従うだけである。
それでも、一端の海軍には成ったとの自負は、有った。併し、目の前の巨艦を見ると、その自信が揺らいでゆくのを、アルトラリーストは感じていた。
『扶桑』は第五射撃目に狭叉弾を得ていた。
斉射を告げるブザーが『扶桑』内に鳴り響く。鳴り止むと同時に『扶桑』の一二門ある三六糎砲が火を吹いた。
『扶桑』の右舷側に炎が噴出し、艦が左へと傾ぐ。鼓膜を破るような轟音が『扶桑』内に響き渡り、『扶桑』から一二発の三六砲弾が放たれた。
「弾着!」
観測員の声と共に、敵五番艦が水柱に包まれ、見えなくなる。併し、水柱が上がる前に、敵艦に命中炎が出たのを木下大佐は確認していた。
「命中弾、一発」
「一二発放ってか」
観測員員からの報告に木下大佐は思わず声を出してしまった。
「仕方ないです。扶桑型は他型の戦艦と違い、散布界が広いきらいが有りますから」
副長の坂上敏夫中佐の言葉に、木下大佐はウン、と頷いた。
「イヤ、失敬。少しばかり焦っていた様だ。マァ、後数回も斉射すれば、問題無いだろう。
「敵艦は明らかに『扶桑』より小さい。凡そ二万瓲といった所かな。それなら装甲も高が知れている。砲術長このまま砲撃を続行してくれ」
「はっ」
砲術長、岩見十蔵少佐は敬礼し、
「砲術そのまま続行!」
と、指揮所に連絡を寄越した。
『扶桑』から第二斉射が放たれた。それと同時に、敵艦の第六射撃が落下して来た。
併し、それは第一射撃からまるで近づく様子が無かった。
もしかすると『扶桑』は一発の直撃弾も喰らうこと無く、この戦闘を乗り切れるかも知れんぞ。そうしたら。
木下大佐は前方で苦戦する『伊勢』と『日向』を、目に収めた。
敵五番艦目掛けて、第二斉射が落下した。どうやらこれも命中は一発の様であった。
暫くして、更に敵艦が火を吹く。発射炎では無い。『山城』が、命中弾を出したのであった。
『扶桑』から第三斉射、『山城』から第一斉射が放たれる。
『山城』の斉射が敵艦に命中した時、『扶桑』乗組員からも、歓声が上がった。
敵五番艦は『山城』の砲弾を受けて、真っ二つに裂けてしまったのだ。
「『山城』の弾は、竜骨を折ったのだろう」
木下大佐の云う通り、『山城』の砲弾は艦の背骨とも言うべき竜骨を、へし折ったのであった。その結果敵艦は真っ二つに切断されたのである。
歓喜に沸く『扶桑』を一発の砲弾が揺るがした。
「ほ……砲術より艦長。第四砲塔に被弾。使用不可能」
どうやら『ガングード』の最後に放った砲弾が、不幸にも『扶桑』第四砲塔に直撃したらしい。
「窮鼠猫を噛む、か」
上がってきた報告に、木下大佐は忌々しく呟いた。
「だが、『伊勢』と『日向』を助ける事は出来る。目標、敵四番艦」
木下大佐が命令を出し終えるか、終えない内に一つの報告が上がってきた。
「敵巡洋艦及び駆逐艦、右舷より接近中!」
「何⁉︎味方水雷部隊は何をやっておる」
坂上中佐が珍しく感情的になる中、木下大佐は新たに命令を下した。
「主砲、副砲は敵水雷部隊を狙え」
「しゅっ主砲もですか?」
岩見少佐は信じられない、とでも言いたそうな顔をした。
「その通りだ。それに敵三番艦を見たまえ。最早虫の息であろう。『伊勢』『日向』は『長門』『陸奥』に任せて、我々は邪魔者を懲らしめよう。
「『山城』にも敵水雷部隊を狙うよう、言っておいてくれ」
「はっ」
岩見少佐が引き下がると、命令が伝えられ、主砲、副砲が旋回して、敵水雷部隊を狙う。
『扶桑』の鉄槌が、赤軍水雷部隊に向かって振り下ろされた。
大体の決着が付いた所で、次は愈々紀伊型 対 ソヴィエツキー・ソユーズ級となります(予定)
誤字、脱字、ココがおかしい、て所が有りましたら教えて戴けると嬉しいです。




