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「ど、どういうこと!?」
「ホントどういうことだよ、ヘンテコ宇宙人。これ以上あんこをややこしい目に遭わせようっての?」
「うるさい。お前が来る前から言おうと思ってたことだよ。お前が来て、邪魔に入ったから言えなかったんだよ」
「ああ、あの『それに・・・』の続き?」
ディアが前世の記憶を話してくれた後に言いかけた言葉だ。
・・・正直、あの時かけてくれた言葉はちょっぴり嬉しかったのに。その後にこんな言葉が待ってるなんて。聞きたくなかった。
「じゃなくって、ホントにどういうこと!?」
「言った通り、君と再び愛し合う!」
ディアがこっちに近づいてくる・・・のを、寸でのところできなこちゃんが頭をつかんで抑える。
「しっかり説明しなさいよ、このぶっとび宇宙人!!」
「離せ、汚い手で僕に触るな!」
「ちょっと。話が進まないから、両方とも落ち着いてよ」
「むう、君がそう言うなら仕方ない」
「で、ディア。どういうことか説明してくれる?」
危うく宇宙人対人間の乱闘になりそうだった。何とか双方をなだめて、ディアの説明を促す。
ディアは不服そうだが、説明してくれる。
「だから、彼女が前世の記憶をなくした。ならばもう一度、僕と君が愛し合えばいいんだ」
「ええっと、それはちょっと・・・」
「無理に決まってんでしょ」
「馬鹿を言うな。僕と彼女の間に無理なことなどない」
「無理だよ!あんこがあんたみたいな宇宙人を、愛すわけないわよ」
それを聞くとディアは、まるで『ピシャーン!!』という効果音が付きそうなほどの衝撃的な顔を見せた。雷に打たれたような、とは正にこのことだ。
「じょ、冗談を言うな!冗談だろ?」
「う~ん」
「嘘だろ・・・!?」
正直なことを言うと、はっきり言ってそれは難しいだろう。と言うか、まず無理じゃないかなぁ。
私の反応が信じられないのか、ディアは体を震わせている。いや、体が震えているのは元からかな?
とにかく、相当ショックなようだ。
俯いて黙ってしまった。それに、きなこちゃんが追い打ちをかける。
「ね、分かったでしょ?あんこがあんたみたいな宇宙人と相思相愛なんて無理な話よ」
少しの間ディアは黙っていたが、やがて口を開いた。
ありえないことを、口にする。
「・・・まだだ」
「え?」
「まだ、僕は諦めないぞ!」
「何言って」
「僕が彼女を恋に落とす!!」
聞き間違いならどんなに良かったことか。だがそうもいかないみたいだ。
「君が僕を好きになれば、問題ない話だ。そうして、僕らが愛し合えばいい話だ」
ディアはそう宣言した。だが、きなこちゃんも黙ってはいなかった。ディアの痛いところを、確実に突いたのだ。
「ぶっ飛び思考も良いところよ。その姿で、どうやってあんこを恋に落とすっていうの?例えあんこが恋に落ちたところで、種族が違うんだったらどうしようもないのに」
するとディアは、ニヤリと笑って「『人間』になれば問題無いんだな?」と告げた。と思いきや、私に近寄ってきた。
不意を突くように、天井が崩れた拍子にできた傷口に顔を近づけ・・・舐めた。
舐めた!?!?
驚くや否や『ボン!!』と音と共に、ディアは姿を消した。
いや、姿を消したと言う表現の仕方では語弊があるかもしれない。正確に言うならば、『ゼリー状の体だったディアが、人間になっていた』だ。
緑と黄色の入り混じった、明るいイメージを持たせる髪。髪の色と同じ、綺麗に透き通った瞳。人間と同じ肌の色。五本の指。しっかりとした、男性の体。
間違いなく、ディアは人間の体になったのだ。
「さあ、これで君と同じ『人間』になったぞ!」
とてもイキイキとした表情で、彼は私にそう言った。