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三つ目星人は言った。
「君と僕は前世で恋人だったんだ」
「えっ・・・」
驚きを隠せない私に三つ目星人は優しい目をすると、ゆっくりと語り始めた。
「君と僕は前世で恋人だった。とても仲良く、将来を誓ったまでに。だが・・・」
優しい優しい瞳が、悲しそうにその目を伏せた。
「その頃、僕たちの生きていた時代はとても治安が悪くてね。さらに君の家と僕の家はとても仲が悪くて。とにかく親が、僕ら二人が仲良くするのを拒んだ。僕らの中を引き裂くためなら、手段を択ばなかったんだ」
声色が、険しいものに変わっていく。それはこの後に、苦しいことが起こるのを想像させた。
「何とかして親の隙を突き、僕らは二人で逃げた。もう家のことを気にすることもなければ、親からの邪魔も入らない。しかし・・・、やっと二人になれたと思った時にはもうすべてが遅かった」
そこまで言って、三つ目星人はピタリと喋るのを止めた。とてもつらいことがあったようで、躊躇っているのが目に見えた。
でも続きが気になる。それに、最後まで聞かなきゃいけない気がした。
だから、その後を促す。
「・・・何があったの?」
「僕らはお互い、長い間自分の家から出させてもらえなかった。だから愕然としたよ。家を出たら辺りは荒れ果てて、そのとき起こっていた戦争が激化していたなんて知らなかった。その後、僕らは必死に生きようとした。でもやっぱり難しかったんだ、あの時二人で生き残るなんて」
「じゃあ、」
「うん、あっけなかったなぁ。あの時、やっとの思いで家を出たっていうのにすぐに兵に見つかった。それで、ね・・・」
「そんな・・・!」
それで終わりだと思っていた。しかしその話にはまだ続きがるようで、三つ目星人は口を開く。
「でも、僕らはそのとき誓い合ったんだ。僕らが生まれ変わったら、今度こそ一緒になろう。って」
私は言葉を無くした。
そんなことがあったなんて。それなのに・・・。私は思い出せないのが申し訳ない。
すると、三つ目星人は言った。
「でも、君は覚えてないのか」
「っ!」
きっとひどい言葉を浴びせられると思っていた。でも、それはどうしようもないことだ。だって、忘れた私が悪いのだから。
でも三つ目星人は私の予想に反し、思ってもないことを言ってくれた。
「まあ、しょうがないか」
「え?」
「いいんだよ。君がまた生きて、僕と話をしてくれるだけで。それに・・・・」
三つ目星人がいいと言ってくれた。私はそれが嬉しかった。
しかもその上まだ何か言おうとしている。これ以上何か優しい言葉をかけてくれるのだろうかと、少し期待してしまった。
だが、その続きを聞けることはなかった。
何故なら・・・
「あんこ大丈夫!?」
「き、きなこちゃん!どうしてここに!?校内放送がかかって逃げたはずなんじゃ!」
きなこちゃんが来たからだ。
「避難してもあんこが何処にもいないから、まさかと思って来てみたの。そしたらまさか、ホントにこんなところに居るなんて・・・、って何この巨大なオブジェ!?」
「あのね、きなこちゃん。そのことなんだけど、」
「あんこ、ケガしてない?立てる?とりあえず、早くここから逃げよう!」
そう言って私の肩を組み、立たせてくれる。
いや、来てくれてのは嬉しいし、正直どこに向かって出ていけばいいのか分からなかったから正直助かった。
でもまずい。きなこちゃん、焦りすぎて話を聞いてくれない。
今この場を離れるのはまずいんだってば!三つ目星人を置いてっちゃう。あぁ、あの三つ目星人のこと、どうしよう。
なんて考えていたのだが、それはもう遅かった。
「ちょっと、君。僕のフィアンセをどこに連れていくつもりだ」
「え、あっ、ちょ・・・」
「何こいつ!?」
きなこちゃんの行く先を阻むように、三つ目星人が佇んでいる。しかも、すっごく怪訝な目できなこちゃんを睨んで。
きなこちゃんはきなこちゃんで、すごく驚いている。
・・・どうしよう。私でさえ今どうしていいのかわからないのに、話がさらにややこしくなっちゃう!!