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「文化祭お疲れ様でしたー」
『お疲れ様でしたー!!』
色々あったものの文化祭は無事終了。その翌日の今日は午前中を使って片付けと反省会、そして・・・
「じゃあ早速開票していきまーす!」
この二日間でとった、誰が一番可愛いか・格好いいかアンケートの結果を発表するのだ。クラスのみんなはもう大盛り上がり、「誰が一番かなー」や「俺、一票も入らなかったら・・・うぅ」なんて口々に期待や不安をこぼしている。
女子学級委員がアンケートボックスから紙を取り出しては読み上げていく、それを男子学級委員の人が黒板に書いていく。
あ、黒蜜に一票入った・・・今度はディアに一票。次はきなこちゃんに・・・。いくつか黒板には名前が連なっているが黒蜜、ディアがやっぱり優勢だな。他の人より全然正の字が多い。ひえっ、私に一票入った!? え、えぇ~私に投票してくれる人がいたなんて、嬉しいのかな・・・?どちらかと言うと恥ずかしい気が。でも素直にここは喜んでいいのかな?うう~ん。
なんて私の一票に気を取られていると、クラス中でざわめきが大きくなっていく。「おいおい、これやばくね!?」「スゲー!」とかの声が増えていく。気になって黒板を見上げると・・・
「木山さん・・・次も木山さん、また木山さん・・・」
すごい勢いできなこちゃんへの票が入っているところだった。読み上げてる方の声も信じられない、とその声色が語っている。あ、どんどん正の字が増えていって・・・ついにはトップに躍り出た!
ざわめきがいっとう大きくなっていったところで、開票する声が途切れた。結果から言うと、圧倒的な票差できなこちゃんが堂々の一位に。
「格好いい人一位は木山さんです・・・っ!!」
しかしその一位は可愛いほうではなくて、格好いい方での一位だった!!
委員の言葉でいったんは静まった教室が再び大きなざわめきと驚きで包まれる。と、そこでちょうど授業の区切りを告げるチャイムがスピーカーから流れた。
「ではここでいったん休憩。また休み時間が終わったら着席していること」
隅の方で私たちの様子を眺めていた先生がそう言うと、座っていた生徒は各々の友達の場所へと散り散りになっていく。私たちはすぐさまきなこちゃんのところへ。
「き、きなこちゃん。一位、おめでとう・・・?」
「ありがと、あんこ」
「おいきなこ、これはどういうことだ」
「そうだぞきなこ、どうしてきなこが一位なんだ!?」
ディアと黒蜜がきなこちゃんに詰め寄ると、余裕そうな態度と口調で悠々と口を開いた。
「何をそんなに驚いてるの、同率二位さん?」
「「ぐっ・・・」」
え?あ、本当だ、ディアと黒蜜は同率で二位だ。それはそれでなんて偶然・・・。
「それにしてもきなこちゃん、一位なんて凄いね」
「ふっふーん、でしょ?頑張った甲斐があったよ」
「それでもおかしいじゃないか!誰が格好いいかで女子が一番だなんて」
「なぁにディア、負け惜しみ?別にルール違反でもなんでもないじゃん、女子が格好いい側に回っちゃ駄目なんて言われてないんだし。二人ともお互いのこと意識しすぎで私のことなんて何にも気にして無かったみたいだしね」
「だとしても、あの後半の追い上げはどうやったんだ。ほとんどがお前に入って、俺もディアも急に票が減った」
「そう言えば・・・。急にきなこちゃんにだけしか票が入らなくなったね」
「それは、後半で急にお客さんが増えたの覚えてない?」
「あぁ、団体さんみたいな感じで一気にお客さんが来た時があったような・・・」
「それみんな私が呼び寄せたからね」
「えっ、そうだったの!?」
「うん。執事口調でお客さんのことは『お嬢様』って呼びかけをして、女性客沢山呼び込んだ。多分その人たちがみんな私に投票してくれたんでしょ」
そんなことしてたなんて全然知らなかった。私も自分のことでいっぱいいっぱいだったから他のこと気にかけてる余裕なかったしなぁ。
「ん?きなこ元はチャイナドレス着る予定だっただろ。何で急に執事になってたんだ」
「勝負のこと決まったから、演劇部の知り合いの子に余ってる男服無いか聞いて借りてきた。執事がよく着るような燕尾服があったからそれをね」
「お前ー・・・最初からそのつもりで勝負の話だしたな」
「バレた?」
「はぁ、全く・・・ずる賢いことには頭がよく回るもんだな。テストはからきしのくせに」
「それは今関係ないでしょ。ま過程は何であれ、私が一位だったんだからあんこに相応しいのも私!負け惜しみは見苦しいよ?ねーあんこっ!」
「わっ、きなこちゃん急に・・・苦しいよ~」
「一位取ったんだからこれくらいいいでしょー。ほらあんこ褒めてほめて!!」
きなこちゃん、抱き着いてきて急に甘えたさん?しょうがないなぁ・・・今日はちょっとサービスね。特別に抱きしめ返してあげる!
「あっ!きなこばっかりずるいぞ、僕も頑張ったんだからな!」
「お前は駄目だ、俺と同率二位のくせに。おいあんこあんまりきなこを甘やかすなよ、つけあがるぞ」
「いいじゃんこれくらいのご褒美、ね?」
「まあね」
ふふっ、何だかんだでみんな楽しんでたみたいだし私も楽しかったな。ディアも少しはこれで打ち解けられたかな、黒蜜もこれからディアと仲良くなってくれたらいいな。色々思うところはあるけれど、まあ今日のところは文化祭お疲れ様!