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天気は快晴、心は曇天。本日は文化祭二日目。コスプレ喫茶で私たちは接客をしているのだけれ・・・ど。
「い、いらっしゃい・・・ませ・・・」
「どうしたんだあんこ、具合が悪いのか!?声が小さいし震えているぞ、ぞれに顔も真っ赤だ」
「ち、違うよ~。ただ・・・」
「ただ?」
「・・・いの・・・」
「なんだって?」
「恥ずかしいのっ!!こんなひらひらした服~、メイド服なんて・・・ほかにも衣装あったでしょ?何で私これなの?」
「似合ってるぞ、あんこ!!」
「そういうことを言ってほしいんじゃないよ!・・・どうせ私なんか・・・」
私が着ているメイド服、フリフリひらひらしていて落ち着かなくて・・・。恥ずかしくて接客なんてできないし、変なところが無いか、見られてないか気になってしょうがない。ちょくちょくスカートの裾を引っ張ったり髪の毛をいじったりしまう。教室の端っこでもじもじしてる姿は傍から見たらさぞ滑稽だろうな・・・はぁ。
「なんでって、それはお前らが衣装決めるときいなかったからだろ」
「黒蜜・・・そもそもその衣装決める日っていつの話?」
「こいつ・・・あ~、ディアが転校してきた日。お前らどっか言っちゃってその間に各自着たい服取ってったから、早い者勝ちで。残ったのがその服だったんだよ」
ディアが転校してきた日・・・?あ、ああ~そう言われればそんな気が・・・。
「自業自得だな」
「うぅ・・・」
黒蜜が意地悪そうにこっちを見て笑う。どうせ私のこの格好がおかしくって仕方ないんでしょ。
「いいよね二人は。黒蜜はギャルソン、ディアは王子様・・・?で両方とも似合ってて」
「何を言うんだ、あんこも似合っていて可愛いぞ!!」
「だ、だから、そういうお世辞は良いって!!恥ずかしいなぁ~もう」
「お世辞じゃ・・・ぶっ!痛ったいな!」
うわ、黒蜜のお盆アタック。縦でぶつとか痛そう・・・。流石幼馴染、きなこちゃんとやること同じだ。
「ほら、注文はいったぞ。行って来いよオウジサマ」
「ふん、黒蜜に指図されるのは癪だがこれも点を稼いであんこに相応しいと証明するため!行ってくるぞ!!」
「い、行ってらっしゃい・・・?」
嬉々としてお客さんの中に消えていくディア、勝負だ何だかんだ言っているけど普通に文化祭楽しんでいるなぁ。
「そんなにあいつ格好いいかよ」
「え?」
「ディア。お前あいつのこと見てニコニコしてたから、俺よりあいつの方が格好いいかよ」
「え、いや、ううん。ただ楽しそうでいいなぁ、って思って」
「そっか」
そんなにニコニコしてたかなぁ・・・?接客もあるからへらへらしてると思われないように気を付けないと、と頬を手でこねる。
「そう言えば何であいつは王子なんだ?」
「なんか、女の子たちが『絶対これが似合う!!』って勝手に決めてたよ」
「あっそ」
なんて呆気なくて素っ気ない返事!黒蜜は、ディアのこと苦手なのかな・・・?何となくだけど目が合うとちょっと嫌そうな顔するし、お盆でぶつし。でもあんまり黒蜜嫌いな人とかいないみたいだし。う~ん?
「調子は?」
「ひゃい!?調子・・・?」
うわ、考え事して急に返事したから変な声出た・・・!
「何をそんなにビビってるんだよ、調子はどうだって聞いただけなのに」
「ちょっと考え事してたから、調子?うん、元気だよ。でも何で?」
「昨日あれだけ泣いてたんだから少しは気にするよ」
「ああ、うん平気だよ」
「夜とかしんどかったら連絡してくれてもいいんだからな」
「・・・大丈夫だよ」
「そうか・・・・・・・・・」
「あっ、昨日借りたハンカチ返すね。はいこれ、ありがとう」
「ん」
ポケットから青いハンカチを取り出して渡す。そっと黒蜜の手に載せると、彼はちょっとだけ笑った・・・ように見えた。
「じゃあ俺らもまじめに働くか。なんかすごい客来てるし」
「わ、ホントだ。団体さんかな?頑張らないとね」
「そうそうその意気、メイド服を恥ずかしがってる場合じゃないな」
「う・・・いいもん、今から挽回するから」
黒蜜はすぐそうやってからかう・・・教室の端で縮こまってるのはもうやめ、深呼吸して踏み出す。
「よし行こう!」
「メイド服だろうと何だろうとあんこはそうやって前向いてるのが一番だよ、『私なんか』なんて言うと本当に可愛くなくなるぞー」
「そういうことばっかり!・・・でも、ありがと」
色んな所でいらっしゃいませがこだまみたいに飛び交っている、それに負けないように「いらっしゃいませ」の声を出す。
私たちのクラスは盛況で、楽しみに包まれた二日間は幕を閉じた。