23
「折角休憩になったからあんこを追って来たのに、これはどういう事だ」
「いや、だって・・・」
「と言うかさっきはどうしたんだ。何か失礼なことをしてしまっていたらすまなかったが、さっさといなくなってしまうのは正直悲しかったぞ」
「それは・・・」
「それで探しに来てみれば、こんな人気のない場所で何をしていたんだ?」
「チッ、しつこいな・・・」
ん?今黒蜜舌打ちした?ディアの弾丸トークに流されたけどなんか「チッ」て聞こえたよ・・・。
「何だお前は、さっきから僕の邪魔ばかりして。それに今何と言った」
「だからしつこいって言ったんだよ」
「なっ!お前だってあんこのことを連れまわしているじゃないか。第一お前はあんこの何なんだ」
「俺はあんこの幼馴染だよ。それに『お前』じゃない、ちゃんと黒田蜜也って名前がある」
「ちょっ、黒蜜もディアも落ち着いて・・・」
「お前こそ何なんだよ、転校してきたばっかのはずなのにあんこやきなこと仲良さそうにしてて。それにお化け屋敷の時もあんこを急に引っ張り込んで泣かせたじゃないか」
「そ、それは・・・」
ああ、どんどん雰囲気が険悪な方向に・・・。
「とにかくあんこを泣かせるような奴は金輪際近づくなよ」
「それを決めるのはあんこじゃないのか?」
「えっ、私?」
「それは・・・」
「あんこのことをお前がすべて決めるのはおかしいじゃないか。それとも何だ、あんこが私と関わりたくないといったのか?」
「ちょっ、黒蜜?ディア?」
「・・・」
あわわわ・・・。ど、どうしよう、もう私の手に負えないくらい雰囲気最悪になってきたよ。
「どうしたんだ。何とか言ってみたらどうだ」
「喧嘩両成敗!!」
「「っだぁ!!??」」
スパパーン!一瞬で黒蜜とディアが頭を抱えてその場にうずくまり、それを眺めるきなこちゃんが。彼女の手にはお盆が握られている。
あれで殴ったのか、それは痛い・・・!!
「休憩時間終了!早く教室戻るよ」
「きなこちゃん・・・!」
「あんこも、人手足りなくて大変なんだから」
「えっ、あ!もうこんな時間!?」
時計を見ると休憩時間なんてとっくに過ぎている。
「休憩終わるはずなのにちっとも帰ってこないんだもん、次に休憩する人が困ってたよ。ホラ早く帰る!」
「ご、ごめん」
「それにしたってきなこ、やり口が乱暴なんだよ。お盆で叩かれるの結構痛いぞ」
「柔道やってるんだからそれくらいの痛み我慢しな」
きなこちゃん厳しいよ、容赦なく叩いてそれはちょっと・・・。それなのに悪びれもせずズンズンクラスに戻るために歩いていくし。
「そこの二人は何?揉めるのは良いけど自分の持ち時間位守りなよ。それにディアの方なんか休憩時間でもないのに居なくなって、こっちはてんてこ舞いなんだからね」
「えっ、私たちのクラスそんなにお客さん沢山入ってるの?」
「それが、ディアはこっちに来てからまだそんなに日もたってないでしょ?食べ物のことさえ知識が無いんだから厨房に入れることも危うい・・・。んで接客してたら、外見の珍しさとかあったんだろうけど『一年のあるクラスに見たこと無いイケメン男子がいる』って噂になっちゃってさ。それ見たさにお客さんが来たのよ」
「ああ、そう言えば転校してきた時クラスの女の子も騒いでたね。髪の毛とか凄い印象的な色してるし・・・」
「張り切って今日のための衣装も用意してたしね。私も呼び戻すためにこっち来たんだから、早くあんたたち連れ戻さないと私まで怒られるし」
「よく俺らのいる場所がわかったな」
「あんたの移動範囲なんてたかが知れてるわよ。三人ともまとめていてくれて助かったわ、探す手間が省けた」
「ちっとも良くないぞ!!」
今まで静かだったディアが急に話に割り込んできた。お盆で叩かれたところを押さえてる、相当痛かったんだな・・・。
「結局僕とこいつの話は終わっていない、どちらがあんこに相応しいかの決着がついていない!」
「しつこいぞ、お前。それから黒田蜜也だって」
「はーん、それで揉めてたわけね。そんなもんすぐ決着つくじゃない」
二人の話を聞いたきなこちゃんがニヤリと笑った。どっちかって言うと悪そうな笑みだ!すかさずその言葉に喰いつくディアと、面倒くさそうにする黒蜜。
「何だと、それは本当か!?」
「おいきなこ・・・この分からず屋に変な事言うんじゃねえよ」
「あのー、さっきから何の話?相応しいとか意味が分からないんだけど・・・」
私たちの話なんて無視で、きなこちゃんはいつの間にか着いた目的地である私たちのクラスの目の前で立ち止まる。そして入り口真横に設置された段ボール箱に手を置いた。
「これで勝負すればいいじゃん」