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びっくりした・・・・!急に真横の壁から看護婦の恰好をしたゾンビ?が出てくるなんて。ひっ!!さっきのゾンビ、床をはって動いてる!気持ち悪・・・・。高校の文化祭でここまでリアリティを追求する必要ってあるのかなぁ?
「・・・・なあ、あんこ。もういいか?」
「へ?・・・・・・・・あっ!ご、ごめん」
「おう。気をつけろよ」
驚いてつい黒蜜の背中に飛びついてしまった。ゾンビもどきのこととは別に、黒蜜は私が飛びついてきたことに驚いて声を上げたみたいだ。
ゆっくりと背中から手を放すが、まだどこかにゾンビもどきがいるんじゃないかとビクビクしてしまう。
「ぷふっ」
「ちょ、今何で笑ったの!?」
急に黒蜜が笑ってくるから、何事かと突っ込んでしまう。一体何なのだ。
「いや、だってさ。お前さっきまで『お化け屋敷なんて怖くないし!』とか言ってたのによ」
「そっ、それは・・・・!!」
「それなのに『きゃあぁ!』とか言って俺にしがみついて。怖くないんじゃなかったのか?」
「うわわわわっ!そそそ、そんなことないよ。あれは・・・・」
「あれは?」
「躓いただけだよ」
「ぶっは!おま、躓いたって・・・・!じゃあ、震えてたのは何だよ?俺の背中、ガタガタ震えながらしかっり掴んでたじゃねぇか」
うわわわわわわわっ!!??恥ずかしい・・・・!
黒蜜が私をからかってケラケラ笑ってくる。
確かにがっつり黒蜜にしがみついてしまったぁ~!強がりで『怖くない』とか言うんじゃなかった。穴があったら入りたい・・・・。
「まだ怖いか?」
「え?」
さっきまで笑っていた黒蜜が唐突に聞いてくる。
はっ!・・・・まさか、まだ私をネタにからかって笑おうってんじゃないでしょうね?
「だから、まだ怖いかって聞いてんだ」
「あはは・・・・」
とりあえず笑って誤魔化すが、黒蜜には「怖いんだな」と見透かされてしまう。
うっ・・・・!どうせ私はビビりですよ、なんていっそのこと開き直ってやろうかな。
「しょうがねぇな、全くお前は・・・・」
「へ?うわっ、ちょっと何すんのさ?」
黒蜜が私の手をつないで、お化け屋敷をぐんぐん進んでいく。
「これならいいだろ。またしがみつかれても困るしな」
「ええ・・・・」
今起きている状況に思考が追い付かなくて、否定とも肯定ともつかないような微妙な声が出てしまう。
「それとも、嫌か?」
「別に、いやじゃないけど・・・・?」
「じゃあいいだろ。ほら行くぞ」
繋いだ黒蜜の手が大丈夫かってくらいに熱い。それに歩くペースがゆっくりになって、闇の中に進んでいく。それに伴って私の手を握る力が強くなっていく気がした。胸まで苦しくなっていくような感じだ。
何だか違う世界に踏み込んでいくみたい。あんまり近寄りたくないような、違う空気の混じったような世界に。
黒蜜、いつもと雰囲気が違う・・・・?
「ねぇ、何か怒ってるの?」
「・・・・・・・・そうだな、怒ってる。それに、ちょっと怖い」
「怖い?それってどういう・・・・」
「お前が!あいつと隠し事してるから!!」
黒蜜は立ち止まって振り返ると、私に対して怒鳴って来た。暗くてよく見えないけれど、苦しそうな顔をしてる。怒鳴ったはずの声がそう感じさせたのだ。
それでも、怒鳴られたことに対してのショックが大きくて何を言われたのかはうまく理解できなかった。
あいつって誰のこと?隠し事って何?何で怒ってるの?どうして怖いの?
沢山聞きたいことがあるのに全然上手く話せない。
「えっと」
「あ、・・・・ゴメン。急に怒鳴って」
「うん・・・・」
黒蜜はハッとしてすぐに謝ってくれたけど、まだちょっと怒ってるような気がした。
二人して気まずくなって、俯いてしまう。
そんな長い沈黙を破るように、すぐ横の壁が開いた。影が迫ってくる!
「きゃああぁ!?」
「智子っ!!」
つないでいた黒蜜の手がスルリと解けて、瞬く間に私は闇の中に取り込まれた。




