プロローグ
「美しい・・・あれが地球か」
無機質な機械音のみの狭い船の中に、小さな呟きが浮かんでは消える。
モニターには暗い、どこまでも続く闇の中にぽつりと青く輝く星が映っている。
そのモニターを声の主がギラリと・・・まるでハンターが獲物を捕らえるかのような目つきで射貫く。
「あそこに我が愛しの・・・!」
笑いが零れ、小さな体がフルリと揺れてキラキラ光る。
別のモニターには『目的地・地球まで残り60分』の文字。
「この調子でいけばいいだろう。ああ、早く会いたいぞ!!」
そう気を抜いたそのとき。
突然警報が鳴り響き、警告ランプによって室内は赤一色に塗り替えられた。
「なっ、何だぁ!?」
いきなりのことに驚き叫ぶが状況が良くなる筈もなく、パニックが大きくなるばかり。
そんな中警報が鳴りやんで、感情のない声で淡々とメッセージが告げられた。瞬時に彼の顔は真っ青になり、汗が滝のように吹き出した。
彼をそうしたメッセージの内容とは・・・
『エンジンが破損。直ちにこの宇宙船は近くの星、地球への不時着を実行します。繰り返します。エンジンが------』
というようなものだった。
そのメッセージを期に、宇宙船はガタガタと音を立てて揺れ始める。
やがて、ガタン!と一際大きな音が響くと同時に、宇宙船は急降下。
「うわああぁぁぁぁぁあ!!!!」
虚しい叫びが宇宙船に響き、彼を乗せた宇宙船は大気圏を突き抜けて地球へ向かってみるみる落下していく
こうして宇宙人と人間の長く大変な物語は絶叫を合図に、幕を開けたのだった。