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「いらっしゃいませ。二名様でよろしいでしょうか?」
「こちらアイスティーとシフォンケーキのセットになります。ご注文の品は以上になります」
「ありがとうございました。文化祭、楽しんでいって下さいね」
飛び交うクラスメイトの声、賑やかなお客さんの笑い声、廊下で呼び込みをする男子・・・・。
今日は文化祭の一日目で私、きなこちゃん、黒蜜は厨房担当。忙しいけれど接客に比べれば随分良いほうだ。
あんなにひらひら、フリルがたくさんついた衣装なんて着たくないなぁ。あんまり乗り気じゃなかったクラスの女の子も、もう半ばやけくそで接客してるし・・・・。ああ、よく見れば凄く笑顔だけど目が笑ってない。それどころか、光すらないように見える。
明日私たちがあの中のどれかを着るなんて、考えただけででっかいため息が出るよ。
「おいあんこ、そろそろ休憩だぞ」
私と一緒に厨房で料理をしていた黒蜜が、だるそうに肩をぐるぐる回しながらそう言った。
「あっ、うん。じゃあそろそろ休もうかな」
「おう。俺も今から休憩」
「そうなんだ。きなこちゃんはもう休憩終わりで、これから厨房に入るって。・・・・あっ、ほら来たよ」
黒蜜とそんな風に話していると、きなこちゃんがこれまただるそうにエプロンを縛り直しながら厨房に入って来た。
「やっほー。私戻ったからあんこと黒蜜は休憩行っていいよ」
「うん、そうすることにするよ。あ、どこか面白いところあった?」
「うーん、あんまりいろんなところに行かなかったからなぁ。でも三年生のどっかのクラスでやってるお化け屋敷が凄い盛り上がってたよ。どこだったっけな?」
「お化け屋敷ねぇ・・・・。あんこ、どっか他に行きたいことあるのか?」
「ううん、ないけど」
「じゃあ、俺と一緒にそこ行ってみるか」
「お化け屋敷に?」
「おう。嫌か?」
「そうじゃないけど・・・・」
・・・・お化け屋敷がすっごく盛り上がってた、っていうのは気になるけどなぁ。でもちょっとなぁ・・・・。
「じゃあ何?あ、もしかしてお化け屋敷が怖いとか」
「・・・・・・・・」
うっ・・・・!黒蜜が言ったことはあってるけど、何だか認めるのは癪だ。でもここで黙りこくってるのも変だよね。どうしよう・・・・。
「図星か?」
「ち、違うもん!怖くなんてないし!!」
「ぷふっ・・・・!」
「ちょっ!」
何できなこちゃんそこで笑うの!?黒蜜に『私がお化けとか苦手』っていうのがバレちゃうじゃん!せっかく隠してたのに。
「大丈夫なら行ってもいいだろ。ほら早く行こうぜ」
「うぅ・・・・」
黒蜜がそそくさと厨房を出ていこうとする。もう私の聞く耳を持たないみたいだし。
しょうがなく重い足を教室の外へと向ける。と、きなこちゃんが私の服の袖を引っ張って引き留めてきた。
「ちょっと、あんこ。黒蜜とお化け屋敷に行くのはいいけど、ディアはどうすんの?ていうかあいつ、今何してんの?」
「ディアは、大丈夫でしょ。クラスメイトの女の子にいろいろ教えてもらってたし、余計なことは喋らないように言ってあったし。あと、今日はディア接客だよ」
「・・・・・・そう」
別にいいでしょ、ディアは。黒蜜を悪く言うなんて、知らないよ。
「何やってんだ?早くいくぞ。休憩なくなっちまうぞ」
「待って黒蜜。じゃあ、きなこちゃん料理頑張ってね」
「・・・・いってらっしゃい」
黒蜜を追って三年生の階へと向かう。お化け屋敷は怖いけど、文化祭の空気の中にいると、他のドキドキも混ざってる気がするな。




