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ディアの「黒蜜は信用ならない」発言から何日かたって、朝焼高校は文化祭前日を迎えた。
一旦は私も落ち着いて「何でそんなこと言うの?」と問いただしてみたが、ディアは「あいつは信用ならない」の一点張りで、私たちの仲は拗れるばかりだった。
更にディアはクラスの女の子に人気があるらしく、よく話しかけられているから話しかける機会が減っていった。
私も自分の持ち場があるため、結局よく話ができないまま前日を迎えてしまった。
「よう、あんこ。休憩いくか?きなこもずっと仕事にかかりっきりだろ」
「うん。じゃあちょっと休もうかな」
「疲れた・・・・。黒蜜、何か飲み物おごってよ」
「いやだよ、飲み物くらい自分で買えよ」
「ケチ」
「ほら、休憩いくぞ」
きなこちゃんと二人で教室の装飾をしてると、黒蜜に誘わる。三人で教室を出るとき、きなこちゃんが頭を押さえてうなっていた。きなこちゃんも集中し過ぎて、だいぶお疲れのようだ。
取り敢えず購買近くの自販機でそれぞれ飲み物を買って、風通しのいい屋上へ行った。
「もう文化祭も明日かー」
「そういえば、きなこちゃんたち剣道部は何かやるの?」
「何にもやんないよ。文化祭終わった後の片づけをやるくらい。黒蜜もそうでしょ?」
「そうだな、柔道部も特に当日はやること無いな。その後が面倒なのは剣道部と同じだ」
「そっか、大変だね」
私は部活に入ってないけど、二人は部活に所属してるからやることも多くて忙しそうだ。
黒蜜も運動部、それも柔道部に所属していて練習がきつそう。いつも道場から剣道部と柔道部の声が響いてくるのが聞こえてくるんだ。
ゴクゴクと軽快に買った炭酸飲料を飲みほした黒蜜は、一息ついて私たちの方を向き直った。
「なあ、お前たちに聞きたいことがあるんだけど」
黒蜜がいつもより真剣そうに私たちに話しかけるものだから、何だかこちらまで緊張してしまう。
「なに?」
「あの転校生の・・・・えっと」
「ディア?」
「そう、そのディアってやつは・・・・」
そこまで言って黒蜜は少し間を置いた。
どうしたんだろう。ディアについて聞きたいことなんて・・・・・・。
そこまで来てディアの言った「あいつは信用ならない」の言葉が脳内でよみがえった。ひときわ強い風が屋上に吹き荒れて、髪が乱れる。黒蜜の顔が隠れて表情を窺えない。
早くなる心臓の音だけが、身体に響いた。
「なんであんな女子にモテるんだ?」
「へっ?」
思いもよらない発言に、思わず変な声が出てしまう。
な、なんだぁ・・・・。てっきり宇宙人であることか何かがバレたのかと思った。一瞬凄くドキドキしたんだから。
「ディアがどうしてモテるか?髪の色とかが綺麗だからじゃないの。ってか何でそんなこと聞くのよ?」
「そりゃ、転校してすぐにあんなにモテるのは何か秘密があるんじゃないかって思うだろ」
「はぁ?あんたそんなにモテたかったの?あーもう、どうでもいいや・・・・」
きなこちゃんは心底呆れた顔をして、屋上の扉を開ける。私も追いかけて、出口へと向かう。黒蜜は空を物寂しそうに眺めていた。
「なにやってるの?そろそろ休憩終わりにして戻ろうよ」
そう呼びかけると黒蜜は少し口を綻ばせて「今行く」と言い、こちらへ向かってきた。
風に乗って、生徒たちの賑やかな声が届いてくる。
文化祭は、もう明日だ。




