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私が前世で宇宙人だというショックもさることながら、フォローを諦めたきなこちゃんが本題を切り出した。
「でもどうすんの?このままにしといたら、今度こそディアは栄養失調で死ぬよ」
「そう・・・・だね」
本当に容赦ないな、きなこちゃんは。もうちょっとオブラートに包んだ言い方ってものをしたほうがいいと思うよ。
でも、これはディアを心配して言ってるんだよね。私、知ってるよ?
きなこちゃんが凄く焦ってるときや、本気で誰かを心配してるときには必ず自分の腕を手で強く握るの。本人も無意識にやってるみたいで、気づいていないんだろうけど。
さっきからきなこちゃん、ずっと右手が自分の左腕を掴んでる。私が気づいている限り多分、私が倒れていたディアに呼びかけている時から。
「うん。ありがと」
「はぁ?なんで今のタイミングでお礼を言うの?」
「いいの。なんでもないよ」
「・・・・よくわかんないわ。まあいいけど」
そっぽ向いて、照れてるのかな?普段は不器用でトゲトゲした言い方をするけど、きなこちゃんが人のこと思ってくれてるって伝わってくる。そういうところが、凄く好き。
なんて二人だけでやり取りをしてるのを見ていたディアが、不満げに私たちの間に割って入ってきた。
「きなこはあんこにくっつきすぎだ!もっと離れろ!!」
「ちょ、ディア!?」
「昨日も今日も、あんこに会える機会がほとんどなかったぞ!これじゃ、恋に落とすなんて到底無理な話だ!」
「ディアはいつも鬱陶しいから、そんなに頻繁に会う必要は無いわよ。それに今はあんたの話をしてんのよ」
「お前に心配しいてもらえなくとも、僕は平気だ!」
「さっきまで倒れていたくせに、よくそんなこと言えるわね」
全くだよ・・・・。
言葉にはしないけれど、心の中できなこちゃんの意見に同意する。
実際問題ディアも同じ人間ってことになるし、人間食べなきゃ生きていけない。でも、彼に今お金はないし、言ってしまえば一般常識もない。よってお金を稼ぐ手立てもない。更に言うとこのまま彼をほったらかしにするわけにもいかなくて、どこかで見ておかなくちゃいけない気もする。
・・・・・・・・・・ないばっかりだな。なんとなく、きなこちゃんがイライラしたくなる気持ちも分かったよ。
「そういえば、僕が宇宙船の修理をしている間あんこたちは何をやっていたんだ?」
ふと思いついたように、ディアが質問をした。
「私たちは、普段学校に通ってるんだよ」
「ほう、地球にも学校はあるんだな」
「え、冥王星にもあったの!?」
「ああ。そうか。あんこたちは、普段学校に通っているのか・・・・」
そこまで喋って、ディアは何かを考えるように押し黙ってしまった。
なんだか、いやな予感。
「よし、僕もその学校に通うぞ!!」
「はぁあ!?!?」
私ときなこちゃんが綺麗に叫びをハモらせる。でも、無理もない。あんなディアの爆弾発言を聞いたら、誰だって叫びたくなる。
「ななな、何言ってんのあんた!?」
「そうだよ、ディア?何でそんなこと・・・・!?」
思わず二人して、ディアに質問攻めを浴びせかける。
しかしディアの決意は変わらないようで、「なぜそんなに驚くんだ?」というような態度をとるばかりだ。
「このままじゃ、いつまでたってもあんことの距離は変わらないだろう?だったら、僕も学校に行ったほうが何かと都合がいい」
「だからって」
「そうすれば地球のことも学べて、一石二鳥じゃないか」
そのディアの悠然とした立ち振る舞いに呆気にとられ、何も言えなくなってしまう。
「あんこ」
「はい!?」
更にディアに呼ばれて、ついつい驚いてしまう。
こ、今度は何!?
「あんこ、一つお願いしてもいいだろうか?」
「・・・・何?」
「これからは僕に食事を分けてはくれないだろうか?」
「・・・・・・・・・・・うん」
「ありがとう!!」
勢いだけで押し切られてしまった。
とにかく、色々と驚くことや焦ることがありすぎて頭が上手く回らなくなっている気がする。
きなこちゃんも、後ろで疲れ切ったように頭を抱えている。もうツッコむ気力も失せたのだろう・・・・。
そんなこんなで疲れ切って、私は家に帰るまでのことはよく覚えてなかった。




