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駆け寄って顔色を確認するが、あまり良くないように見える。心なしかやつれたようにも感じられるし、何よりぐったりしていて元気がないのが一目瞭然だ。
「ディア!何があったの!?」
抱えてディアの様子を窺ってみるが、返事がない。呼吸はしているみたいだけれど、一体どうしてこんなことに・・・・!?
「ど、どうしようきなこちゃん!ディアが、このままじゃ・・・・!!」
「落ち着いて、あんこ。幸い死んではいないみたいだし、熱やケガは?」
「ないみたい。でも、このままじゃっ」
突然のことに取り乱してしまう。頭の中の思考回路が、めちゃめちゃに掻き乱されていく。
きなこちゃんは「落ち着け」って言ったけど、そんなの無理だよ。どうしよう、どうしたら・・・・!?
「・・・・うぅ」
「ディア!?」
パニックになっている私の腕の中で、力なくうなだれていたディアの口から微かなうめき声が漏れた。
「ディア、どうしたの!?ねえ!」
「うぅ・・・・」
良かった、少なくとも意識はあるみたいだ。
すると、ディアが蚊の鳴くような小さな声で言った。
「おかしいな。まるで体に力が入らない。このまま、僕は死ぬのか・・・・?」
「バカ!何言ってるのよ!?」
弱気な発言のディアに、思わず怒鳴ってしまう。でも、何をすればいいのか分からないのも事実。
こんな時、私は何をしたらいいの・・・・!?
めちゃめちゃになった思考を無理やり動かして、今私が何をしたらいいかを必死で探す。
そんな私の思考を遮るように、「ググゥ~」という音が鳴った。
・・・・ん?「ググゥ~」?
「・・・・へ?」
今の音は間違いなくディアのお腹からなった音だ。よく人が空腹時に鳴る音。
「もしかしてお腹減って倒れてたの?」
「・・・・?」
腕の中のディアは、何を言っているのか分からないみたいで小さく首をかしげる。
「ディア、地球に来てから何か食べた?お腹すいてるんじゃないの?」
「何か食べる、とは?」
「あんこ。これ食べさせてやんな」
何か勘付いたかのように、きなこちゃんが自分のカバンの中をあさりだした。そして、中から何かを取り出して渡してくる。
これ、確か今日きなこちゃんがお昼に買ってきたジャム入りコッペパンだ。
それを受け取り、小さく千切ってディアの口に含ませる。彼はモグモグと口を動かし、ゴクリと飲み込んだ。すると幸せそうな顔をして、「もっとくれ」と言わんばかりの目でこちらを見つめてきた。
またパンを千切って、食べさせる。またもやパンを美味しそうに食べ、「もう一口」と目で訴える。
・・・・ただお腹が減って動けなくなってただけじゃん!
「もう!自分で食べてよね」
「これ全部もらってもいいのか!?」
ディアにパンを渡すと、私に確認し終わる前に彼はパクパクと食べ始める。
みるみる元気になっていくディアを呆然と眺めていると、さっきまであんなに騒いでいた私がばからしく思えてきた。
何をあんなに焦っていたんだろうか、私は。
「人騒がせな奴・・・・」
「まったくだね」
でっかいため息と共に、後ろでポツリと呟いたきなこちゃんに力なく頷く。
たった数分で、ドッと疲れたよ・・・・。




