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Nostalgia world online  作者: naginagi
第一章
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初ログイン

皆様は初ログイン後はどう動きます?

私は情報を少し集めて街の外に出ます。

 眩い太陽の光に咄嗟に目を閉じ、手で顔に影を作りゆっくりと空を仰ぐ。空は晴れ晴れとしており、少し涼しい風が身体を通り過ぎる。


「来たんだなぁ…」


 私は呟くようにこの世界、プロエレスフィに来たことを実感した。少し周りを見渡すと、石やレンガで作られた街並みが見られ、ところどころに露天が立ち並んでいた。周りの声を聴くと「ダンジョンの場所教えてください!」「PT募集中です!近距離の人も遠距離の人も大歓迎です!」といったのが聞こえた。やっぱり皆さっそくレベル上げかぁ。でも私は、まずはこの街について知りたいから情報を集めよう。

 ……美味しいご飯が知りたいからじゃないんだから…ね…?


 しばらく歩いて街の人に話を聞いていると、この街の名前は『エアスト』というらしい。地理的にはこの街は大陸の東南地方にあるらしく、南には港町があって魚がいっぱい獲れるらしい。でも今は港町への街道にモンスターの縄張りがあって危険で、通行止めになっているとのこと。

 なるべく早く解放できるようにしないと! 美味しいお魚料理のため…じゃなくて街の人たちのために! そして二時間ぐらい色々と歩いていたせいか、満腹度が少し減少しているようだ。


 満腹度はこのゲームのシステムの一つで、時間経過や活動状況に応じて減少していくもので、活動が活発であれば減少度が大きく、逆に活動が少ないと減少も少ない。回復方法としては、何かしらの食べ物を食べたり飲んだりしないと回復しないといった自然回復がないものである。満腹度が1/4まで減少するとステータスが低下し、満腹度が0になるとHPが徐々に減るといったことが起きる。


 まだ1割を超えるぐらいだが、結局自然回復しないのでご飯を売っているところを探す必要がある。そこで、街の人に美味しい食事や食べ物が売っているところを聞いてみた。何人かに聞いてみると、大通りのお店が安いとのことらしい。でも大通りってことはプレイヤーも多いってことなので、売り切れといったこともあり得る。それにまだ始まったばかりなので、料理スキルも育ってないためプレイヤーの作った食べ物は期待できない。

 そこで私は、大通り以外で美味しい食事や食べ物が売っているお店を探すことにした。そして何人目かのおばあちゃんから、美味しいパンを売っているお店を知っているとの情報を得た。場所は居住区の方で、大通りからは離れていたためプレイヤーの姿は見られなかった。


「ここかな…?」


 私はおばあちゃんに教えてもらった情報を頼りにお店を探した。そして居住区をしばらく歩いていると、教えてもらった情報の特徴があるお店を見つけた。流石に居住区でプレイヤーは見かけなかったため、混んでる様子はなかった。


「失礼しまーす…」


 OPENの看板も掛けてあったし大丈夫だよね…? 私はお店の中に入り、中を見渡した。店内はそのままお店の中で食べられるように席がいくつか置いてあった。


「おやまぁ。可愛らしいお嬢さん、いらっしゃい」


 店内の奥から優しそうなおばちゃんが出てきた。なんか大学の食堂のおばちゃんに雰囲気が似てる気がする。


「あの…美味しいご飯がここで売ってるって聞いて…その…」

「あらあら嬉しいわねぇ。ちょうど出来立てのパンがあるから食べてみるかい?」

「出来立て…!」


 私はすぐさまカウンターへ近づき身を乗り出す勢いでコクコクと頷いた。


「フフッ、そんなに食べたいのかい。今切ってあげるから待ってるんだよ」


 おばちゃんは少し笑いながら出来立てのパンを切って何かを塗っている。香ばしいパンの匂いとこれは……クリームチーズと蜂蜜の匂い!おばちゃん…出来立てのパンにハニークリームチーズとは…! おそらく私に尻尾が付いていたらブンブンと振っていたであろう。おばちゃんはクリームチーズと蜂蜜を塗り終わり、私の目の前にその出来立てパン置いてくれた。


「い…いただきます!」


 ハムッ! ……美味しいー…幸せぇー…。この濃厚なクリームチーズと蜂蜜の組み合わせ…シンプルだが美味しいのだ! それに出来立てのパンのサクサクモチモチ感! 教えてくれた街の皆さん、グッジョブ!


「おやおや、そんな美味しそうに食べて貰えてこっちも嬉しいよ。気に入ったのなら買っていくかい?」

「!? 是非ともお願いします!」

「1つ20Gだけど何個買うかい?」


 1つ20G…ってことは1G10円感覚ってことでいいのかな?

 この味で200円……そして今の私の【収納】に入る個数が20種類…。


「おばちゃん…何個まで買って平気…?」

「そうさねぇー。流石に買い占められちゃうと他の客が困っちまうからせいぜい10個ぐらいまでにしてくれるとありがたいねぇ」

「じゃあ10個お願いします!」


 私たちプレイヤーは初期資金として10000Gが渡されている。これで防具や道具を買ってそこからお金稼ぎを始めるのが基本となっている。私はウィンドウから10個分の200Gを実体化させ、おばちゃんに渡した。おばちゃんから出来立てのハニークリームチーズパンを受け取り、【収納】の方へしまった。

【収納】の中では時間経過もしないので、いつでも出来立てのパンが食べられるのだ。ちなみにスキルが増えて【収納】を控えにしても中身がなくなったりはしない。取り出すときに【収納】がメインにあればよいのである。


「ふふっ」

「どうかしたの?」

「いやさね、異邦人ってのはこんな感じなのかと思ってね」

「んーどうなのかなぁ? 色んな人がいると思うから一概に言えないと思うよ」

「そうかいそうか。そういや名乗ってなかったね。私はマールっていうんだ」

「私はアリスって言います」

「アリスちゃんか。またこの『マールのパン工房』をご贔屓に頼むよ」

「うん! あっ…今度友達とか連れてきても平気…?」

「構わないよ。まぁあんまり多すぎても店に入りきらないから宴会とかはやめてもらいたいねぇ」

「そこまで友達多くないから大丈夫! じゃあマールさん、またね」



 ---------------------------------------------------------------



 さて、食料も確保したし次はどうしよう? とりあえず回復アイテムを買っておこうかな? となると…大通りに行かなきゃいけないのか…。あんまり人ごみは得意じゃないけど…タウロス君との約束のため頑張らないと! そして私は大通りを目指して歩き始めた。脱!コミュ障愛梨沙!


 と思っていた時期が私にもありました。こんな人多いところとか無理です。えっ? タウロス君やマールさんと話せたって? コミュ障舐めんな。タイマンなら多少はいけるけど人多くなるとびびっちゃうの。しかもこんな大勢の初対面の人たちに見られながら喋るなんて緊張して口がうまく動かないの。私はなるべく人が少なそうな回復アイテムの露店を探そうと動こうとした瞬間。


「あっ!?」

「ったく!ババア邪魔だ!」


 私の少し後ろでプレイヤーらしき人がおばあちゃんとぶつかって、おばあちゃんが地面に倒れてしまった。プレイヤーの方は特に悪びれることもなく、悪態をついてそのまま去って行った。


「おばあちゃん大丈夫?」


 私はすぐさまおばあちゃんに近づき、様子を伺った。


「あぁ…でもちょっと腰を痛めちまったようだ…いたたっ!」

「えっと…」


 周りを見渡してみるが、誰も我関与せずといった様子で誰も助けようともしてくれなかった。この状態のおばあちゃんを放置するわけにもいかないため、私はおばあちゃんをお家まで運ぶ事に決めた。


「…よし! 私が今からおばあちゃんを背負うからちょっとだけ我慢してね?」

「あんたなんで……わかった、ちょっとだけ我慢してやろうじゃないか」

「1 2 3で一気に背負うから私の首に腕をかけて」


 私はおばあちゃんの腕が私の首にかかるように側でしゃがんだ。

 おばあちゃんは可能な限り私の首に腕をかけた。

 首に腕を掛けたことを確認して、私はおばあちゃんの腰を軽く掴んだ。


「いくよ。 1 2 3!」

「うっ!?」


 少し痛んだようだが、ちゃんとおばあちゃんを背負うことができた。私の身長が150でおばあちゃんが140手前な感じだから、ちょっと私の姿が後ろからだと見えない感じになって不気味になってるけど、今はそんなことを気にしてる場合じゃない。早いところおばあちゃんを運ばないと。


「おばあちゃん、お家はどこにあるの?」

「家ならそこを真っ直ぐ行って…―――」


 家までは5分ほどで移動できる距離だったが、人一人背負っての移動だったため、倍の10分程時間がかかってしまった。おばあちゃんの家の中に入り、ベッドにゆっくりとおばあちゃんを降ろした。


「手間をかけさせちまって悪かったねぇ」

「別に気にしなくていいよ」

「そうかい」

「……」

「……」


 き…気まずい…。とりあえず運んだからもう大丈夫だよね…?


「じゃ…じゃあ私はこれで…」

「…ちょい待ちな」


 おばあちゃんは帰ろうとした私を引き留め、何かを言おうとしている。


「悪いがちょっと頼まれごとを聞いてくれやしないか?」

「頼まれごと?」

「あぁ。ちょいとな、薬草を取ってきてほしいんだ」

「薬草を…?」

「薬草は街を西から出てすぐの森にたくさん生えてるからすぐ見つかるだろう」


 これはクエストだろうか…? でも特にクエストのウィンドウが出る様子もないため、本当にただの頼まれごとなのだろうか?


「お前さん異邦人だろ? ならポーションが欲しいんじゃないか?」


 なんですと!? た…確かにほしいけど…。私は小さくコクンと頷いた。


「お前さんが薬草を取ってきてくれたらポーションを作ってやるよ。あたしもこの腰の痛みを無くすために薬草が必要なんじゃが、この痛みじゃロクに動けないからねぇ」

「えーっと…おばあちゃんって薬師なんですか?」

「元、になるがの。今は引退した身じゃ」


 確かに家の中を改めて見渡してみると、それらしい跡が見受けられる。


「じゃあ私が薬草を取ってくればポーション作ってくれるんだよね?」

「同じことを言わすんじゃないよ。まぁ作っても10個ぐらいだがねぇ。まぁ数はある程度あれば作れるから適当に取ってきな」


 つまり薬草を取ってくればタダでポーションが10個も手に入るということ…!


「では行ってきます!」

「そう急くな。そこの引き出しに入ってるポーションを一応持っていきな。もしものためだ」


 おばあちゃんが近くの引き出しを、無理がない程度に指さした。引き出しの中には初心者ポーションが3つ入っていた。


 初心者用ポーション【消耗品】

 回復量:15%


「ビンは消耗品じゃないから捨てんじゃないよ。中身が空いてるなら追加でそれに入れてやるから」

「おばあちゃんの腰の痛みってこのポーションじゃだめなの?」


 回復するんだからこれじゃダメなのかな?


「そこら辺の事もわからんのか。仕方ない子だねぇ…。いいかい?ポーションは傷を癒すもんだが、腰の痛みといったもんはポーションでは治せないんだよ。そういったのは薬草をすり潰した塗り薬じゃないと利き目が薄いんだよ。塗り薬の作り方は取ってきた時に教えてやるからさっさと行ってきな」

「うっうん!」


 私はおばあちゃんに急かされる様に街の外にある森へと向かった。

次は7/6の08:00に投稿予定です。



かなり熱くなってきましたので皆様、熱中症対策は万全に!


2016/7/6 誤字の修正を行いました。

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