悪霊たちの宴⑱
「その子を…見つけてくれて…ありがとう…」
「あ、うん」
クイーンハロウィンは飛鳥たちに軽くお辞儀をすると、ゆっくりと男の子へと近付いていく。
その移動はゆったりとしたものなのだが、どこか威圧感のようなものを感じる。
「ねぇ、遠くだったからわからなかったけど…あれやばくない?」
「えぇ…私もこれだけ近くでようやく気付いたけど、お父様に匹敵するぐらいの別格よあれ…」
「精霊様と天使様は何か感じたの?」
クイーンハロウィンとすれ違った後に冷や汗を流している二人に尋ねてみると、どうやらクイーンハロウィンは力を抑えている状態なのだが、それでもかなりヤバいとのことだ。
「一緒に…帰ろう…?」
クイーンハロウィンが男の子に手を差し伸べるが、彼はその手に怯え後ろへと後ずさる。
だがクイーンハロウィンも必要以上に彼に近付こうとはせず、ずっと手を差し伸ばしたままじっとしていた。
また、彼の周りに漂っている悪霊たちも直接クイーンハロウィンに逆らえないのか、邪魔をする事も出来ずただゆらゆらとその場に漂うことしかしておらず、場が停滞し続けている。
「ところで何でその男の子は記憶がないの?」
「「この空気でそれ聞くっ!?」」
「??」
精霊様と天使様が声を大きくして驚いてるけど、飛鳥はまだ男の子の記憶が無くなった理由聞いてないから気になっちゃってるんだもん。
「あ、うん…。えっと…私たちスピリチュアルチャイルドは…ただの亡霊じゃなくて…霊界で生まれた存在なの…。それで…突然生まれるから…記憶とかもなくて…だから…その…自分が何者なのかわからなくて…暴走する子供もいる…の…」
「普通そういう場合って保護とかしたりするって飛鳥思うよー?」
「うん…。でも彼の場合…この周りにいる霊たちが…彼を隠していたせいで気付くのが遅れて…。この国にいるって事は最近になってわかったから…探しに来たんだけど…その…創造神様との契約で…この時期しか来れなくて…」
つまり、悪霊がクイーンハロウィンを困らせるようなことをしたからこうなったってことかな?
「じゃあ何でこの国の人に手伝ってもらわなかったの?」
「その…私…抑えているんだけど…死の力が強くて…気を抜いちゃうと…普通の人だと…死んじゃうから…。異邦人なら…平気だと思うけど…あんまり人と喋ったことないから…どう接すればいいかわかんなくて…」
「いやまぁ天使の私には慣れてきたから見えるようにはなったけど、そんな強烈な死のオーラを纏ってたら普通は無意識で近付きたくないわよね…」
「これでも…結構頑張って抑えてるのに…」
クイーンハロウィンは天使様の言葉に少ししょんぼりしてしまった。
でも異邦人なら平気って言うし、ルカお姉ちゃんもこうしてあげると喜ぶからいいよね。
「えっ…?」
「よしよしー」
飛鳥がしょんぼりしているクイーンハロウィンの頭を撫でてあげると、何故かクイーンハロウィンは驚いた表情をして飛鳥を見つめる。
「なっ…何を…」
「えへへー。ルカお姉ちゃんもね、落ち込んでるときはこうして頭を撫でると元気出すからー」
「ルカお姉ちゃんってのは…よくわからないけど…ありがとう…」
「どういたしましてー」
少し寂し気な表情だったクイーンハロウィンも、元気が少し出たのかちょっと笑ってくれるようになった。
「元気…出たから…頑張る…」
「ふぁいとー」
「うん…」
そう言ってクイーンハロウィンはゆっくりと男の子へと近付いていった。
それを防ぐように何体かの悪霊が立ちふさがるが、クイーンハロウィンはそれを左手で掴む。
「邪魔…しないで…!」
掴まれた悪霊たちはクイーンハロウィンが少し力を入れると弱々しい声を漏らしながら霧散していった。
それを見ていた精霊様が苦笑いをする。
「うっわ…今消滅させたでしょ…あれ…」
「いえ、ギリギリのところで残ってるわ。まぁあれじゃあ相当経たないと回復しないでしょうけどね」
その後、クイーンハロウィンと男の子が色々な事を話し、ようやく男の子が納得したのかクイーンハロウィンの服の裾を掴んで一緒にこちらへ近付いてくる。
「色々と…ありがとう…。そういえば…名前…聞いて…ない…」
「飛鳥の? 飛鳥は飛鳥だよー」
「うん…飛鳥…覚えた…。後で…お礼…する…」
「飛鳥ー」
後ろから飛鳥を呼ぶ声がしたから振り向いてみると、ルカお姉ちゃんたちがこちらへ向かって走ってきていた。
◇
「飛鳥っ!」
「わぷっ」
飛鳥ちゃんを見つけたルカが凄い勢いで飛鳥ちゃんを抱き締める。
てか飛鳥ちゃんたちと一緒にいるのってクイーンハロウィンだよね?
人嫌いじゃなかったのかな?
「お姉ちゃんたち、よくここがわかったわね」
「まぁフェイトの虫が壁っぽくなってたからね…。でもこっちも騒ぎを収める後に来たから少し時間掛かっちゃった」
「言われてみればあんだけ黒い塊が壁のように建ってたら誰でも不審に思うわよね…。クイーンハロウィンもそれで気付いたんでしょうし」
「それより今どんな状況なの?」
「えーっと…」
フェイトが簡単にまとめて説明してくれた。
クイーンハロウィンが手伝いを求めなかったのは、持っている死の力が強すぎるせいでそれを気にしていたからだという。
まぁ確かに気を抜いたら周りの人が死んじゃうってなるとどうしてもね…。
「でも飛鳥ちゃんも無事だし、探し者の男の子も見つかったしこれで解決かな?」
そう思うのと同時に皆に通知の音が鳴り響いた。
私はその通知の中身を確認すると、クエスト達成の文字が映っていた。
じゃあこれで全員にハロウィンコインが入るわけだね。
「あ…飛鳥…」
「んー?」
聞きなれない声の方を向くと、クイーンハロウィンが飛鳥ちゃんの事を呼んでいた。
「お礼…だけど…よく考えたら…今…渡せる物がなくて…」
「別に飛鳥気にしないよー」
「だから…私のお城で…お礼の品…選びたいから…時間空いている時に…来て…? これ…その招待状…。使えば転移…できる…」
「わかったー」
「それと一緒に…お茶会も…しよ…?」
「うん! お茶会、楽しみー」
「よかった…」
…何あれ?
何でいつの間にか飛鳥ちゃんとクイーンハロウィンが友達っぽくなってるの?
てかクイーンハロウィン照れてない?
でも裾掴んでる男の子は呆れてるし…。
私はフェイトとリエルに説明を求めることにした。
「あー…まぁ…第二のお姉ちゃんってことよ…」
「どういう意味!?」
「天然はこれだから怖いのよねぇ。無自覚に誑すから」
「リエルは何で私を見て言ってるの!?」
そんなこんなで私たちのハロウィンイベントは謎の展開を見せて終わりを告げたのであった。
私は結果としてはハロウィンコインを特別クエストの分を合わせて96個手に入れることができた。
いやまぁ半分以上はドッペルさんのところで稼いだんだけど…。
今度あのドッペルさんに会ったら謝ろう…。
そして報酬だが、やはり良い物は交換レートが高く、王都の土地権利書にいたってはレートが100枚となっていた。
私のドッペルさんいじめを含めて96枚なのだから、よほどハードルは高いのだろう。
まぁ王都だしそこは仕方ないよね…。
とはいえ私は何と交換しよう…。
ランダムペットの卵交換券だったりランダム武器防具交換券といったギャンブル物の他に、以前のイベント報酬にあった高性能武器防具や少し劣るが性能の良い高耐久の物もある。
他にはハウジング関連の物もあるが、個人エリアは既に持っているし、部屋をこれ以上拡張してどうするのかという部分もある。
いやまぁリアのために薬剤室を更に追加してもいいのだけど…。
んー…どうするべきか…。
何か良いのはないかと一覧を探していると、個人エリアの環境設備追加アイテムとして温泉という二文字が見えた。
「温泉かぁ…」
今持っている家にもお風呂はあるけど、温泉は流石にないため少し惹かれる。
ただ環境設備追加ということなので、整備などは自分たちでやるという事なのだろう。
しかしまだ個人エリアの土地は余っているので温泉設備ぐらいは作っても問題はないのではないだろうか。
そう考えれば考える程温泉を作りたくなってきてしまう。
温泉卵にお饅頭…じゅるり…。
まぁともかく、今回はこの環境設備追加アイテムにするとしよう。
これでハロウィンコインを50個使ったから、残りは1枚10万Gに変換して開発資金に回そうかな?
あと4枚あれば50枚で交換の作業用ゴーレムっていうのもあったから、それを使って作業してもよかったけど…。
そこは皆で頑張って作るとしよう。
さて戻ったら作業とか頑張らないとなー。
誑し2号か…(遠い目




