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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
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空を飛びたい鳥③

 感知の反応からこちらに向かってきてる狼はちょうど二体だし、一人一体相手にしてもらおう。


 「ショーゴはヴァイスのアドバイスしてあげて。私は飛鳥ちゃんの方をアドバイスするから」

 「わかった」

 「じゃあ私はこれ以上モンスターが近付いてこないようにすればいいわね~」


 そう言ってリンは空を飛んで辺りを警戒し始めた。

 リンが飛んでく様子を羨ましそうに飛鳥ちゃんが見つめるが、今は向かってくる狼に集中してもらわないと。


 「飛鳥ちゃん」

 「なんですか?」

 「私は最初アドバイスしないから自由に戦ってみて」

 「わかった」


 飛鳥ちゃんは私の言葉に頷き、向かってくる狼を見据える。

 狼も都合よく二手に分かれてくれたので好都合だ。


 「…えーい!」


 飛鳥ちゃんが向かってきた狼に向かって構えていた大斧を振り下ろす。

 だが振り下ろした斧は飛鳥ちゃんの思った通りの速度はなく、狼に避けられて地面に突き刺さる形になった。


 「がうっ!」

 「あうーっ!?」


 飛鳥ちゃんの攻撃を避けた狼がその勢いのまま飛鳥ちゃんへと体当たりする。

 その勢いで少し後ろへと飛ばされてしまう。


 「うぅー…」


 背中を起こし、首をプルプルと横に振って起き上がる飛鳥ちゃん。

 狼は飛鳥ちゃんに体当たりした後、再び距離を取り、じっと飛鳥ちゃんの動きを見つめる。


 「リエル、お願いね」

 「はいはい」


 私の指示でリエルは飛鳥ちゃんを回復させる。


 「天使様ーありがとー」

 「いいから前見なさいって、全く…」


 手を振って感謝する飛鳥ちゃんにリエルは溜め息混じりで前を向くように指示をする。

 それから飛鳥ちゃんは何度か大斧を振って攻撃するが、全部狼に避けられ、体当たりを喰らい続ける。

 私は狼はてっきり噛み付いてくるものかと思ったのだが、大斧を持っている飛鳥ちゃんは力が強いと思い、下手に近付きすぎると危険と警戒している結果があの体当たりなのだろう。


 「なんで当たらないのー?」


 飛鳥ちゃんが自分の攻撃が何故当たらないか疑問に思い始めたのか小さく呟く。

 さて、そろそろアドバイスするかな?


 「そのまま狼を見たまま聞いててね飛鳥ちゃん」

 「お姉ちゃん?」

 「何で攻撃が当たらないか不思議に思ったよね?」

 「うん、全部躱されちゃう」

 「そうだね。じゃあそれは何でだと思う?」

 「えっと、あの狼が素早いから?」

 「うん、それもあるね。じゃあ飛鳥ちゃんの攻撃はどうかな?」

 「あっ…」


 どうやら飛鳥ちゃんも気付いたようだ。

 まだ初期ステータスのスキルではそんなに早く武器は振り回せない。

 それに飛鳥ちゃんの使っている武器は大斧で、威力は高いだろうが振る速度はどうしても遅くなってしまう。

 そんな大斧を剣とかのように同じ速度で振るうにはまだSTRが足りないだろう。

 となれば答えは一つ。


 「じゃあどうすればいいかな?」

 「飛鳥が振る速度はまだ変えられない。だったら変えるべき部分は他にあるから…」


 飛鳥ちゃんが狼を警戒したままぶつぶつと呟く。

 しばらくして考えがまとまったのか、飛鳥ちゃんは再び大斧を構える。


 「えーい!」


 そして勢いよく踏み込み、狼目掛けて大斧を振り被る。

 それを見て狼は左へ避けようとステップを踏む。

 だがそれを飛鳥ちゃんは待っていた。


 「狙い通り!」

 「きゃんっ!?」


 途中まで振り被った大斧を狼が避けた方へと方向転換させ、思いっきり振り下ろす。

 流石に体勢は少し悪くなったため全力とはいかないが、狼は大ダメージを受けたはずだ。


 「これで決める!」


 飛鳥ちゃんが攻撃を喰らって動きの鈍くなった狼へトドメの一撃を振り下ろす。

 狼はその一撃を喰らい、粒子となって消えた。


 「倒せたよ、お姉ちゃん」

 「うん、頑張ったね」


 とことこと戻ってきた飛鳥ちゃんの頭を撫でると、頭にぴょこんと跳ねているアホ毛も喜ぶように動く。

 うん、可愛い。


 「おっそっちも終わったか」

 「うお、きっつぅ…」

 「初めてであれだけ動けりゃ十分だって」

 「ゲームってわかっててもやっぱこええなぁ」

 「そこも慣れだ慣れ」


 ヴァイスの方も無事狼を倒せたようで、ショーゴと一緒にこちらへ戻ってきた。


 「やっぱり斬撃系だと返り血浴びるんだな」

 「ベテランは浴びないように斬ったりするけどな」


 確かにヴァイスも飛鳥ちゃんも返り血を少し浴びて汚れちゃってるな。

 少し洗ってあげないとね。


 「レヴィ、お願いね」

 「キュゥ!」


 突然現れたレヴィに二人は驚くが、この子も私のペットと説明すると納得してくれた。

 レヴィの出した水で軽く二人の返り血を洗い流し、軽く反省会もどきをする事にした。


 「さて、ヴァイスはショーゴが見てたから、そっちはそっちで注意することがあるだろうし任せるよー」

 「へいへい」

 「さて、飛鳥ちゃん」

 「ん?」

 「どうして途中で軌道を変更させるような攻撃をしたのか教えて?」

 「えっと、飛鳥の攻撃まだ遅いから普通に振ったんじゃ同じように躱されちゃう。だから狼が避けた後なら動きは止まるからそれに合わせて振っただけ」

 「そうだね。まだSTRが成長してない飛鳥ちゃんじゃ大斧を剣みたいに振れないよね。だったらどうするか。その答えが飛鳥ちゃんがやった事だよ」


 飛鳥ちゃんのやった事、それは相手の動きを観察して対応する。

 後の先、って言っていいのかな?

 相手が自分より早いならどうすればいいか。

 その対処法の一つとして先読みというのがある。


 私もやってることだが、【切断】を上手く使うためにある程度相手の動きを先読みして刀を振っている。

 判定が補正を含めてもまだまだシビアなため、そういった技術がないと上手く扱えないからだ。

 そして今回飛鳥ちゃんがしたことはフェイントをして相手の動きを誘い、それに合わせて攻撃をする。

 口では言うのは簡単だが、これが案外難しい。

 相手の動作を見逃すことなくそれに対応するという事は、動体視力は勿論の事一瞬の判断力も必要となってくる。

 それを初心者である飛鳥ちゃんがやったのだ。


 「正直大斧を振る速度を考えて攻撃するだけと思ったんだけどね…」

 「?」

 「なんでもないよ。ともかくスキルを育てるためにもまずは大斧を早く振れるようにSTRを上げたいところだね」

 「どうすれば上がるの?」

 「筋トレとか重い物を持ったりとかかな? 簡単に言えば身体を鍛えるトレーニングをするとSTRが上がりやすいね」


 私の場合森を走り回ってるせいで一種の筋肉トレーニングと判断されてるのかSTRも一緒に上がってるんだけどね。

 確かに野山を走るのもトレーニングの一種とかネットで書いてあった気もするけど…。


 「じゃあこの斧振ってれば上がるかな?」

 「たぶん上がると思うよ。それに最初の内はスキルレベルも上がりやすいからね」


 恐らくしばらくすれば剣を振るうみたいに大斧も触れるようになるだろう。


 「じゃあしばらくモンスターと戦ったりしてスキルレベルを上げよっか。そして【風魔法】とか【落下耐性】といった必要スキルを取ろう」

 「おー!」


 ふふっ。

 飛鳥ちゃん、面白いプレイヤーになりそうな予感がするね。

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