一喜一憂
さて湖の中の繭の中にいる子はどんな子なのでしょうか。
リーネさんから防具を受け取った後、ルカと別れ私は一人森の中へと行きました。とりあえず熊と狼のお肉でいいよね? あんな凄い水弾撃てるんだからきっと肉食だよね? これで実はベジタリアンだったらどうしよう…。まぁその時はその時で…。
「たいりょーたいりょー」
狩り終わって血抜きをした熊の死体を【収納】の中に入れます。それにしても【猫の目】のおかげで夜の間も活動出来てよかったです。おかげでお肉が一杯集まりました。ではでは、湖に向かってれっつごー。
と言ってもやっぱり到着まで八時間はかかりました…。下手に休憩しないで疲労を溜める方が危ないのでそこは妥協できません。なのでこのぐらい時間がかかるのはしょうがないということにしましょう。
さてさて、装備が変わったけどイカグモさんは覚えててくれてるかな?
湖に近づいてみると、一匹のイカグモさんがこちらに近づいてきます。
「こんにちはー」
「――」
とりあえずしゃがんで挨拶をしてみるとイカグモさんは恐る恐る足の一本を伸ばしてきたので、軽く握ってみました。握ると少しビクンとしましたが、しばらくすると他の足を伸ばして上下に振ります。覚えててくれたのかな?
「今日はちょっと用があって来たんだけど大丈夫かな?」
「――」
何? と言う感じでイカグモさんは身体を傾けます。
「イカグモさんたちが封印っぽくしてる繭の中にいる子に餌あげたいんだけどいいかな?」
「――!?」
うん、すっごく驚いてる。まぁ当たり前だよね。どこかに行ってほしい対象に餌をあげるって言ってるんだもんね。
「やっぱりダメかな…?」
「――」
イカグモさんは少し考えるように足を組みます。器用だなぁ…。そんな事を思ってると、他のイカグモさんたちが集まってきて、私と話してたイカグモさんが他のイカグモさんに説明をしてるのかな? そんな感じで話してます。
他のイカグモさんも驚いているようで、こちらをチラチラっと見ます。んー…やっぱり無理かなぁ…。そう思っていると、最初に話していたイカグモさんが私の足をクイクイッと引っ張ります。引っ張るってことは来いってことだよね? 私は一旦着物の装備を外し、初期装備のまま湖の中に入った。
「(んーやっぱり冷たいけど良い感じの冷たさだなー)」
私はイカグモさんについて行き、繭の近くまで案内してもらった。そしてイカグモさんは心配そうに私に足を絡ませ、ゆっくりと穴が開いている上部へと引っ張ってくれた。
【水泳】スキルもレベルが上がってるのか、前回よりは息継ぎの回数が少なくて済んでる。でも何があるかわからないので、一回息継ぎをしたいアピールをして息継ぎをします。
「ふぅ…。…よしっ」
息継ぎをしてゆっくりと上部の穴に近づきます。今度は水弾は飛んでこなさそうで一安心です。っと、ゆっくりしてる場合じゃない。早いところ餌を入れないと…。
私は【収納】から熊の死体を穴の周りの糸に引っかからないように慎重に落とします。徐々に熊の死体は沈んでいき、うまく穴の中へと入っていきました。
「(さてどうかな…?)」
しばらく待っていると、ガキンっという音が響きました。ということは食べてくれたのかな? 一応念のために待ちます。こんなの食えるかーって水弾を撃たれるかもしれないので…。
しばらく待っても特に穴から水弾が出てくる様子もないので、追加で熊の死体を落とします。とりあえず歯が当たる音が響いたら次を入れる、そんで息継ぎという感じで続けます。
なんか餌付けしてるみたいで楽しくなってつい【収納】の中に入ってる熊の死体だけではなく、狼の死体も落としてしまいます。
「(あれ? もう無くなっちゃった?)」
いつの間にか【収納】の中の熊と狼の死体を全てあの子にあげてしまったようです。また取って来ないと…。
「(またね)」
水中では声は出せないので心の中で思って手を振るが、まぁ見えてないでしょう。でもいいのです。見えてなくてもやることに意義があるのです。
イカグモさんと一緒に水面まで上がると、私の身体に絡ませていた足を外します。私はそれを確認してから息継ぎをして湖から出ます。
その瞬間、後方からドゴンと大きな音がしたので振り返ると、水弾が水中から打ち上げられていました。
「えっ!? 何っ!?」
私はいきなりのことで混乱しましたが、落ち着いて考えてみるとこんな事が出来るのは繭の中にいる子だけです。
そしてこうなった原因はもしかしなくても私だと気付きます。もし、今まで餌を与えなかったせいで力が弱かったとしたら…。
私が餌を与える⇒あの子がそれを食べる⇒元気になる⇒水弾どーん。ということになったのではないだろうか…。
「あわわわわっ!?」
イカグモさんごめんなさあああああい! 私が余計な事したから皆に被害がああああ!?
慌てる私を横目に、イカグモさんは最初は驚いていたが途中から大人しくなっていた。そんなことに気付かず私は一人あわあわし続けた。
すると海中から大きな影が水面に近づいてくるのが見えた。
「今度は何ぃぃぃぃ!?」
もう慌てている私にはこれ以上の情報は無理です! 許容しきれません!
そんな私の事情など関係なく、大きな影はどんどん水面に近づいていく。そしてその大きな影はついに水の中から姿を現した。
「………」
そう。私の目の前に現れたのは…。
「GYUUUUUUUU!」
青い鱗に覆われたとても大きなドラゴンでした。
「うーん…」
そして、私は考えるのをやめてそのままバタンと倒れ込んだ。もう無理寝落ちしよ…。きっと起きたら死に戻りしてるんだろうな…。そんな事を思って私は意識を失った。
喜び⇒不安⇒驚愕⇒失神←今ここ
コミケのアドバイスありがとうございます!
それと昨日(29日)ゲーム買ったので一日休暇を……「関係ない、やれ」…あっはい…更新頑張ります…。




