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Nostalgia world online  作者: naginagi
第六章
289/370

お支払いは〇〇で

 防衛イベントが終わり、穏やかな日常を過ごしていたある日、一人の客によってその穏やかな日常は終わりを告げた。



「はーい、いらっしゃいませー」


 私はいつも通りお店で作業をしていると、たまに見るお客さんがアイテムを買いに来た。

 そのお客さんはファナティクスさんよりは背は低いだろうが、十分背が高い分類に入る長身で、何故かフードを被って店に来ている。

 ただいつもと違うのは、そのお客さんを見た瞬間トアさんの表情が一気に嫌そうな顔に変わった事だ。


「っち、何しにきたんですか」

「そんなつれねえ顔すんなよ」

「えっと…トアさんお知り合い…?」


 そういえばこの人が来るときってトアさんがいない時だけだったような…。


「お嬢様、今すぐこの男を出禁にしましょう」

「何で!?」

「くくっ、そうだぞ横暴だぞー」

「黙りなさい」


 えっと…トアさん地味にキレてる…?


「そもそも何故貴方がこの店に来るのですか」

「そりゃいい女がいる店に来たくなるのは男の心情というやつだ」

「この女好きが…!」

「ハハッ、まぁそれは否定しねえな。そういうお前だって昔は…」

「殺すっ!」

「トアさん落ち着いて!?」


 私は慌ててナイフ抜いたトアさんを後ろから羽交い締めする形で何とか抑え込む。

 一体二人に何があったの!?



 一旦落ち着かせるためにお店の方をリアに任せ、私たち三人は席に着く事にした。


「申し訳ございませんお嬢様。この男が少々癇に障ったせいで頭にきてしまいました」

「全く昔はお兄ちゃんって言って慕ってた癖「何か?」…はいはい黙りますよ」


 フードを着たお客さんの横の壁にナイフを刺して牽制するトアさん。

 あのー…その壁修理するの私…というかルカなんだけど…。

 てかお兄ちゃんって事は現実での知り合いって事なんだよね?


「そもそも貴方がこの店に来ること自体ダメじゃないですか」

「別に俺は手を出してないし、それぐらいいいじゃねえか。ちゃんと購入ルールも守ってるぜ?」

「えーっと…トアさん? この人は一体…」

「…はぁ…。仕方ないから説明します。この男は元PKギルド七つの大罪の強欲担当の幹部のアワリティアです」

「七つの大罪!?」


 私は驚いて勢いよく席を立つ。

 だがアワリティアは気にした様子もなく、先程出した紅茶を飲んでいる。


「一つだけフォローするならば、この男に関しては外道以外の女性や子供には決して手を出しません。そこだけは保証します」

「そう言われても…」


 私はチラっとアワリティアを見るが、やはり私の反応や視線を気にしていないようだ。


「ただこの男は大の女好きですのでお嬢様は近付かないようにしてください」

「へっ?」

「この男は女であれば誰彼構わず手を出す最低な男ですので」

「おいおい人聞き悪い事言うなよ。手を出すのは合意した相手だけだ。無理矢理ってのはあんまり俺の好みじゃねえ。まぁそういうのを俺の物にするってのも好きだがな。そういうお前だって俺に抱か「黙りなさい」…全く素直じゃねえなぁ」


 トアさんは再びアワリティアの横の壁にナイフを刺す。

 いやだからその修理は…もういいや…。


「それで、わざわざ私がいる時に来たという事は何か話があるのですよね?」

「まぁそうだな。今更だが嬢ちゃんには色々と迷惑掛けたからな。その詫びにきたわけだ」

「詫び…ですか?」

「あぁ。なんなら身体で払うぜ?」


 身体で払う?


「分かっていますよね…? お嬢様に手を出したらどうなるかを…」

「ハハッ、冗談だ。いい女だが人のもんに手を出す趣味は「じゃあお願いします」…は…?」

「お嬢様!?」

「えっ? 身体で払ってくれるんですよね?」

「お、おう…」

「じゃあこっちに来てください」

「…マジか?」

「はい、マジです」



 ---------------------------------------------------------------



 えーっと…何でこんな事になったんだ…?


「なぁフードの兄ちゃん、早くそっち耕してくれ」

「あっあぁすまねえ…」


 俺は今鍬を持って所謂耕起作業というのをしている。

 いやまぁ確かに身体で払うとは言ったが…。

 最初あっち方面かと思って内心喜んだが、いきなり個人エリアに連れてこられて水田の開拓に付き合わされることになるとは…。


「ぷっ…。あのアワリティアが農作業…ぷぷっ…」

「うっせぇぞ!」


 あの野郎…人が逆らえねえ状況で笑いやがって…!

 つか農作業エリア広すぎんだろ!

 しかも俺が大体十メートル四方の耕起作業が終わったと思ったら、あの子供はその倍以上やってるってどういう事だ!?

 化け物かあの子供!?


「ほらフードの兄ちゃん、そんな遅いと日が暮れちまうよ」

「わっわかった…」


 まさかこの俺が女に泣かされる羽目になるとは思わなかったな…。



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 ふぅ、アワリティアのおかげでサイが計画してた水田の作業も捗ってるっぽいね。

 まぁあとはサイに任せるとしよっか。

 って…。


「トアさんいつまで笑ってるの…」

「いっいえっ…ですがあのアワリティアが農作業なんて…ぷぷっ…だめっ…お腹痛いです…」

「爆笑しすぎじゃない…?」

「いえ、さすがのアワリティアもお嬢様には敵わないということですね…ぷぷっ…」


 …私何か変な事したっけ…?

 身体で払ってくれるっていうからサイの作業手伝わせたんだけどなぁ…。

 何か変だったかな?

まだ6月なのに暑い…。

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