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Nostalgia world online  作者: naginagi
第一章
21/370

港街ハーフェン

やっと別の街に着きました。

 景色を楽しんでいると磯の香りがしてきたのでそろそろ港街に着きそうです。さてさて、ぐっすり眠ってるルカを起こさないと。


「ルカ、起きて。そろそろ港街に着くよ」

「ん…」


 ルカはゆっくりと起き上がりぼーっとしながら私の方を向きます。


「まだ眠い?」

「だいじょぶ…」


 とは言ったものの、ルカは目を擦って眠そうにしています。やっぱり今日の狩りは中止にしてまた明日の夜とかにしたほうがいいかな?


「ルカ、眠いなら明日の夜に変えよっか?」

「やだ」


 ルカは首を振り私の提案を拒否します。んー眠いのに狩りするのは危ないと思うんだけどなぁ…。でもルカの意志も尊重しないといけないし…。んー…。


「わかった。じゃあこっちの夜になるまで狩りしよっか」

「うん」

「まぁその前に港街のポータルに寄って登録されてるか確認しよっか」

「確認は大事」


 ということで狩りの前に私たちはまずポータルを探すことにしました。ですが港街というだけあって船の数が多いです。そもそも泳いで取れるような場所はあるのかな? それがないとプレイヤーも船を手に入れないと魚を取れないんじゃ…。

 しばらく歩いていると、街の中央ぐらいで地面に魔方陣が書かれたオブジェが見つかった。ポータルの位置は大体街の真ん中ぐらいにあるのかな? ポータルに乗ってみると移動先が増えていたのでちゃんと登録されていたようだ。えーっとこの街の名前は…ハーフェンというらしい。


「アリス、ちゃんと増えてた」

「そっか。じゃあ素材探しにれっつごー」

「ごー」


 ルカもちゃんと登録されていたのでさっそく狩りに行くこととします。ハーフェンの東と南は海が広がってるため、北西側に広がってる森に行くこととします。蜘蛛って森に…いるよね…?



 ということで森に到着しました。てかエアストの西の森どんだけ広がってるの…。真面目に伐採作業とかしたほうがいいんじゃ…。


「アリス、どうかした?」

「あっごめんね。ちょっとこの森に思うことがあって…」

「?」

「ところでルカの武器は何なの?」

「弓。アリスは?」

「私は脇差だよ。じゃあ武器的に私が前衛、ルカが後衛で分かれよっか」

「うん。ところで、どうやって素材取る?」

「…」


 そういえば素材どうやって取ればいいのかな…? 蜘蛛の糸は適当に巣を張ってるのを取ればいいとして、蚕の絹はどうやって…。蚕の繭捕まえて煮て取るんだっけ…? でもそんな乱獲していいのだろうか…?うーん…。

 私は方法を考えようと周りを見渡してみると、エアストの森で見てた木と違う種類の木を見つけました。


「これって…」

「これは桑だった気がする」

「桑?」

「葉っぱが蚕の主食」


 へー、蚕の主食ってこの葉っぱなんだ。…ん? 主食? もしかして…。

 私は【採取】スキルをスロットに入れ桑の葉を何枚か取った。


「何してるの?」

「ちょっと実験かな」

「?」


 さてさて繭になってない蚕はどこにいるかなー…。でっておいで―。怖くないよー。

 私とルカはしばらく森の中を散策していると体長20cm程の大きな蚕を見つけた。


「…蚕ってあんなに大きかったっけ?」

「繭になる前で指ぐらいの大きさ」


 えーっと指ぐらいだからえーっと…十倍近くでかいの? え? これ大丈夫? 私たちが繭にされて食べられたりされない?

 ま、まぁとりあえずまずは実験だからやってみよう。


 私は蚕にゆっくり近づいて先程手に入れた桑の葉を取り出して目の前に出してみた。すると蚕はしばらく動きを止めたが、すぐさま桑の葉を食べ始めた。私は食べ始めたのを確認して、その桑の葉を地面に置いた。蚕はモシャモシャと桑の葉を食べ、もう一枚なくなりそうだったので追加で地面に置いた。しばらくすると置いた桑の葉を全て食べ終え、こちらを少し見てモソモソとし始めた。

 少しモソモソすると、口から糸を吐き出し始めた。その糸は私たちを攻撃するような素振りはなく、蚕の体長と同じぐらいの大きさの繭が徐々に作られていった。

 これから繭に包まれるのかな? と思っていたが、蚕はその繭に包まれる様子はなく、ただただ繭を作っていた。

 しばらくすると繭が完成したのか蚕は糸を吐くのを止め、私たちに背を向けモゾモゾとどこかへ這いずっていった。


「え、えーっと…」


 とりあえず作って貰った(?)繭を手に持った。予想はできたがとても軽かった。


「素材、ゲット?」

「まぁ…そうなるかな?」

「すごい」

「ん? 何が?」

「繭煮ないで手に入れる方法見つけた」

「あー…これはたまたまだよ。もしかしたらって思ってやっただけだから…」

「でもすごい」


 ルカは無表情のままだけど喜んでるのかな? 少しテンションが高い。まぁこれで蚕の繭の手に入れる方法はわかったからこれである程度取れそうだね。


「この大きさならある程度数がいれば一着分ぐらいは大丈夫そうかな?」

「繭から生糸にするの結構数が必要」

「じゃあ結構やらなきゃいけないかな?」

「普通なら、繭で五キロぐらいになれば足りるはず」

「五っ!?」


 ええぇ…。さっきのやつで大体…二十グラムあるかないかぐらいだけど…。二百五十個も集めないといけないの…?


「でも、ちょっと貸して」

「どうしたの?」


 ルカが繭を持ちたいようなので渡した。ルカは繭をじーっと見つめて優しく少し伸ばしたりしていた。


「この繭、鑑定してみるとわかる」

「え?」

「この繭だけで、生糸になる割合が九割ぐらいになる。生糸は九百グラムあれば一着分」

「ということは…?」

「これ一つで二十グラム。五十個集めれば一人分足りる」

「おぉ! じゃあ二人で百個集めれば二人分集まるね」

「ん。でもまずはアリスの分」

「なんで?」


 別に二人分集めればいいと思うんだけどな?


「アリス初期服からあんまり変わってない。装備強化するべき」

「一応防具作って貰ったんだけどなぁ…」

「それでもまだ低い。せめて全身装備に変えるべき」

「うぅ…」


 確かにこれからどんどん敵は強くなっていくだろうし…防具も強化しないといけないけど…。


「ルっルカだって装備強化しないと…」

「私は後衛。優先度違う」

「あう…」


 だめだ反論材料が…。他には…他には…えーっと…。あっ!


「年下の子に譲ってもらうのはお姉さんとしてダメだと思うから…」

「…アリスいくつ? あんまり聞いちゃいけないけど」

「えーっと…今年二十歳だけど…」

「…私今年二十一」


 ……え?


「アリス。いくつに見えたの」

「すいません高校生と思ってました…」

「これでもお酒飲める。必ず止められるけど」


 確かにルカは私より背も小さくて少し童顔だから店員も疑うのもわかるけど…。私より年上だったのか…。これ正悟と鈴になんて言おう…。年上の友達出来ちゃったーなんて言ったらなんか誤解されそうだし…。


「アリス失礼なこと考えてる」

「だっだって、ルカ背が小っちゃかったし小動物ぽかったから…」

「ガーン」


 いや別に口に出さなくても…。それにあんなに甘えてきたら誤解するよ…。

 と思ったらルカが突然弓を構えた。って、もしかして怒らせちゃった!?


「ルカそんなに怒らなくても!?」

「しゃがんで。『パワーシュート』」


 ルカに言われて咄嗟にしゃがんだ瞬間、ルカは矢を放った。おそらくスキルアーツを使ったのだろう。普通の矢より強い音が鳴った。

 そしてその矢は私の背後にいた蜘蛛に直撃していた。


「危なかった」

「あっありがと…」

「まだ倒しきってない」


 蜘蛛はルカのスキルアーツを食らったため吹っ飛びHPが半分程削れているが、まだまだ動けるようだ。私はルカを庇うように脇差を抜き構えた。


「ちょっと蜘蛛にしてはでかいよね…」

「ゲームならよくある」


 そう、目の前の蜘蛛は全長一メートルぐらいの大きな蜘蛛だった。虫が苦手な人なら気絶するだろう。

 こちらが警戒して構えていると、蜘蛛はお尻をヒクヒクさせてこちらに構えた。ってまさか!?


「ルカ! 避けて!」

「!?」


 咄嗟に横に避けると同時に蜘蛛がネット状の糸を飛ばしてきた。間一髪避ける事に成功したが、あれに捕まったら多分逃げられないだろう。初見殺しとかやめてよ…。

 と言っても避け続けてもあれに足を取られたら多分狙い撃ちされるよね…。ということは長期戦になる前に仕留めないと…。


「ルカ! 弓で牽制して! 私が前に出る! 無理はしないでね」

「了解」


 ルカは私と逆に動きつつ、矢を数本放ち蜘蛛の意識をルカへと向けさせている。その間に私は蜘蛛へ接近する。切断ポイントは…八本の足に…って足しかない!? 首はないの!? って蜘蛛の首ってどこなんだろう…。

 っとそんな事を考えてる場合じゃない。あっちもこちらが近づいてるのに気づいて左の前足でこちらを攻撃する。確か蜘蛛の足って毒が付いてるだの注入するだのだった気がするから触れないように避けないと。

 幸い動きはそこまで速くないので【AGI上昇】のスキルが付いている私は十分避けられる。私はすれ違いざまに攻撃してきた足の一本を【切断】スキルで切断した。

 左前足が切断されたことで蜘蛛が一瞬バランスが崩れたのを見逃さずに、そのまま左側の前から二番目も切断に成功する。HPとしては1割も減ってないが片側の内半分も失ったため動きは一気に鈍くなった。

【切断】スキルは首でなければダメージとしては少ないけれど、動きを封じる上では十分有効だ。


「…」


 ルカがなんか唖然としてるけどまぁ仕方ないよね…。さて、そのまま動きが鈍くなったことだし止め刺しちゃおうかな。

 この後の展開は一方的だった。片側の半分どころか、片側の足全部切断したため左側が完全に無防備になったのでHPが無くなるまで刺し続けた。きゅっと刺して捻る! きゅっと刺して捻る! といった具合に繰り返していたら蜘蛛のHPが尽きた。

【狩人】スキル持ちの私が止めだったので死体はそのまま残りました。


「アリス。これ何」

「えーっと…」

「なんで死体残るの」

「か…【狩人】スキルの効果で死体が残るようになって…」

「…それどこで取れるの?」

「今私のLA(ラストアタック)見たから次は私の目の前でルカが止め刺せば手に入るよ。でも一度取ると外せなくなるから注意ね」

「わかった」

「とりあえず死体は私が【収納】の中に入れておくからあとで解体しよっか」

「了解」


 そう言って私は蜘蛛の死体と切断した足を回収しました。ふぅ、ルカが物わかりのいい子で助かった…。

LA(ラストアタック):とどめの一撃の意味で使われたりする。ゲームによってはLAに特別アイテムが渡される場合もある。NWOではそういったシステムはない。

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