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Nostalgia world online  作者: naginagi
第四章
202/370

恵まれた環境

 先日リアから新たなポーションができたという報告を受け、その作り方のレポートを書くように指示して数日後。

 リアから完成したから確認してもらいたいと持ってきたため、レポートを受け取って一文一文確認しながら読む。

 レポートを一枚めくるとリアはビクッと反応をするが、特に悪い事をしているわけではないのだからそこまでビクビクする必要はないんだけどなぁ…。

 全部読み終わり、そのレポートをリアに返す。


「ど…どうでしたか…?」

「うん、わかりやすく書けてると思うよ」


 実際かなりわかりやすく書いてあり、要点要点もちゃんとまとめてあった。


「じゃあこのレポートは薬の作り方リストのところに一緒にしておいてね」

「はいっ!」


 リアは元気よく返事をしてレシピの保管場所に向かった。

 実はリアが新薬を作るということで、そういったレシピの保管場所があった方がいいと思ったため、作っておいたのだ。

 こうしておけばリアはいつでもレシピの確認もできるし、保管場所を決めておけばどこかに無くしたりもしないだろう。

 とはいえ…。


「これはリーネさんに報告しておいた方がいいかもなぁ…」


 正直今のところレッドポーションで事足りているが、そのレッドポーションも普通のポーションのようにスキル所持数やレベル等の制限で効果が下がる可能性が高い。

 そうなった時に代わりとなるポーションがあるのとないのでは大きく違ってくる。

 そして代用品となるであろう新しいポーションができているなら、それを報告しないのはちょっと気が引ける。

 別に独占販売とかを考えているわけではないので、希少価値とかを出すつもりはないのだ。

 リアもそう言う事を考えて作ったわけではないものね。



「ということです」

「それはまた急に…。それにしても新しいポーションねぇ…」

「せっかくなので景品としていくつか提供しようと思うのですが、いくつぐらい出せればいいですか?」

「んー…一先ず一ダースはどうにゃ?」


 えっと…一ダースって確か12個だったよね?

 まぁそれぐらいならすぐ作れるかな。


「あっ、それとできたらそのポーションはアリスちゃんじゃにゃくてリアちゃんにお願いしたいにゃ」

「? 何でですか?」

「幼女が作ったポーションって言えばきっと盛り上がるにゃ。むしろロリコンにとっては是が非でもほしい物ににゃるだろうし、リアちゃん目当てできっと需要も…ってアリスちゃん刀しまってしまって後半は冗談だからっ!?」

「リアを景品みたいな馬鹿な事は言わないでくださいね?」

「はひ…」


 すっとリーネさんの首元に構えた刀を鞘に納め、再び席に座る。

 まったく、そんなんでリアが誘拐されたらどうするつもりなんだか。


「まぁ冗談は置いといて…実際作成者はどうするにゃ? アリスちゃんという事にすれば問題はにゃいけど、アリスちゃん的にはリアちゃんの功を奪うようで嫌にゃんだろうけど…」

「そうですね…」


 確かにリアが作ったと公言したいが、それで新薬を作れるNPCという風に広まって厄介事に巻き込まれる可能性も出てきてしまう。

 このゲームがかなりリアルだからと言っても、ゲームと思ってプレイしている人も一定数はいる。

 その一定数の内、NPCだからという理由で良からぬ事を企む人がいないとは言い切れない。

 安全面を考えると私が製作者というのがいいんだろうけど…。


「なら出品者不明ということでオークションの方に出した方がいいかもしれにゃいね」

「そういうのってアリなんですか?」

「出品者の中には個人名を出さないでほしいっていうプレイヤーもいるにゃ。私たちもその情報は出さにゃいようにしてるにゃ。実際個人名出して怒られたしにゃ…」


 あれはリーネさんの自業自得だったのでは…。


「ともかくそういった事もできるから、リアちゃんがまた新しい薬作ったらそうするといいにゃ」

「そう…ですね…」


 新しい薬かぁ…。

 あの(・・)リアが今度はどんな薬を作るのか…。


「あれ…? アリスちゃんどうかしたかにゃ…?」

「いえ…ちょっとリアの将来が心配になっただけです…」

「一体何があったにゃ…」

「聞きたいなら話しますけど?」

「藪から蛇は突きたくないにゃ」


 きっぱり断られてしまった。

 ちくしょう…。


「それにしても新しいポーションなんてよく作れたにゃ。やっぱり採取に戦闘もできるプレイヤーの下にいるからかにゃ?」

「えっ? どういうことです?」


 戦闘できる事と採取って何か関係あったっけ?


「アリスちゃんは無意識にやってるかもしれにゃいけど、普通生産職っていうのは戦闘面はあんまり得意じゃないのにゃ。少しはできるけど、専門職に比べたら全然ダメにゃ。そして戦闘職は逆に生産方面はあんまりやらないにゃ。そんな地味な事をしている間に戦闘をした方がいいって思うからにゃ。だからアリスちゃんのように戦闘も生産もやるプレイヤーっていうのはあんまりいないのにゃ。実際にアリスちゃんの周りにも大体分かれてにゃいかにゃ?」


 えーっと…。

 ルカは…戦闘と生産やってるし、海花は…まぁ戦闘でファンが生産職している人がいる…。ショーゴたちやリンは戦闘方面…。

 確かに言われてみるとほとんど分かれてやってるね。


「単にアリスちゃんやルカちゃんが変わってるだけなのにゃ。普通はきっちり分かれてるもんなのにゃ」

「そういうものだったんですか…」

「でもこのゲームはスキルポイントでスキルが取れるから、取得数の問題はかなり楽になってるにゃ。だからアリスちゃんのようにどっちもっていうのはできるにゃ。それでまた最初の話に戻るにゃ。つまり生産職は安全な地帯の採取はできるけど、危険地帯の採取は同行者がいないと厳しいのにゃ。だから素材を集められるアリスちゃんがいることで、リアちゃんは様々な素材を使える分新しい薬を作りやすい環境にいるのにゃ」

「なるほど…」


 確かに私は素材は取ったら全部リアたちに預けてるし、好きに使っていいとも言っている。

 それに足りなくならないように一部は育てているから数も増えてる。

 言われてみれば素材結構あるかも…。

 つまりリアってかなり恵まれた環境にいたのか…。


「まぁそんな薬師にとっては恵まれた環境なのもあるし、アリスちゃんに良い暮らしをさせてもらってるからかにゃ? リアちゃんも一生懸命に新薬を作ろうとしてるんだと思うのにゃ」

「だから新薬作りを言ってきたんですかね…?」

「そこはリアちゃんの考えだからわからないにゃ。でもその話になった時に色々話したと思うけど、やっぱりリアちゃんにも言いたくない事はあると思うにゃ。アリスちゃんにだって言いたくにゃい事はあるでしょ?」

「そうですね…」

「でも言いたくない事は何となくわかるけどにゃ」


 えっ?

 リーネさんわかるの?

 むぅぅ…。


「そんな頬を膨らませないでにゃ…」

「だってなんだかリアの事よくわかってる感じなんだもん…」

「年頃の女の子だから何となく察しがついただけにゃ。単にリアちゃんは恵まれた環境の事を言うと、それの代わりに新薬を作ってると思われたくなかったんじゃにゃいかなと思うにゃ」

「ん…?」


 なんで環境でそうなるの?


「わかってにゃい感じだから続けるにゃ。簡単に言うと、リアちゃんはアリスちゃんに雇われてお店にいるにゃ。契約の内容はわからにゃいけど、少なくともちゃんとした生活はしてるはずにゃ。そして契約内容に従って仕事はしてるけど、アリスちゃんの事だから契約以上の待遇に少なからずリアちゃんは何かしらお礼をしたいと思っていたはずにゃ。だから新薬の作製をアリスちゃんにお願いしたと思うにゃ。ここまではいいかにゃ?」

「はい…なんとか…」

「そこで契約以上の待遇の事を新薬の作製の相談時に言うとどうなるかにゃ?」

「えっと…契約以上の待遇をしてもらったんだから、それに見合った働きをしないといけない…って事ですか?」

「そういう感じにゃ。ようは恩着せがましな事にしたくなかったのにゃ。純粋にお礼としての意味でやりたかっただけで、待遇の対価という事にはしたくなかったと思うにゃ。まぁあくまで予想だけどにゃ」


 だからあんだけお礼を強調してたのかな…。


「まぁ色々気を付けてるようだし、新しい薬また持ってきてくれるの期待してるにゃ」

「リアと会っても急かさないでくださいね。絶対リア気になっちゃいますから」

「わかってるにゃ。さすがにアリスちゃんのところの子を苛める度胸はないにゃ…」

「それならいいですけど…。じゃあまた何かあったら来ますね」

「了解にゃー」


 そう言って私はお店から出て行った。

 それにしても出品者を隠して出品かぁ…。

 リアが予想以上に新薬作ったら詰め合わせセットみたいに出品する感じになるのかなぁ…?

 謎の薬師みたいになるとそれを探るようなプレイヤーも出てくるだろうし…。

 …なんだろう…凄く不安だ…。

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