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Nostalgia world online  作者: naginagi
第一章
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Nostalgia world online

では本編です。

 2025年4月15日。


 私、雨宮 愛梨沙(アマミヤ アリサ)は大学にあるテラスで食堂のおばちゃんが焼いた出来立てのパンを食べながら、これから来る友人を待っていた。それにしても…やっぱりおばちゃんが焼いたパンは美味しいなぁ…。


「おっすアリサ。待たせたか?」

「講義がちょっと長引いて遅くなっちゃってごめんね?」


 私がパンをむしゃむしゃと食べていると、爽やかそうな男性とおしとやかな女性の二人組がやってきた。彼らは私の友人…というより幼馴染で、見た目爽やかそうな男性の名前は雲雀 正悟(ヒバリ ショウゴ)で、おしとやかな女性の名前は土屋 鈴江(ツチヤ スズエ)という。

 二人とは幼稚園からの付き合いで、家も近所でよく遊んでいた。大学も比較的近い場所にあり、各々の学力に合っていたため、三人一緒に同じ大学へ進学した。


 幼稚園から大学までずっと一緒だと恋愛事とかないのか?と聞いてくる人もいたけど、私たちは特にそんなことはなく、もし二人が付き合っていたとしても別に嫉妬とかそんなものは私は持ち合わせていないのです。

 実際、高校の頃は二人はそれぞれ別の異性と付き合ったことがあったのだが、私たち三人の仲を見ている内に二人の相手が「あの二人(男)に勝てない…」とよくわからない理由で一ヶ月も持たずに別れたのだ。仲が良いというよりは、お互い兄妹的な感じで接しているのが彼らにとっては諦める理由になったのではないかと思うけど…。ちなみに私は特にそんな浮ついた話はないです。いや、私が気付いてないだけで実はあったのかもしれません。

 まぁ私は恋愛事より美味しい物の方が好きなので食べる方がいいです。


「大丈夫。パン食べてたから待ってないよ」

「いや…飯食ってるから待ってないっていうのはおかしいだろ…」

「アリサももう少し他の事に興味持ってくれたらいいんだけどね~…」

「何をおっしゃいますか。だからこそNWOを購入して登録したのではないですか」

「口調変えてドヤ顔するのはいいけど理由がリアルっぽくて美味しい物が食べられそうだからじゃないっけ?」

「そうともいう」


 再び私はパンをムシャムシャする。

 体感型VRMMORPG-Nostalgia world online-通称NWO。五感をリアルに再現し、実際にゲームの世界で自由に動き回ったりすることができる体感型のゲームである。でもクオリティなどを現実に近づけた分、モンスターの出血や身体の損傷も同じようになるということで、購入及び登録には年齢制限がかかっている。

 基本15歳以上で、13歳以上15歳未満―つまり中学生には親の同意書が必要とのことである。まぁ中学生に実際に血が噴き出すようなゲームをさせていいかどうかのための同意書だと思うんだけどね。


「んで登録したってことは名前も既に登録してあんだろ?名前先に教え合っとこうぜ」

「私は【アリス】にしたよ~」

「私は【リン】にしたわ。被る前に登録できてよかったわ」

「俺は【ショーゴ】にしたぞ」

「「そのまんまじゃん(ね~)」」

「うっせーよ!分かりやすい方がいいだろ!」


 まぁ私のキャラ名もアリサを少し変えてアリスにしたようなものだからあんまり変わらないんだけど…。


「まぁしょーごのセンスは置いておいて、ログイン後はどうする~?」

「俺は前々から知り合いとギルド作るっていう話になってるからそこら辺のと一緒に動く予定だが…二人はどうする?まだ先になるが俺たちんとこのギルド入るか?」

「私は遠慮しておくわ。ゲームの中くらいずーっと一緒じゃなくてもいいもんね」

「私もパス~。しょーごの知り合いって絶対男ばっかでメシマズ系だもん」

「アリサお前偏見持ちすぎだろ…仕舞いには泣くぞ…」

「はいはい、アリサもあんまり正悟をいじめないの。私の事を考えて断ったってわかってるから」


 う~…。だって他に断る理由が思いつかなかったんだもん…。鈴が他行くなら私も他行かないと鈴が一人になっちゃうし…。


「まぁどう動くかはともかく、フレンド登録ぐらいは済ませておきたいわね。初日は絶対混むだろうから二日目にどこかに集まりましょうか」

「じゃあ初日が終わったら全員が分かる場所に集合っていう形でいいか」

「はーい」


 ということは初日にある程度探索しないとダメなのか。…美味しいご飯屋探さないと…。ってそろそろ運営からのお知らせ兼説明の生放送が始まる時間だ。wi-fi付けて…。充電器付けて…。よし、大丈夫。


「お?もうそんな時間か」

「アリサ悪いわね。わざわざ準備してもらって」

「気にしない気にしないー」


 時間はちょうど12時10分。放送が始まった。



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 生放送が始まり、NWOを開発したアヴニール社の社長の姿が現れた。


「皆様、初めまして。アヴニール社で社長をしております藤堂 真志(トウドウ シンジ)です。この度は、弊社が開発したNWOを購入していただきありがとうございます。色々とお礼の言葉を言いたいのですが、お昼の時間のためお忙しい方が多いと思いますのでさっそく本題に移らせて頂きたいと思います。

 まず、サーバーオープンはホームページに記載しているように今週土曜日のお昼の十二時としています。また、ゲーム内での時間はこちらの三倍となっております。もしかしたら時間感覚が分からなくなり混乱する方もいると思いますので、ゲーム内でこちらの時間が分かるようにしております。とまぁ前置きはこれぐらいにしておいて、皆様に注意しておきたいことがありますので今回この生放送を行っております」


 コメント欄には「なんだ?」「注意する事なんてあんのか?」などというコメントが無数に流れた。


「ご存知の通り、NWOはリアリティを追求したゲームとなっております。そのため、ゲーム内のNPCはほとんど私たち人間と変わらないようになっております。これがどういう事なのかお分かりになりますか?そう!つまりNPCも『生きている』のです!そのため、物流も存在します。また、NPCが事故などで亡くなった場合、そのNPCはいなくなります。同様に、NPCともめたりするとそのNPCがプレイヤーに対して冷たくなったりと実際の人間関係のような事が起こります!」


 その瞬間コメント欄には「コミュ障のワイ…終了のお知らせ」や「PKとかもできなくなんのか?」などと様々なコメントが流れる。


「コメントにもありますが、他人と話すのが苦手な方もいると思います。ですが、NPCはプレイヤーのしたことを良くも悪くもきちんと評価してくれます。口下手な人がNPCに対して厚意を持って接すれば、口下手な人だけど良い人だと判断してくれます。また、PKも禁止されている訳ではありません。しかし、PKをすることでNPCに悪印象を持たれる事もあります。ですが、行動によっては様々な印象を持たれることもあります。それらを踏まえて、NWOをもう一つの故郷としてプレイしていただきたいと思います。

 説明としては以上となりますが、まだ時間がありますので質問をコメントから拾いたいと思います」



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 コメント欄には「ギルドについてはどうなってるんです?」や「他のスキルはどうなってるんですか?」などとプレイに置いて必要だと思われるコメントが流れる。藤堂社長は比較的書かれているコメントについて回答を行っている。

「ギルドについてはギルドホールというところがありますのでそこで詳しく聞くことができます」や「他のスキルについてはある条件をクリアーしたりスキルレベルを上げることで解放されたりします」などと答えてくれている。そこで私は一つコメントを打ち込んだ。取り上げてくれるかわからないけど、どうしても聞いておかないといけないと思った。


「では次で最後にしたいと思います。では最後の質問は……『モンスターも生きているのですか?』にしましょうか」


 コメント欄では「他にもっと聞くことあんだろ!」「そんなのどうでもいい!」などと批判的なコメントが流れた。


「アリサ…大丈夫…?」


 鈴が心配しているが、私はNPCが生きていると言ったことからこれは聞いとかなければいけないと感じた。すると藤堂社長が口を開いた。


「面白い事を聞く方がいますね。私としてはどうしてこの質問をしたのか聞いてみたいですが、コメントを見る限り答えてもらうのは酷な話でしょうからやめておきましょう。ですが、もしよろしければ答えて頂きたいと思います。一分程待ちますのでその間に答えて頂ければ幸いです。では伊藤君、先程のコメントの方以外一時的にコメントが流れないようにしておいてね」


 藤堂社長が発言して5秒ほどすると、コメントが一時的に流れなくなった。


「おいアリサ!コメントすんのはやめとけよ!」

「そうよ!無理に書く必要ないんだからね?」


 二人は心配して私にコメントを書かないように言ってるが、私は既にどうするかを決めていた。私は二人に「ごめん…」と言い理由を打ち込んだ。


「おや、コメントが流れましたね。えーっと…『NPCも生きてるならモンスターも生きていると思ったから』ですか」


 藤堂社長はそのコメントを少しの間じっと見つめ、口を開いた。


「まず初めに、コメントをしてくださりありがとうございます。私としてはコメントしてもらえないと思っていたので嬉しいですね。ではこの質問について回答したいと思います。質問してくださった通り、モンスターも『生きて』おります。モンスターだけではなく、植物や他の生き物も『生きて』おります。それではモンスターなどが狩りつくされるのではないかという心配もあります。そのため、自動でモンスターや薬草等が湧くダンジョンが存在しております。ダンジョンの場所についてはNPCに聞けば分かるものもあれば、自分の足で見つけるものもあります。だったらダンジョン行けばいいだろという意見もあると思いますが、モンスターも『生きている』ため繁殖や村や街に降りてくるといった事もあります。

 運営はそのような事件には基本関与致しません。皆様の行動で様々な事件が起こりうる可能性やそれを未然に防げる可能性もあります。我々運営は、皆様の行動でNWOがどうなるか楽しみにしております。以上で放送を終わりに致します。よきNWOライフをお楽しみください」

次は7/2の08:00に投稿予定です。

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