無邪気な狩人
またまた残酷な表現がありますのでご注意ください。
「よし、掲示板はこんなところでいいだろう」
「ショーゴお疲れー」
ショーゴは掲示板への書き込みが終わり、こちらへ戻ってきた。
「この後はどうするの? ショーゴ」
「掲示板に書いといて俺らが放置ってわけにもいかないだろう。だからギルドで依頼を受けようと思う」
「人狩りしようぜ」
「なんかアリスの発言のニュアンスが違う気がするが…ともかく、依頼を受けて少しでも住人の印象を変えるぞ」
「「「「「「おぉー!」」」」」」
私たち七人はギルドホールへ向かい、ボードに貼られていたクエストを選んでいた。
「そういや俺らは誰も採取採掘系持ってねえけど、リンとアリスは持ってるか?」
「私は持ってないわね~」
「【採取】だけなら」
「よし、なら採取系も一緒に受ければ効率がいいな。何かよさげの討伐と採取にすっか」
「森関係はないのー?」
私としては森の方が採取しやすいと思って提案をした。
「森ならエアストベアーがいるな…」
「それにエアストウルフもいるから防具の素材にもなるわね」
「そろそろ店売りのも限界ありますからいいですね」
「っく…鉱石が全く手に入らねえから武器の素材が…」
どうやらショーゴのPTメンバーの内三人は賛成のようだ。といっても鉱石も手に入れて私も武器作って貰ったほうがいいかなぁ?
「アリス~、せめてその初期服は卒業しないとね~」
「うっ…」
そうなのだ。私は特に防具を買っているわけではないので初期装備のままなのだ。普通、スキルが上がるにつれて狩場のレベルも上げるためそれに合わせた武器や防具が必要なのだが、私の場合【切断】スキルにより当たりさえすればあまり関係ないため後回しにしていたところがある。おかげで死にかけることも多々あるが…。
「森で賛成なようだしそこら辺の依頼受けとくぞー」
ショーゴが受けた依頼は以下のようになった。
・エアストベアー討伐:五体 報酬2000G
討伐の証として証拠となる部位の提出
・エアストウルフ討伐:十体 報酬2000G
討伐の証として証拠となる部位の提出
・薬草採取:百枚 報酬3000G
「おいショーゴ…」
「おう、言いたいことはわかる。だが確かに納得できる内容だ」
「確かに虚偽の報告されることを防ぐためというのはわかる…だがこれではドロップアイテムの回収がな…」
「多く狩ればその分のは提出しなくていいかなと思ってな…」
「まぁそこは仕方ないわねぇ~」
「お姉さんMP持つかが心配だわ~」
「レオーネさん、私たちは節約して使いましょう」
「俺はガンガン刺しまくるぜ!」
皆やる気満々で何よりです。さぁさぁれっつごーなのです。
さぁ森に到着しました。と言っても陣形はある程度決まってます。前衛職で最も防御力のあるガウルが先頭で、中心に魔法組の三人、そしてその周りにショーゴ、私、シュウが囲むような陣形である。平原じゃないため敵が発見しにくい点を踏まえてこういった陣形にした、らしい。しばらく森の中を散策していると正面に狼が三匹程見えた。
「どうやらこっちは風下のようだな、気づいてない」
「初手はどうする」
「お姉さんが魔法で攻撃しちゃう~?」
「レオーネさんの攻撃に合わせて前衛三人が飛び出すって形はどうです?」
「よっしゃ任せろ!」
「じゃあ私は周りを警戒するわね~」
レオーネさんが杖を構えると、その先端が光り火の玉が飛び出した。飛び出した火の玉は正面の狼の内、真ん中の狼に直撃した。私とショーゴとシュウは直撃したのを確認して飛び出した。一応保険としてガウルは残っている。
「よっしゃ行くぜぇ! ってアリスちゃん速くねっ!?」
「確か【AGI上昇】取ってたからその影響だろ」
「私右いくね」
私の方がAGIが高いのか二人より前に出てしまったため、狙う対象を他より後ろにいた右を狙うことにした。狼も仲間が攻撃を受けたため散開をし、こちらへ向かってきた。ならこの後の行動は大体予想できる。
私は飛び込んできた狼を横に回避して避けた。そして飛びかかった狼は着地し、その返す足で私に再び襲い掛かる。私はその無防備な頭を思いっきり蹴りあげた。
「キャゥゥン!?」
そして頭を蹴りあげたことにより首が伸びて切断ポイントがはっきりと見えた。私は脇差を抜き、その切断ポイントを一刀両断した。
「は…?」
「おいおい…」
切断ポイントを切った事により、狼の頭部は弧を描くように地面に落ちた。頭部を失った狼はそのまま倒れ込み身体をビクンビクンとさせていた。
「ちょっと返り血付いちゃった」
二人はまだ戦闘中なようなので、私は頭部を失った狼の足を持って血を地面に垂れさせるためにプラプラと少し振る。まだビクンビクンとしてるため血は少し抜きやすいようだ。血が地面に垂れなくなったのを確認し、【収納】の中にしまった。ついでに頭部も回収しようと思って狼の頭を拾ったところで二人がこちらに寄ってきた。どうやらあちらも終わったようだ。
「ショーゴとシュウお疲れー」
「いやいや…お疲れって…」
「シュウ、諦めろ…アリスはこういうやつだ…」
「??」
よくわからなかったが、私たち三人は皆の元へ戻った。
「戻ったよー。ってクルルどうしたの?」
「いえちょっと…うぷっ…」
「あー…この子さっきの映像を見てちょっとね…」
「まぁ女性からしたらショッキングが映像なはずなんだがな…」
「ホントアリスには驚かされてばかりよ~…」
「何のこと?」
「「「「「「その頭を持って言うセリフじゃない(です!)!」」」」」」
私はなんか変な事をしたのだろうか…?
「アリス、まず死体が残るのは【狩人】スキルの効果というのはわかってる」
「うん」
「お前が【AGI上昇】を取ってて速いというのもわかってる」
「うん」
「お前が多少闘えてエアストウルフの頭を蹴りあげたというところまでは理解できる」
「おう?」
「だが、エアストウルフの首を切って一撃で倒した方法については聞かされてねえぞ!」
「聞かれてもないし言ってないんだから当たり前でしょ?」
「っー!!」
なんかショーゴが両手で頭を押さえて暴れてるけど気にしないでおこう。
「アリス~、それでその首を切って一撃で倒した秘密は説明できるの~?」
「別にいいけど?」
「いいんかい!!」
とりあえず効果だけ説明すればいいよね? 私が知った『あれ』については皆が検証すればいいことだし。
「あれは『切断』スキルって言って、生きてる生き物に対して切断ポイントっていうのが出て、それをうまくなぞって切断すると切断できるっていうスキルなの」
「生きてる生き物ってことは…俺らのも見えるのか?」
「うん、しっかり見えてるよ」
「おーこっわ、俺アリスちゃんに首切られかねないのか」
「一応四肢にもあるからダルマにもできるよ?」
「アリスちゃんのナチュラルな発言がこええよ!」
まぁ実際、この前出会った熊さんの内一体もダルマにしたしね。
「ホントアリスのスキル構成が知りたいぜ…」
「どこも変わったところないと思うけどなぁー?」
「あれを見て変わってないとはお姉さん思わないけどなぁ~…」
「アリスに喧嘩を売ったやつは首切られたりダルマにされる覚悟を持たなきゃいけないっていうのか…」
「それどこの世界の妖怪首おいてけだよ!」
「むしろアリスさんならアリスだけに、不思議な国の女王様の方があってるんじゃ…」
「確かにあれも首狩れ首狩れ言うけどさ!」
不思議な国のアリスかー。結構好きだったなー。確か歌はこうだったよね?
「ハートの女王タルトつくった♪夏の日 1日中かけて♪ハートのジャックタルト盗んだ♪タルトを全部もってった♪この者の首を刎ねろ♪この者の首を刎ねろ♪」
「あらアリス上手ね~」
「お姉さんもっと聞きたいわ~」
「アリスさん声綺麗ですからね~」
「おいまだ森の中だぞ! アリスの独奏会は今度にしてもらえ!」
「女性陣はのんきなものだな…」
「アリスちゃん超可愛い…」
シュウが何かをぼそっと呟いたが、私は聞こえなかったがショーゴに聞こえていたのか殴られていた。
その後も狩りと採取を行い、成果を挙げていった。その最中何度か首を切断したんだけど、クルルが気持ち悪そうにしてたので少し控えることにした。薬草も無事百枚以上採取できたのでそれぞれに分配した。と言っても【狩人】持ちが私だけしかいなかったので、死体が残ったのは熊三頭、狼六頭だけだった。一部は死体が残ったには残ったけどレオーネの火魔法でこんがり焼けてしまって素材回収できるほどではなかった。
どうやら【狩人】スキルは止めが私なら死体が残るようだ。それも含めて狩りをした結果、全員【狩人】スキルが取得できるようになっていた。でも全員がその後の処理を説明した結果、苦い顔をしてたので取得は後々ということになった。
ある程度の個数を狩り終わったため、依頼を終了して街に戻った。皆はそのままギルドホールに向かおうとしていたが、私が解体するから待ったをかけたところ、ガウルとレオーネとクルルとシュウはギルドホール前で待機することとなった。クルルが残ることについては、解体現場まで見たら完全にアウトな予感がしたからである。ということで私に同行するのはリンとショーゴの二人となった。ちなみに返り血とか服の汚れについては、クルルの水魔法で洗い流してもらった。
「おう、お嬢ちゃんまた来たのか」
「おじさーん、また来たよー」
「今日はどうした!」
「熊三頭の解体と場所貸してください」
「おうよ! 任せな!」
「あっ熊の歯は取ったら頭はそのままでください。依頼で提出しないといけないので」
「あいよ!」
私は場所を借りて狼を【収納】から取り出し解体し始めた。今回については討伐したモンスターの一部を提出をしなくてはいけないので、頭を提出するために牙だけ取るようにしないと。
「なんか…アリス手馴れてるな…」
「昔からこういうのに苦手意識はなかったけどね~…。と言っていきなり生解体をするとは思わないわよ~…」
「【狩人】取ったらこういうことしないといけないんだよな…?」
「これを見るとちょっと取るのに勇気いるわね~…」
なんか二人が少し離れた場所にいる気がするけど…?
「二人ともこっち来ないの?」
「えっーと…アリスの邪魔しちゃ悪いかな~っと思ってこっちにいるのよ~…」
「そっかー」
やっぱり二人は優しいなー。さっさと終わらせないと! 私はやる気を出して狼六体の解体を急いだ。
「終わったぞお嬢ちゃん」
「おじさんありがとっ!」
「じゃあ手数料の300Gだな。場所代はおまけだ」
「ありがとうございますっ!」
私はお辞儀をしておじさんが解体した熊を【収納】に入れていった。
「さてギルドホールにれっつごー」
「「お、おーっ…」」
さてさて、四人を待たせているギルドホールに着きました。代表はショーゴだけど別に誰が証拠の提出をするかは自由とのことだ。ということで今素材を一番持っている私が対応することとなった。
「依頼の報告したいんですけど…」
「はい。では依頼書をお願いします」
「えーっと…これでいいですか?」
「ありがとうございます。では討伐の証となる物の提出をお願いします」
「はーい」
私は机の上に先程解体した狼の頭六つと以前狩った狼の眼球などを全て取った狼の頭四つ、そして熊の頭を三つと以前狩った狼と同じような状態の熊の頭を二つ、そして薬草百枚を提出した。
「……ふぅ…」
「ちょっ!? 気を確かにしなさい!」
「ん??」
私の対応をしていた受付の人は顔を青くして倒れてしまった。周りの職員が慌ててその女性の介抱をしているが、倒れた女性は「うふふ…」と遠い目をしていた。何かショッキングなものでも見せたかな?
後ろを向いてみると、クルルも顔を真っ青にしてレオーネにしがみ付いている。しばらくすると、倒れた女性の代わりに別の男性が現れ対応をしてくれた。
「えー…確かに依頼した内容の討伐の証と確認いたしました…。こちらがその報酬となります…」
「ありがとうございます…?」
男性職員は机に置かれた狼と熊の頭と薬草を回収しそそくさと退出した。まぁ報酬の7000Gは手に入ったし、一人頭1000G分ければいいんだよね? 私は皆の元に戻って貰ったお金を振り分けた。
この後、討伐依頼の討伐の証として頭を持ってくる場合は右耳だけでいいという書き出しが追加された。
―INFO―
スキル解放の条件を達成したので【童謡】スキルが取得可能になりました。
次は7/13の08:00に投稿予定です。
2016/7/12 誤字の修正と討伐の証の耳の提出を右耳に変更しました。




