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Nostalgia world online  作者: naginagi
第一章
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対策

ゲームしてるとログの確認って案外忘れます…。

「色々とご迷惑をおかけしました」


 私たち三人はナンサおばあちゃんに頭を下げた。でもおばあちゃんはもう気にしていない様子だった。


「こっちこそ叱って悪かったね。それと作ったポーションだよ。他にも数人いるんだろ? 一人十個になるように100個は作ってあるから持ってきな」

「おばあちゃん!」


 私はおばあちゃんにしがみ付いた。おばあちゃんは少し嬉しそうに私に話しかけた。


「ほらシャキっとせんかい。そんなんじゃいつまで経っても独り立ちできやせんぞ」

「おばあちゃん…」

「また作ってほしくなったら材料を持ってこい。それと肩たたきぐらいはしてもらおうかのぉ? だから笑え、今はそれで十分じゃよ」

「うんっ!」


 少し涙でぐちょぐちょだけど、私はおばあちゃんに向かってニッコリとほほ笑んだ。後ろでリンが「あのアリスが…立派になって…」って目元を抑えてるけど気にしないでおく。今はおばあちゃんが優先だ。


「ではナンサさん、ポーションありがたく使わせて頂きます」

「約束を忘れるんじゃないよ」

「はいっ! 必ず守ります!」


 ショーゴはおばあちゃんからポーションを受け取り、アイテムボックスにしまった。


「じゃあまた来るね! おばあちゃん!」

「土産話でも期待して待っとるよ。それと頼まれたのはそこの机にあるから持っていくんだよ」

「ナンサさん、お世話になりました」

「ナンサさん、ありがとうございました」

「アリスをしっかり頼むよ」


 二人はおばあちゃんに頭を下げ、私はポーションと塗り薬それぞれ十個を貰い手を振ってお別れをした。


 外では待ちくたびれた四人が待っていた。


「随分遅かったな。というか誰かの泣き声が聞こえたが…」

「眼の様子から…泣いたのはアリスちゃんかしら?」

「泣かされるようなことでもしたんですか…?」

「美女を泣かせるとは…ちょっとしばいてく「乗りこんだら私…怒るよ…?」…はい…」


 シュウがおばあちゃんの家に乗り込もうとしたので、少し威圧したら諦めたので怒るのは勘弁しておいた。


「遅くなったのは悪かったが、ちゃんとポーションを貰えたぞ。一人頭十五個で残りはアリスに渡すぞ」

「えっ? 私もう十個貰ってるから大丈夫だよ?」

「そもそもお前がお願いしたんだからそんぐらい貰っておけ。皆、構わないだろ?」


 他の皆が頷くので、ちょっと過剰かなぁと思いつつも余った十個を受け取った。


「それで? これだけのポーションを貰ったんだから何かあるんでしょう?」

「察しがいいなレオーネ。突然だが、四人は街の住人をNPCだと思ってるか?」

「なんだその質問は? プレイヤー以外はNPCじゃないのか?」

「確かにNPCなんだが、彼らはNPCであってNPCではない。この世界の住人なんだ」

「言ってる意味がよく…」

「つまり彼らにはちゃんと意志も感情もあるんだ。生放送での社長の言葉を思い出してくれ」

「NPCも生きているっていうやつか? それにモンスターも生きているっていうのもか」

「ちなみにその質問したのはアリスな」

「「「「!?」」」」

「ショーゴ!?」


 なんでばらすの!? バカなの!? あう…四人とも見てるし…恥ずかしい…。


「まぁそこは置いといて、生きてるってことは感情があるってことだ。まだ始まってから三日なのに彼らの対応が悪くなっているとは思わないか?」

「確かに素っ気ないところは感じるが…」

「でもそんなもんじゃないのかしら?」

「私もそういうものだと思っていたのですが…」

「俺もNPCの設定っていう風に思ってたな」


 やっぱり皆そういう風に思ってたんだ…。でも…だったら何で私の時は大丈夫だったんだろう? 酒場の人だったら他のプレイヤーの人の対応だってしてるはずだし…。


「俺もそういう風に思ってたから何も言えない。だが、さっきこのポーションを作ってくれたナンサさんと話して考えを改めた。彼女たちはこの世界で生きているっていうことをきちんと理解する必要があるっていうことを」

「それがどう関係あるんですか?」

「これはナンサさんから言われた事だが、今後俺たちプレイヤーの態度が変わらなければ、取引とかをしてもらえなくなる可能性が高くなる」

「なっ!?」


 社長は生放送の時にその可能性を示唆していた…。でもそれは私たちプレイヤーと住人達との関係だけじゃない…。


「これはアリスの質問したことの内容になるが、モンスターも生きているってことは繁殖もするということだ」

「まぁ生きているからな」

「もしこれがプレイヤーが街の住人たちと疎遠になった結果、依頼も何も受けなくなりモンスターの大氾濫が起こって街が襲われた場合…」

「街は壊滅するわ。そしてこの場合、運営は関与しないと言っている以上…」

「街が無くなるって言うのか…?」


 私たち三人はゆっくり頷いた。街が無くなるということはセーフティーゾーンが無くなるため、安全にログアウトできる場所が無くなるということ。それにそんなことが起これば、他の街の住人はプレイヤーに頼る事はせず自分たちだけでなんとかしようとする。その結果、更にプレイヤーと疎遠になり同様の事が起こるという悪循環が発生するかもしれない。


「事の問題は単純な話じゃないと俺たちは思ってる」

「確かに生放送の時そのような事を言っていたが…」

「まさかそんなことを想定してるなんてね…」

「よくアリスさんはそのような事考えつきましたね」

「俺なんてそんなこと全く思わなかったぜ…」


 私もNPCが生きているなんて発言を聞かなかったら、そんなこと思いもしなかった。でも実際、街の人たちと話してNPCという考えはなくなった。


「でもよ、対応策はどうするんだ?」

「それにはついては掲示板を使う」

「でも掲示板に書いても信じないやつは信じないでしょ?」

「だが実際住人の対応が冷たくなっているのは事実だ。その事は皆わかっているはずだ。特に悪態をついていたプレイヤーはな」

「行った事によって起こった事実を現実として説明させるということですか。確かにそれなら話を聞くかもしれませんね」

「それに三日経っている今ならば、ダンジョンでのドロップはそこまで美味しくない事に気づいて依頼を受け始めるやつも出てくるはずだ。それに合わせて住民への対応を直していけばいけるはずだ」

「確かにそこまでダンジョンドロップは美味しくないしな。ギルドの方で依頼を受けるやつも出てくるかもな」


 昨日も銭湯で聞いたけどさ、ダンジョンってドロップ低いの? 【狩人】スキル持ってれば関係ないんじゃないの?


「ねぇ皆」

「どうしたのアリス?」

「皆って【狩人】スキル持ってないの?」

「「「「「「え?」」」」」」


 皆が一斉に私の方を向くけど…。ってそうか。皆は街の人たちを絡んでないからそういうのがないのか…。


「…アリス~、【狩人】スキルって何なのかしら~?」

「えっと…【狩人】スキルは取得すると死体が残るっていうスキルで…」

「死体が!?」

「残る!?」

「あっでも死体が残っても、死体の損傷が酷いとロクに素材が取れないっていうデメリットも…」

「アリス」

「ショーゴ…何…?」


 なんかショーゴが怖い顔してんだけど…。


「それどうやって手に入れたんだ?」

「えっと…街の住人の人に教わって…実践して…それで…」


 教わって実践して手に入れたんだから…間違いじゃ…ないよね…?


「SPはどんぐらい使ったんだ?」

「教わって実践したからいらないって書かれてたから0で…」

「ねぇショーゴ」

「あぁ、リン」

「これは皆が話を聞く情報になるわよ」

「???」


 なんか二人だけがわかってるようになって少し寂しい…。


「確かに街の人から教えてもらえたってことは、仲良くなればスキルを取得できるってことだしな…」

「それにSP0で取得できるのは大きいわね」

「それだったら欲しい生産系スキルも教わればSP0で手に入れられるってことになりますし」

「その方法なら貴重なSPを使わないでスキルを取得できるな」


 皆だけわかって置いてきぼり感が凄い…。

 いいもんいいもん…私なんかどうせ情弱プレイヤーだもん…。


「あーアリスごめんね…? 決して仲間外れにしたわけじゃないのよ~…?」

「それにしても住人に教えてもらうっていう発想もなかったしなー…」

「それは仕方ないだろう。スキルはレベルを上げて派生を増やし、SPを使って手に入れるものだと思っていたのだから」

「住人をNPCとしか見てない私たちじゃ気づかなかった情報ね」

「アリスさんがいて本当によかったと思いますよ」

「アリスちゃん大手柄だな」


 ま…まぁ役に立ったのなら…いいのかな…?


「俺はこの情報をまとめて掲示板に書く。アリス、ログの中に他に情報はないか見てくれ」

「うっうん!」


 ショーゴに指示されて私は過去ログを読み漁った。すると初期の方にある一文が残っていた。


 ―INFO―

 薬師から調合の方法を教わったため【調合】スキルがSP不要で修得可能になりました。

 調合のコツを教わったためメモに記載されます。


 おそらくこれはナンサおばあちゃんに塗り薬のやり方を教わった時のログだ。手順的に私が実践してから作り方を見ているのにも関わらず取得できていることを考えると、取得条件としては職業の人のやり方を見るのと、その人の前で実際に行うのが条件だろう。

 それにメモっていうのがわからないが、たぶんどこかに載っているのだろう。ヘルプでメモを確認してみると、ログアウトなどの欄の設定の『メモ表示:非表示』を表示にすることで、欄に追加されメモを見ることができた。私はおばあちゃんに教わった時の状況の説明とログの説明をショーゴにした。


「よし、これをまとめりゃ皆見ざるをえないだろ。住人を無視するとSPが必要になるようなもんだしな…クックック…」

「ショーゴ、何か悪い顔してる」


 とりあえずショーゴが悪い顔をしてたので注意をしておいた。

次は7/11の08:00に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] NPCの教えを請うのを広めるのはいいが大量の馬鹿が押し寄せてくる訳だからやり方考えないとね。
2020/02/11 15:05 退会済み
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