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〜再会〜

グラウンドに出ると葵はいた。

葵はサッカー部らしい。

今はミニゲームをしているらしい。

俺もサッカーをよく葵としていたが、あの頃より上達しているように思える。


「葵は運動神経良かったもんなぁ〜」


ミニゲームが終わりみんなで集まって何かを話をしている。

部活も終わりみたいだ。

解散になってもまだみんなグラウンドにいてチームメイトと雑談をしながら片付けをしている。

ちょうどいいから少しからかってやろうかな?

気付かれないように葵の後ろに回り込む。


「あの〜七瀬さんですか?」


よそ行きの声で葵に話しかける。


「ん? そうだけど……⁉︎」


葵は目が点になっている。

しばらく沈黙が流れる。


「ぷっ……あはははは」


俺の方が耐え切れず笑ってしまった。

葵はなんのことだかさっぱりな感じでまだ俺を見ているが、何かに気が付いたみたいだ。


「もしかして……雅?」

「おー! よくわかったね! 仁美ひとみさんから教えてもらったのか?」


仁美さんとは葵のお母さんのことだ。


「母さんから話は聞いてたけど、まさか同じ学校だとは知らなかったし、最初は誰だかわからなかったよ」

「まぁ知っての通りこんな感じで女の子やってるよ」


ヒラヒラとスカートを持って女の子アピールしていると


「わ、わかったから! とりあえずそれはやめて!」


お! 葵はこんなにもピュアだったのか。

もっといじめたくなるが可哀想だからこの辺にしておこう。


「この後葵は暇?」

「うん。部活は終わったから後は帰るだけだよ」

「ならこの後お昼食べにどっかに行かないか? 久しぶりに会ったことだしさ」

「それは構わないけど……じゃあ正門で待ってて」

「わかった」


あれから俺は正門付近で葵を待っていると、葵とその仲間たちが一緒にやって来た。


「七瀬ぇこんな美人な彼女がいたのか?」

「俺もこんな可愛い彼女がいたらなぁ」

「こんな可愛い一年生をもう捕まえたのか!」


などと俺の周りにまた男共が群がる。


「先輩! いい加減にしてくださいよ! ほら、行こ!」


と葵が俺の手を引っ張って男共の群れから引き離しそのままズンズンと歩いていく。

俺は葵に引っ張られつつも葵の歩く速度について行く。


「あ、葵。もういいんじゃないかな?」


男共が見えなくなってもまだ手を引っ張っているため声をかけた。


「あ、あぁ! ご、ごめん!」


と慌てた様に手を離す。


「葵がそんなにムキになるなんて珍しいじゃん」

「いや、雅が困ってたからさ」

「でも助かったよ。ありがと」


お礼の言葉と同時にウィンクしてみる。

すると葵は顔を赤く染めて照れているように見える。


「それと、今は雅じゃなくて愛だからね。そこんとこよろしく!」

「あぁごめん。気をつけるよ」


程なくして俺らはファーストフード店に入り席に着いて注文した品を食べている。


「俺が女の子になったって仁美さんにいつ聞いたんだ?」

「昨日だよ。急に母さんが話があるとか言ってきてさ。聞いた時にはビックリだったよ」

「まぁそうだろうね」

「今日会うまでは半信半疑だったけど……。まさか本当だったとはね」


葵は既に食べ終えていたが、俺はまだ半分くらい残ってる。

食べるの早いなぁ〜。

運動した後だからお腹空いてるってのもあるのかもな。


俺が食べ終わるのを待ってくれていた葵と一緒に会計をしにレジへ行く。


「ご一緒でよろしいでしょうか?」

「あっ別々でお願いし」

「一緒でいいです!」


俺が言い終わる前に葵が横から発言する。


「葵、いいよ。悪いから」

「いいって。久々に会ったんだし僕が払うよ」

「でも……。」

「こういう時は男が払うもんさ」


と葵がささっと会計を済ます。

俺は葵にお礼を言いながら出口へと歩いて行った。


葵とは途中で別れて俺は自宅へ向かう。

久々に会った葵は変わらなかったなぁ。

というよりも、変わった俺に対して昔のままで対応してくれたことに嬉しかった。


「ただいま〜」

「愛ちゃんお帰りなさい。遅かったわね」


リビングに入ると母さんがキッチンから話し掛けてきた。


「学校で葵と会ってさー。久々に会ったから一緒にお昼ごはん食べたんだ」

「あら! デート?」

「ち、違うよ!!」

「あらあら、顔を真っ赤にさせて。可愛いわね」


普通に昔みたいに一緒にいただけなのに、男女になるとデートになるのか?


「母さん仁美さんに喋ったでしょ?」

「あら! いけなかった?」

「いけなくはないけど……。いつ喋ったの?」

「う〜〜ん……。愛ちゃんが愛ちゃんになった日?」

「はぁぁ……。」


二年前から言ってたとは。

まぁそれでも誰にも言ってなかった仁美さんにはありがたいけど。

俺は二階に上がって制服を脱ぎラフな部屋着に着替える。

制服より断然こっちの方が落ち着く。

何より足元がスースーしないのがいい。

リビングに戻ると楓が帰ってきていた。

楓との面倒なやり取りを交わし、時間が過ぎていく。


「おい、風呂空いたぞ」


父さんがお風呂から上がったのでリビングに来ると、お風呂上がりのビールを飲み始めた。

ビールは美味しいのだろうか。


「愛ちゃん入ったら? 母さんはまだやることあるから」

「わかった。先にもらうね」


俺が脱衣所に入り服を脱ぐ。

改めて鏡に映った自分の身体。

この胸も自前なのだが、大きくなってきたので鬱陶うっとおしい。

肩も凝るし良いことはないな。

お風呂場に入り髪、身体を洗う。


ちゃぷん。


「ふぅ〜〜……。」


良いお湯だ。

お風呂に入ると心が洗われるようで好きだ。

今日の疲れを癒す一時。


ガチャ……。


ガチャ?


「あ! お姉ちゃん」

「ちょ!!!!!!」


楓がお風呂に入ってきたのだ。

俺は慌てて湯船の中でくるっと回り楓に背を向ける。


「何が、あ! お姉ちゃん……だよ!」

「姉妹なんだしいいじゃん」


と当然のように髪の毛を洗い始めた。

そ、そうだよね。

姉妹なんだし、妹の成長振りを確かめ……

いやいやいやいや。

そこはイカンでしょ!

ザバっと湯船から立ち上がり


「俺は先に出るよ」

「え〜もう出るの?」


楓が待ってよとか言ってるが無視して、お風呂から出る。

ささっとパジャマを着て髪の毛は濡れているがタオルを巻いてリビングに行く。


「母さん! 楓のやつを止めてよ!」

「あら! いいじゃないの〜姉妹なんだし。たまには裸の付き合いが必要よ」


裏で糸を引いていたのは母さんだったか。

勘弁してほしいよ……。

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