〜登校日の朝〜
ジリリリリッ!!
「ふあぁ〜〜あ……」
目覚まし時計が自己主張を始めたため、バシッと叩き不快な音を静める。
朝だ。
憂鬱な朝だ。
「今日から高校生かぁ……」
そう。
今日から女子高校生なのだ。
普段はスカートは着用しないようにしていたが、学校指定の服なので仕方ない。
嫌々制服に腕を通しスカートを穿く。
すると突然、着替えている途中なのにノックもせずに俺の部屋のドアが勢いよく開け放たれた。
「お姉ちゃんおはよー!」
慌ててスカートを腰まで上げて
「ちょ!ノックぐらいしろよ!」
「お姉ちゃんが起きてるかなーって心配になってさ」
「子どもじゃないんだから起きてるわ」
「あ!お姉ちゃん私が着替え手伝ってあげるぅ」
「いや、いいから! ちょっとやめろって!」
そう言いながら楓は俺の制止を無視して勝手に制服をいじり始めた。
「はい!これで良しっと!」
鏡を見るとその鏡の中には女子高校生がいた。
完璧な女子高校生。
これが自分なのかと疑問を抱きつつも自覚する。
「女の子なんだなぁ……」
「ん?何かお姉ちゃん言った?」
「い、いや……なんでもない!はははっ」
「お姉ちゃん背が高いし脚長いし綺麗だからいいなぁ」
「でもスカート短くないか?」
とスカートの端を持ってヒラヒラさせながら妹に問う。
「これくらいが普通だよ〜」
「そうなのか?」
階段とかで見えるんじゃないか?
と心配していると
「あとは私の靴下あげるよ!新品だから大丈夫!持ってくるね」
靴下?
と頭にハテナマークを付けて待っていると楓が持って来た靴下は長い靴下だった。
「これ履いてみて!」
言われるがままに渡された靴下を履く。
「これって……」
「ニーハイは嫌だ? 確か桜ヶ丘高校って特に指定の靴下とかなかったと思うけど?」
まぁいいんだけど、まさか俺がニーハイソックスを履く日が来るとは思いもしなかった。
スカートが短い分これならまだ露出が少なく感じるからいいか。
「まぁいいよ。それより下に行って朝ご飯食べようよ」
「は〜〜い」
楓と共にリビングへ行き、母さんがパァっと明るい笑顔になる。
「あら、愛ちゃんとっても似合ってるわ」
「そりゃどーも」
「浮かない顔ね」
「そりゃそうでしょ。何が悲しくてこんな格好を……」
家族は元々男だったことに違和感を感じてないのか忘れたことにしてるのかは不明だが、女の子になった俺を最初から女の子だったように接してくれてる。
それはそれで嬉しいのだが、何かやり辛さがあるような……。
朝食を食べ終え登校する準備をする。
「愛ちゃんは髪型それで行くのかしら?」
「え? 別にこのままでいいと思うけど?」
今の髪型といえば腰付近まであるストレートの漆黒の髪をそのまま何もしていない状態。
面倒だからそのままにしているのだが。
「お母さんがヘアアレンジしてあげましょうか?」
眼をキラキラさせて俺に迫ってくる。
「いや、いいよ。今日は入学式だけだし」
「最初が肝心でしょ?」
「何がだよ」
「まぁまぁ。いいから、いいから」
と母さんが俺の髪型をささっと仕上げていく。
何か髪型を他人にセットされるっていうのに慣れないなぁ。
「はい、出来上がり! やっぱり愛ちゃん可愛いわ〜」
「あっ! 本当だー! お姉ちゃん可愛い!!」
「……。」
要はポニーテールなのだが、複雑に髪と髪を編み込んでいてお洒落な髪型に出来上がっていた。
良くもまぁこんな髪型を短時間でできるものだ。
「っといけない! もうこんな時間だよ」
「あっ! 私も出ないと遅れちゃう」
「あらあら、気をつけて行ってらっしゃい」
楓と玄関で靴を履きドアを開け
「じゃあ母さん、行ってきます」
「お母さん行ってきまーす」
「お母さんも後で入学式行きますからね」
「……。」
今日から女子高校生。
憂鬱だ。