第2話
僕は初め彼女の言ってる事を理解できなかった。
理解しようとしなかった。
それは、彼女が僕をからかっているのだと思ったからだ。
「未来?君は未来が見えるの?」
冗談のような軽い問いかけに彼女は少し呆れたように答える
「えぇ?それがどうしたの?」
まるで、未来が見えて当然のような口調の彼女は嘘をついているようには見えない。
「嘘じゃ・・・ないんだね・・・」
ようやく頭の中を整理することができた。
そして次に繰り出す質問内容を頭の中で入念にチェックする。
「じゃぁどうして君は・・・その特殊能力を僕なんかに教えてくれたの?」
さすがに答えずらい質問だったのか、彼女は口をふさいでしまった。
少し時間を置きその口が開きかけた。
その時チャイムが鳴った。下校時間を示すチャイムが学校中に響き渡る。
かき消される彼女の声。聞きそびれてしまった。
雨が少し強くなった気がした。
「ねぇ、一緒に帰ろうよ?」
突然の誘いに少し驚いた。
「えぇ?」
彼女はその大きくて綺麗な瞳で僕の顔を覗き込んでくる。
「だって、傘持ってないでしょ?」
どうしてだろう、嘘をつくつもりは無かったのに
「あ、うん・・・・持ってない」
嘘をつくつもりは無かった、けれど僕は持ってないと言ってしまった。
カバンの中で雨の音を聞いている傘は不思議に思っただろう
「どうして、僕を使わないんだ?」と
少し恥ずかしいけど、それでいて堂々と僕は彼女の傘の中に居た。
周りの生徒の視線を釘付けにする
優越感とまではいかないが、凄くいい気分だ。
下校中。彼女は僕の些細な質問にもきちんと答えてくれた。
学校で聞きそびれたあの質問を除いてのことだけど・・・
分かった事は彼女のこの能力は物心がついた頃から備わっていたこと。
初めはそれが何か分からなかったらしいが、今ではその能力を自由にコントロールする事が出来て、見たいときに誰の未来でも
自由に鮮明に頭の中に映し出す事が出来ると言う
僕の未来も、自分の未来も・・・