夢のような出会い
僕は出会ってしまった。
それは、遠いようで近く、思い出そうとしてもなかなか思い出せない。夢のような日のことだった。
その日の天気は晴れにも関わらず、天気予報で午後からは雨だと言っていた。
降水確率は90%僕は言われるがまま傘を持って学校に行った。
窓越しに眺めた空の色は薄くて淡い青だった。
季節は、春、全てが上手くいきそうな、そんな季節。
「雨なんて降らねーよな」
なにげなく呟いた独り言。
「いいえ、降るわよ!」
教室の隅々にまで響き渡りそうな透き通った声。
「えぇ?」
僕が振り返るとそこには、一人の少女がいた。
「雨、降るよ!」
きっと朝の天気予報を見たのだろう、でなきゃこんないい天気に雨が降るなんて
思うはずが無い。
彼女はそう言ってスタスタと歩き去って行った。
そして、午後になった。弁当に入っていた豚のしょうが焼きを摘みながら僕はまた外を眺めていた。
一段と鮮やかになった空の青。
「やっぱ降らねーじゃん」
青空なのに降水確率が90%・・・大ハズレだな。
妙に嬉しかった。あんなに言い張っていた彼女がどんな顔をするのか、僕は少し楽しみだった。
しかし大ハズレは僕の方だった。数学の時間あまりに眠くなり寝てしまっていたらしく・・・・
「俺今日は傘持ってないよー」と騒ぐ数人の男子生徒の声で目が覚めた。
「言ったでしょ?雨、降るって!」
あの声がまた聞こえた。
僕はとっさに言い返した。
「今日、天気予報で降るって言ってたからだろ?」
どう言い返してくるのか、彼女は少し時間を置いて少し微笑みながら言った。
「そうなんだ」
『そうなんだ』って・・・自分が未来でも予想できると言いたいのかこいつは・・・
「私ね・・・見えるんだよ・・・未来」
まるで夢のような、そんな出会いだった。