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異世界版桃太郎改め桃勇者

作者: ヤナ

子どもの日に間に合って良かった!

(あと10分で終わる)

昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。


おじいさんは人面樹の森(ダンジョン)へ魔物狩りに、おばあさんは妖精の泉へ洗濯に行きました。


おばあさんが泉で洗濯をしていると、泉に住む妖精達が騒ぎだします。


エーライコッチャ エーライコッチャ


おばあさんはどうしたのか尋ねてみますが、妖精達は慌てるばかりです。


エーライコッチャ エーライコッチャ


とうとう妖精女王まで慌てて出てきました。


エーライコッチャ エーライコッチャ


その時、空から光が降り注ぎ、おばあさんの前に大きな桃が現れました。その光はとてもとても大きな魔力でしたから、きっと神様からの贈り物なのでしょう。落ち着いた妖精女王はおばあさんに「この大きな桃は人々を、世界を救うでしょう。大切にしてください。」と言い残し、ほかの妖精達と一緒に泉へと帰っていきました。おばあさんは半信半疑のまま、とりあえず桃を家に持ち帰ることにしました。


家でおじいさんに泉でのことを話し、どうしようかと相談しました。二人は桃なのだからきっと食べ物だろうと、その大きな桃を切って食べようとしましたが、鉄の包丁では固くて切れません。そこでおじいさんは昔使っていたミスリルの短剣を持って来ました。おじいさんは若い頃、国でも有名な魔法剣士だったのです。


おじいさんがミスリルの短剣に魔力を込めながら桃を切ると、中から元気な男の子が出てきました。二人はその子を桃勇者と名付け、育てることにしました。


桃勇者はすくすくと成長し、他人(ひと)の何倍もの魔力を扱えるようになりました。


桃勇者はその魔力を使って、干ばつで困っているところがあれば魔法で雨を降らし、大雨の日に水が溢れかえって危険な川があれば魔法で大きな壁をつくり、魔物が出れば率先して戦い、周りの人々を次々に救っていきました。


桃勇者は魔力だけでなく、頭もとても賢い子でした。算術は商人顔負け、さらには麦によく似た“コメ”と呼ばれる作物の栽培にも成功し、村はどんどん豊かになっていきました。


そんなある日、貴族様から桃勇者に仕事の依頼がありました。人々を困らせるこの国の魔王をなんとかしてほしいと言うのです。

おじいさん達は魔王がいかに危険で恐ろしいか桃勇者に言い聞かせ、断るように言いました。


「いいえ、おじいさん、おばあさん。魔王が本当に人々を困らせているのならば、私はこれをなんとかしたいのです」


桃勇者の意思は固く、おじいさん達は説得を諦めました。その代わり、おじいさんは無事に帰ってこれるようにとおじいさんが若い頃使っていたオリハルコンの剣を桃勇者に与えました。おばあさんは桃勇者が好きな白米のおにぎりをたくさん握って持たせました。


旅立ちの日、桃勇者に声をかける者がいました。

「桃勇者さん、桃勇者さん、これまでの恩を返したいのです。どうか私も連れて行ってくれませんか?私は治癒魔法が使えるので、お役に立てると思います」

それは一緒に育った幼馴染である犬獣人の女の子でした。

桃勇者ははじめ断りましたが、女の子は諦めません。結局、桃勇者は幼馴染の熱意に負け、一緒に連れて行くことにしました。幼馴染は頭を撫でて貰って顔を赤くしながら、耳と尻尾をパタパタと振って喜びました。


途中立ち寄った街で、サル顔の冒険者がパーティーを組もうと誘って来ました。

「桃勇者さん、桃勇者さん、ひとつあっしと手を組みませんかね?貴方達の実力は申し分ないが、何せ魔法職(桃勇者)回復職(犬獣人)だけだ。優秀な戦士(にくのカベ)が必要でしょう」

はじめはお金目当てにみえた冒険者も、孤児院の子どもたちのためにお金を稼ぐ、義理人情に厚い人だと分かり、桃勇者達と友情を深めていきました。


魔王城への道すがら、ドラゴンの巣にも行きました。悪人達によって巣を荒され、家族を失った子ドラゴンを助けたのです。もちろん悪人達は懲らしめました。

「助けてくれてありがとー。ひとりぼっちはさみしいよー。一緒に行きたいなー」

ドラゴンは人々に魔物(ペット)として扱われているので、桃勇者達と一緒にいるともっと辛い目にあうかもしれません。でも子ドラゴンは人化の魔法を使えたので、誤魔化すことができました。


とうとう魔王城へ挑む日です。桃勇者達は『魔王を倒し、世界に平和を!』と気合いを入れ、おにぎりをみんなで分け合って食べました。これでみんなの心は一つです。


魔王城へ子ドラゴンに乗って空から攻撃をしかけました。仲間になった子ドラゴンはすっかり成長して、桃勇者達を乗せて飛べるのです。

魔王城の兵達は大きな子ドラゴンに驚き、弓や魔法を飛ばしてきますが、飛んでいる子ドラゴンには届きません。

ですが相手の攻撃がやまないので、着陸もできません。


「よし、あっしが下の奴らを止めてきますぜ!」


サル顔の冒険者はそう言うと子ドラゴンから飛び降り、邪魔な兵士達をバッタバッタと倒していきます。槍で突き、剣で刺し、時には敵の武器を奪って戦います。無双です。


「外の兵士は任せてー」


桃勇者達を降ろした子ドラゴンも戦います。城の外からブレスを浴びせ、閉じた門を尻尾と爪の攻撃で壊していきます。


「桃勇者様達に続けー!!」


国の貴族も兵士を連れて協力に来てくれていました。一人一人の勇気ある兵士達が一丸となって、魔王城の守りを少しずつ崩していきます。


みんなの協力のもと、桃勇者と幼馴染みの女の子はとうとう魔王と対しました。

魔王は側近を2人連れていました。

桃勇者が魔王に斬りかかろうとするも、側近達が立ち塞がります。魔王はその後ろから魔法で桃勇者達を狙います。

桃勇者は怯みません。諦めません。止まりません。2人の側近をオリハルコンの剣と無詠唱魔法で相手どり、多重魔法で魔王の攻撃を防御します。


深く踏み込み、オリハルコンの剣を振り上げます。側近が仰け反り、その隙に無詠唱で吹き飛ばします。一人目。


衝撃波に続いて、光の槍で二人目を狙います。側近は槍を受けながらも相打ち覚悟で突いてきます。桃勇者は片腕に傷を負うも、斬り伏せます。二人目。


「桃勇者様負けないでー!」

幼馴染みの女の子が傷を治してくれます。


魔王はその間に儀式魔法を完成させました。たくさんの魔力の玉が桃勇者を襲います。

桃勇者は多重魔法で盾を重ねて出し、耐えます。

魔王の攻撃は終わりません。その場から動けない代わりに魔力が続く限りずっと攻撃し続ける儀式魔法なのです。

桃勇者は耐えながら少しずつ魔王に近づいていきました。盾が一枚砕け、二枚消え、三枚がひび割れました。

とうとう桃勇者は魔王の下へたどり着き、オリハルコンの剣を振るいました。魔王は敗れました。




その後のことです。


サル顔の冒険者は戦いで足に矢傷を負い、冒険者を引退しました。そして冒険者ギルドの5代目ギルドマスターになったのです。


桃勇者はというと、今回の働きが評価され貴族の養子になりました。協力してくれた貴族の娘と、幼馴染みの犬獣人の女の子の2人をお嫁さんにもらい、大きなお城に住みました。おじいさんとおばあさんも呼び寄せて、子ドラゴンとも一緒に、末永く幸せに暮らしました。


だからこの国の王様、お姫様は代々髪が桃色なんだそうですよ。


おしまい


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― 新着の感想 ―
[良い点] 独特の世界感があって良かったです! 私もこちらでお話を書かせて頂いていますが、なかなか独自の世界観を演出出来なくて苦労しています… これからも執筆活動をぜひ頑張ってください!
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