手紙
あの人に手紙を書いた。好きだと言えないから。手紙は赤いハートのシールで封をした白い封筒に入れた。返事はない。だってこの手紙はまだ私の元にある。返事なんか来るはずもない。そもそも好きだということも書いてない。白紙の紙に封をしてそれらしいシールを貼っただけ。宛先も送り元も書いてないただの紙と意味深なシール貼った封筒というだけ。
夕焼けの空は眩しくて教室のさして綺麗でもない床に座り込んだ私はその紙切れは静かに見つめる。
好きという気持ちはよくわからないものだ。目が合えば嬉しいし、顔を見ないと寂しい。けれど目が合えば恥ずかしいし、顔を見ると嫉妬する。全く相反した感情が同時にやってくるなんてほんとうにおかしなものだ。
好きなものをただ好きと愛でているだけなのに、どうして嫌な気持ちになったり寂しい思いをするのだろう。
夕闇に変わりつつある空に答えはない。封をした手紙にも、からっぽの教室にも、そして私の心にも答えはない。
私はぺたんこの鞄を持って冷えてしまったお尻をはたいて立ち上がる。シンとした廊下を、階段を移動して扉なんてない下駄箱に手紙を入れた。履き潰した自分の靴を取ると何事も無かったように帰路についた。
何も書いてない手紙に、思いがないと誰が決めた?