正義の見方3
朝、五月蝿いアラームに目が覚めた。目を擦りながらあたりを見回すと俺の部屋でないことに気がついた。半覚醒状態の頭で考えているとドアを開けてひとりの人物が入ってきた
「あ、起きてたんだ。おはよう実くん」
俺の兄貴の妻、俺のお義姉さんだった。そこで思い出した。昨日結局兄貴は帰ってこず、そのまま泊まったんだった。まあ、女性ひとりの家に義理の弟とはいえ男を泊めるのもどうかと思うが。
「えっと……お願いがあるんだけど」
「朝ごはん作ってくれなんて言わないですよね」
「うっ……ダメ?」
「……冷蔵庫の中身勝手に使いますからね」
雪さんは料理ができない。苦手ではなくできないんだ。ゆで卵を作るとき電子レンジでやろうとするし塩と砂糖を間違えるし分量なんて目分量だし
という訳で只今絶賛料理中です。とりあえずベーコンと卵とパンがあったからベーコンエッグとトーストを作った。これくらいの消費なら兄貴も怒らないだろ。
あとトーストがやき上がるのを待つだけになった時、兄貴から着信があった。
「んだよ。昨日は帰ってこないでなにしてたんだよ。まさか浮気か?」
『そんなわけないだろ。話があるから今すぐ駅前のいつもの喫茶店に来てくれ』
兄貴からの電話はろくなことがないそれをわかっていたのに俺は雪さんに一足先に朝食を食べてもらって駅前まで急いでいった。あとこの信号を曲がるだけという時に駅方面から爆発音と地鳴りがした。思った通り厄介事になっちまったよ。そんなことを思いながら車から降りて駅方面に走り出した。
駅方面は悲惨な結果だった。ビルは崩れ、瓦礫の山となり悲鳴が飛び交っていた。正直五月蝿い。そんな中で俺は兄貴と同じ制服の人が避難誘導しているのが見えた。相変わらず仕事の早いことでそんなことを思っていると後ろから声をかけられた
「何をしているの真くん。早く救助活動にあたってください」
振り向くと赤い髪をポニーテールにした人が立っていた。制服や言動から兄貴と同じアマテラスの隊員ということはわかるがまさか兄貴と間違われるとは
「あの俺は兄貴じゃ…」
そんな俺の言葉を遮るようにまた爆発があった。結局、俺は名前も知らない女性と兄貴と偽って救護作業に取り掛かった。
救護と言っても瓦礫をどかしたり危険な危険な地帯に入るわけではなく声をかけて中に人がいないか調べたりケガ人を救護室に運んだりだった。兄貴が来たらこっそり交代しようと思っていたが一向に来る気配がない。俺と違って『正義の味方』である兄貴がこんなことになってるのに来ないなんてわけがない。まさか死んだか?なんで思いながら俺は名前も知らない女性と一緒に悲鳴とサイレンの二重奏の中を歩いていた。
この日を境に、兄貴は家に帰らなくなった……