1/2
プロローグ
白球が宙を舞い、地を這い、そして彼らは歓喜し、煽り、励ます。
金銀に輝く楽器たちは音を奏で、だけど私の黒光りするそれはあまりよく響かない。
届いて、いるのだろうか。
彼らに、この、音が。
ーーー彼、に、この、気持ち、が。
赤くなった頬は、見えていないだろうか。
彼の視界に、私は、いるのだろうか。
彼の世界に、私は、どれほどいるのだろうか。
考えても、無駄なことは、分かっているけれど。考えずには、いられない。
「がんばれ…」
囁いたこの声が、届くことを、届かないことを祈って、私はまた、音楽を奏ではじめる。