外伝:夜襲
久しぶりの投稿です。
今回の舞台は本編より1年後の世界で行われた戦いの序章です。
この日の夜空は私が生まれてきて、今日までで一番美しいかもしれない。
まるで、死地にいく私に対して、神が最期に美しいものを見せてあげようと言う粋な計らいのように私は感じた。
日本帝国海軍陸戦隊。
まだ創立されて間もない組織である。
私はそこに所属していた。
というよりは、左遷されたと言う表現のほうが正しいかもしれない。
元々私は海軍軍人ではなかった。私は立派な陸軍軍人だった。
軍内部での成績もそこそこで銃の腕前には自分なりにも自信があった。
ある日、上官に呼び出されたかと思うと、いきなりここの所属にされてしまったのだ。
まったく迷惑な話である。
質素な小型船、輸送船の中ではまるで袋詰めにされたお菓子のように兵士たちがいた。
ある者は狂戦士のように目が血走り。
またある者は人形のように目に光沢がなくなっている。
私、尾崎薫は後者のような状況であった。
人形のように静かにその場に座り込み、手には体の一部のようになった三十八式歩兵銃を握っていた。
正直言って、この輸送船の乗り心地はお世辞にも良いとは言えない。
まるで育児が下手な母親の揺らす揺り篭のように大きく揺れ、大きな波を乗り越えるたびに船首に波がぶつかり、水しぶきが雨のように降り注ぐ。
私たちが上陸する敵の重要拠点である『ハワイ島』まではもうすぐだというが、正直言ってそういう実感はまったくなかった。ただでさえ鈍い腹時計が度重なさる戦いのせいでもう修復不可能になってしまった。
はぁ、私はため息を漏らす。まるで腹の中にたまった鬱憤を吐き出すように。
私は伏せていた視線を上へ向けた。やはり夜空は先ほどと変わらない。
我々、陸戦隊第1歩兵大隊の目的は敵地占領ではなくあくまで敵の錯乱であった。夜中にまるでニンジャのようにオワフ島にに上陸し、海岸線に存在するレーダーサイトを破壊するのが目的だ。
この作戦は正直言って成功はするだろうが、生存率は高くはなかった。つまりは、破壊は可能だが、またかえるのが困難だとい話だ。
しばらくぼぉーと空を眺めていた尾崎を現実に戻したのはこの輸送船に乗っていた中隊長の声だった。
中隊長はもうすぐ敵地の目標だということを簡潔に伝える。
(いよいよか・・・)
尾崎は複雑な心境で握っていた小銃をさらに強く握った。こころではわからなかったが、体は正直らしい、尾崎は自覚がないが怯えていた。
『オワフ夜襲』は結果としては成功した。上陸した第2大隊の援護により、特殊工作隊の爆弾を仕掛けたが無事に起爆、敵の目を潰すことが出来た。
しかし、予想外の事態が起きたのはこの数分後であった。
撤退地点へ帰還する大隊の前に思わぬ敵兵が立ちはだかったのだ。
彼らはまるで彼らの上陸を予知していたかのようだった。と後に尾崎という隊員が言った。
実を言うとこの時、大隊が接触した部隊はたまたま訓練でこの地域に展開していた部隊だった。つまりただ単に運がなかったのだ。
「夜での戦闘はまさに恐怖以外の感情をすべて排除した。
異様に光る弾道に、暗闇から聞こえてくる短い断末魔。
おそらくまだひよっこの新兵だったたら恐怖でトチ狂うと、私は思いますよ」
と尾崎隊員が語った。
<ハワイ島攻略戦:隠された真実>より




