第14話:レイテ航空戦(その2)
今回は妙に随筆が早かったので早く投稿できるようになりました。
日本帝国:広島県呉市
戦艦紀伊はこの呉港にて改修を行っていた。主な改修内容は対空砲や機銃の増設という簡単な内容であったが、それでもしばらくは戦線を離れることになる。そんな紀伊を二人の男が遠くから見ていた。
「まったく、何も今でなくてもよかろうに。」
「そうですか。」石川は愚痴のような口調で隣にいた永田に言った。
「ですけど、しばらくは内地で骨休みができそうです。戦艦も人間も適度な休職が大事ですからね。」とやや不機嫌になっている石川をなだめるような口調で永田は言った。それを聞いた石川は何か複雑な顔をしたが、ちがう話題に話を変えた。
「フ号作戦はどうなっているのだろうか?」
「気になりますか?」
「もちろん。」石川は当然だと言うように大きく頷いた。永田も苦笑いをしていった。
「心配ありませんよ。南雲は勢いがあればなんとかなるヤツですから。」
「・・・・・・」それを聞くと石川は何も考えずに空を見上げた。
同時刻:レイテ島
ベルの機体は敵機の放った機関銃の弾を右旋回でなんとか回避すると、なんとか後ろに食らいついている敵機を振り払おうと激しい移動をした。しかし、なかなか振り払えない。
「クソ!」ベルは唇を噛み締める。
しかし、このあとベルも予想外な出来事が起きた。突然敵機が右主翼から煙をあげ、高度を急速に下がり始めた。
「・・・・あいつだな。」ベルは何があったのか一瞬わからなかったが、すぐに理解して、口元を上げた。
「アーク。攻撃隊の様子はどうだ?」ベルは通信機で先ほど敵機を撃墜した僚機に問いかけた。
「敵の激しい弾幕によりなかなか思うように行っていない模様です。」アークという僚機のパイロットは平然を偽ってしている気だろうが、ベルには焦りが出ていたのがすぐにわかった。
「わかった。」ベルは簡潔に返事を返した。次の相手が来たからである。
日本帝国遊撃艦隊 とある駆逐艦
雷の船体からは激しい弾幕が発射されていた。それはいかにも修羅場という感じであった。
「敵機が向こうに行ったぞ!!」
「空母には近づかせるな!!」
「敵機1機撃墜!!」次々報告が飛び込んでくるここ対空砲台では兵士たちがまるで親の敵の如く対空砲や機銃を乱射という表現が似合う射撃を行っていた。
「なんとか凌げますかね?」
「さぁな。勝利の女神が微笑むことを祈るんだな。」戦闘中というのにも関わらず非常に軽い態度で副長の質問に答える艦長。
「それより、空母に被害は出てないな?」
「は。何発か近弾がきましたが、なんとか・・・」すると見張り員から報告が入った。
「”「須佐之男」上空に敵機!!”」
「何!?」
「・・・・・・」副長が慌てて双眼鏡で「須佐之男」の方を向くと、須佐之男の上空には敵機が数機飛んでいた。須佐之男も対空砲や機銃で追い払おうとしているようだが、空母の対空能力は高くない上に対空砲自体なかなか当たるものではない。
何機かが須佐之男に向けて急降下を始めた。爆撃を試みているのだ。須佐之男は対空砲を放ちながら右に旋回を始めた。大型艦は機動性が悪いのでこのように前もって旋回させるのがいいのである。3機の敵機は500kg爆弾を二発ずつ計6発を投下した。須佐之男はそのうち5発はギリギリ回避できたが。1発は飛行甲鈑右舷に着弾してしまった。
「ああ、須佐之男が・・・」副長はまるでこの世の終わりのような声で嘆げんだ。しかし、副長を尻目に艦長は冷静な視線で須佐之男を見た。
「ひゃっほ~~~~~~!!」須佐之男に爆弾を命中させたパイロットはまるで、キジを仕留めた猟師のような声を上げて喜んだ。
「どうだキャサリン!!俺のことの勇姿を見てくれているか?」パイロットは高度計の側にじゃってある去年他界した恋人の写真に向かって言った。
彼は須佐之男を見た。飛行甲鈑から黒煙が上がっている。さすが大型艦だ、だが飛行甲鈑には穴は空いただろ。とパイロットは思ったが、このあとの光景を見て言葉を失った。
「・・・嘘だろ、神様・・・」パイロットは神に祈った。この光景が夢であることを。しかし、この光景は紛れもない事実であった。
彼の見た光景。それは煙が晴れ、そこには無傷の須佐之男があった。