第13話:レイテ航空戦(その1)
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1942年 フィリピン レイテ島沖上空
かつて、この空は平和であった。どこまで続く青い空や飛ぶ海鳥たちの囀りが聞こえていた。
しかし、現在は違う。穏やかだった空は日の丸と青い星を象った飛行機が縦横無尽に飛び回り、海鳥たちの囀りは、エンジンの爆音と機銃の音で全く聞こえなかった。
「北島!下に潜り込まれるぞ!」
「了解!」遠藤が近くを飛んでいた北島の機体にアドバイスをした。しかし、すぐに自分にもそのような余裕がなくなってきていた。敵戦闘機1機が自分めがけて迫ってきていた。
「えーい!邪魔だ!」遠藤はスロットルを上げ、操縦桿を捻り、機体を急旋回を行った。迫ってきた戦闘機を急旋回で後ろを取り、零式機銃を発射ボタンを押し、発射された弾丸は少し機動が曲がったが、敵戦闘機の操縦席部分に被弾し、パイロットと思われる鮮血が飛び散ったのが一瞬だが見えた。
(う~む、やはりこういうのを見るのはあまり良い気分ではないな)戦闘機の空中戦。いわゆるドッグファイトは歩兵の戦いとは違い敵の人型の姿が見えないので、精神的には楽だが、たまに見えてしまうさっきのようなものは”実戦組”である遠藤はなれなかった。
実戦組とは、中華内乱(国民党と共産党との内戦)の際に顧問団として戦闘に参加した人たちをそう言う。
日本はイギリスと共に国民党を援助し、遠藤はかつて重慶上空で共産党の戦闘機中隊と九六式艦上戦闘機に乗り、戦闘を行った。これが遠藤の初めての実戦であった。
(・・・たく、俺はなんで今昔のことを思い出すんだ。そらぁ、あの時は仲間を一人も失うことなく戦って印象深く記憶に残ったが・・・)などと思っていたのもつかの間、また敵戦闘機が来襲した。
「よし!次のお客か!」遠藤は気を切り替えるようにやってきた戦闘機に飛びかかった。
「なんだか遠藤さん妙に張り切っているな。」と北島は遠くでぼやいていた。
空戦エリアより数キロ 駆逐艦 桜
桜は日本海軍の戦時量産型の駆逐艦で現在は同類艦が7隻ほど完成している。この駆逐艦の大きな特徴は対空戦闘を重視している点である。今までの日本海軍の駆逐艦には雷撃のための魚雷発射装置がついていたが、この艦には発射装置が搭載されておらず代わりに対空砲などを増設されている。
「艦長、敵攻撃隊が・・・」
「ほう、もう来たか。」そこにいたのは副艦長よりも10歳以上若い”桜”艦長”石ノ森林助”がいた。彼は30代にしてこの駆逐艦の艦長に抜擢された逸材であった。
「対空警戒を大にしろ。」(たぶん、対空砲では戦闘機落とせないと思うが・・)彼は後半は心の中で言った。対空砲はそうバンバン当たるものでもない。主に戦闘機の爆撃の妨害程度にしかならないが、それでもかなり有効ではあった。
石ノ森は首にかけていた双眼鏡を目に当て、空の彼方を見た。
「流石に・・・まだ見えんか。」と32歳とは思えないほどの貫禄を出しながら呟いた。
同時刻、アメリカ軍の攻撃隊、爆撃隊は編隊を組み、日本遊撃艦隊に迫っていた。
「よいか!我ら第1次攻撃隊は駆逐艦をねらえ!空母や大型艦はひとまず後回しだぞ!」とベル少佐が自分の率いる中隊に通信を入れ、それに部下たちは答えた。
「”少佐、そろそろ視認出来る距離です。」
「よし、わかった。」ベルは少し部下のことを気にかけていた。なぜなら、彼の部下はまだ訓練学校を出て間もないからだった。彼は運がなかった。ハワイ沖海戦の時に、上空を飛ぶ日本軍の戦闘機中隊と戦闘を行った。しかし、日本機の性能と技量に負け、彼のいた部隊は彼を残して全滅した。
(あんなことはもうさせない)ベルは心の中で誓った。戦場で仲間をひとりもうしなさせないことはかなり難しいことはベルでもわかっていた。が、それでも一人でも失わせない。ベルはそう考えていた。
「全機!突入するぞ!」彼の命令に部下たちは何かを感じたのか、ベルの合図に賛同した。