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第11話:休職

投稿が遅れました。すみません。

午後8時 大日本帝国:首都・東京市

東京市とは今で言う東京都にあたる場所にある地名で、日本の首都として、政治や経済の中心地として発展してきた所である。街にはビルが立ち並び、繁華街のネオンが美しくも危険な匂いを出しながら輝いている。地上では自動車が横須賀とは比べ物にならない数が連なっているかのように走り抜けていく。とあるイギリス人作家はこの光景を見て”東洋のニューヨーク”と例えたのもうなずける、そう思いながら永田昭雄大佐は東京の町を歩いていた。

もともと彼がここに居るのには理由があった。


遡ること7時間前、午後1時 大日本帝国軍部省海軍庁

横浜の赤レンガ倉庫を連想させるような作りをした海軍庁の建物に入り、永田が向かったのは海軍庁のトップである”米内光政よないみつまさ庁官の部屋であった。


その前にこの世界の軍隊の体制について話しておこう。

一番上が天皇で次に内閣と史実通りなのだが、このさきが異なっている、まずこの世界では海軍省や陸軍省は”軍司令部”に統一されていて、その下にそれぞれ”海軍庁”と”陸軍庁”がある。


なんだかんだあって庁官室の扉の前に到着した。永田はため息をついた、緊張の時に起きるため息である、口元が上がって微笑んでいるように見える永田の顔も緊張していた。そして扉をノックする。「入ってくれ。」

「失礼します。」永田は部屋に入室し、一礼した。

「大日本帝国海軍第4艦隊旗艦”紀伊”艦長 永田昭雄大佐であります。」永田は海軍式の見事な敬礼をした。

「ふむ、わざわざ横須賀からよく来てくれた。まぁ、そんな緊張せずとも少し力をぬけ。」そう言われても簡単には緊張が抜けない永田であった。永田はたしかに誰にでも優しく気軽に接して部下からの人望も厚く、そして人脈もある。そんな永田でも緊張しているのには理由がある。それは米内庁官対してではなく、隣にいる”秘書”に対してである。

「久しぶりですね。”霧島秘書官”。」顔が引きつっているのが自分でもわかった。この丸メガネをかけた細身で白髪頭の男は、”霧島きりしま 弘人ひろと”。白髪のせいで年齢よりも老けて見えるが、実際は永田とあまり変わらない47歳である。

「ええ、久しぶりですね。”永田中佐”」

「”大佐”です。昇進したんですよ。」霧島の言葉を受け流した永田に米内が質問をする。

「ああ、ところで永田大佐。九九式水中弾の戦果はどうだったでしょうか。」

「はぁ!四発で敵戦艦を見事撃沈させました。しかし・・・」途中で言葉を濁らす永田だったが、それでも話を続けた。

「あれは命中させるのにかなり技量がいるものだと思います。」

九九式はたしかに敵戦艦を撃沈させたという大戦果をだしたのだが、九九式は普通の砲弾とちがって水中弾、つまり水中を突き進んで敵に命中させる特殊な砲弾だった。そのため優秀な砲撃士でなければ命中は難しいのである(”紀伊”の砲撃長は第一次世界大戦で実戦経験がある古参兵で、かなりの技量があった)。

「ほぉ、なるほど・・・貴重な助言を感謝する永田大佐。」永田は一礼をして部屋から出ようとした、しかし、後ろから不意に霧島が呼び止めた。

「待てよ永田、そんな態度いつものお前がするような態度じゃないだろ。」突然のことで言葉で一瞬動きを止めた永田に対して、さらに追い討ちをかけるように霧島は言った。

「もしかして、まだ”あのこと”を気にしているのか?」図星を突かれた永田はしばらく動けないでいた。そして力を振り絞って、振り向き、やっと言葉が出た。

「そんな事ないですよ。」と精一杯の笑顔で永田は答えた。

「・・・・・・そうか、それなら気をつけて帰れよ。」霧島にそう言われ、永田は庁官室を後にした。廊下を歩きながら永田はやってしまった、と心の中で思いながら歩いていた。霧島は嘘を見抜くのが得意だからな、絶対あの笑顔も作り笑顔だってわかったはずだ。永田の足取りは非常に重々しいもので、背中は重いオーラが漂っているように見えた。


そんな永田は今新橋駅前を歩いていた。新橋の飲み屋にでも寄ろうと永田は考えていたのだ。やはり駅前とあって居酒屋が集中していてまさに居酒屋激戦区とかしていた。

「さて、どこにしようか。ここはうまいが少し割高だし、あそこは安いが混んでいるなぁ。」などとぶつぶつ独り言を行っていると、どこからか、どこかで聞き覚えのある声がした。

「大佐~!!」なんか聞こえたが、聞こえなかったことにしよう。

「大佐~!!聞こえているんでしょう~!!大佐~!!」聞こえない聞こえない。

「大佐の秘密をここで宣言しちゃいますよ~!!」


ここ居酒屋”浜屋”は料理の値段も安い上にうまいため繁盛していた。客は皆酔いが回っているおかげで宴会をしているかのような騒ぎ様であった。一人を除いて・・・・

「・・・・で、なんでお前らがここにいるんだ。」永田は目の前にいる吉田と高橋兄弟、そして鈴木少尉に睨みつける。

「どうしたんですか?眉間にしわなんてよせちゃって。」

「どうしてだと思う・・・」眉間のしわをぴくぴきさせながら永田は吉田に言った

「大佐のおごりで飲んでいるからですか?」

「そんな大したことでこんな風にはなっていない。」永田の発言で少し考えた吉田が手を打ち答えた。

「わかった!せっかくの休日を邪魔したから・・」吉田は言葉を途中でやめた、なぜなら永田がハワイ沖海戦のような黒い笑みを浮かべていたからである。一体どんなことを言われるのだろうかと身構えた吉田だったが、永田が言った言葉は彼の思っていたこととは裏腹だった。

「・・・・正解だ。」吉田は緊張が溶けて骨を抜かれたみたいにその場に倒れた。

「あのぉ、私たちのこと忘れてません?」と鈴木少尉が小さく手を上げかしこまるように言った。

「ん・・・・・・ワスレテナイヨ。」

「忘れてたでしょ!!」しばらく黙り込んで棒読みでいっても納得のなの字もなかった。

「鈴木少尉。そこ言葉遣い、俺以外でつかったらどうなっているかわかっているよな、確認するけど。」鈴木は思わず両手で口を塞いだ。軍隊は縦社会で上下関係が非常に厳しいのである。

「すみません、大佐。」

「何、俺以外に言わなければ問題ないだけだ。」落ち込む鈴木をフォローする永田であった。

「はぁ、本当はひとりでちびちび行きたかったんだが・・・とりあえず焼酎一升!」気を取り直して永田は店員に注文した。





          

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