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第9話:咆哮(その3)

投稿が遅れてすみません。ただまたテストがあるのでまた遅れます。

海戦が開始して数時間は経っていた。

日米双方共に戦艦の射程位置まで接近して砲撃を開始していた。始めは日本の「大和型」が46cm砲の射程を生かしたアウトレンジ攻撃(射程外からの攻撃)で先制を取るも今現在では日本側にも損害が出てきた。

「くそ!夾叉を取られた!」「伊勢」艦長:山口多聞が言った。日本戦艦でレーダーを搭載しているのは「大和型戦艦」と「紀伊型戦艦」、そして、予算の都合上「長門」にのみ(これでも急ピッチで間に合った方)搭載されている。だから伊勢のような旧型には開戦までに配備が間に合わなかった。そのため旧式艦の命中率は新型より劣ってしまった。

「‘敵砲弾来ます!‘」見張り員のパイプ越しの声が聞こえ、しばらくすると艦橋に大きな衝撃が響いた。主砲発射の時とは比べ物にならないくらいの衝撃が。

「被害報告。」

「艦後部に敵弾1発が着弾。戦闘に支障はありません。」とうとう日本側にも被害が出始めた。


一方、アメリカ機動艦隊では・・

「向こうに行ったぞ!!撃て、撃ち落とせ!!」

「うわぁー!!来やがった!!」

アメリカ機動艦隊は日本軍の攻撃隊による攻撃に晒されていた。

「相変わらず凄まじい弾幕だな。」

「そうですね。なんか‘親の敵のよう‘とはこのことですか」などと遠藤と北村つぶやいていると、「3時の方向より敵機!」という報告が入った。

「よし!次のお客だ1いくぞ!」

「了解。」2人は自分めがけて飛んでくる敵機に向かっていった。


日本軍雷撃部隊

「司令!3時の方向に艦影ありです!その数12!」

「うむ、おそらくアメ公の雷撃部隊だろうな」そのように軽巡”夕張”で言うのは、第2雷撃隊司令官:羽柴はしば 茂蔵しげぞう少将である。

「よし!攻撃目標を変更奴らを叩くぞ!」その命令に参謀たちは驚愕した。なぜなら本来の彼らの任務は戦艦部隊に雷撃を仕掛けることだったからである。

「ああ、言い方間違えた。半数は敵雷撃部隊に目標を変更。」何をどうやったら言い間違えるのかとここにいる皆が思った。

なにはともあれ、急遽第2雷撃隊は一方は戦艦をもう一方は敵雷撃隊を叩くために分立。羽柴は戦艦を担当することになった。


戦艦紀伊の周囲に水柱が上がった。位置的にも夾叉だった。

「くそ・・とうとう夾叉を取られたか。」さすがにアメリカ海軍も負けてばかりではなかった。日本側にも被害が出始めていた。

「撃ったのは「ネバタ」だな。命中弾が何発か出していたみたいだが、まだ降伏する気はないみたいだな。」永田はにやりと笑った。

「だが、これで終わりだ。第4射、射てー!」少し間を置いて、紀伊の12門から砲弾が火を吹き、真っ直ぐネバタに向かっていった。

そして60秒後、ネバタに4発命中した。前方に2発・中央の艦橋に1発・後部に1発が命中した。前方に命中した砲弾は1発は主砲の火薬庫に潜り込み、信管が起爆し引火、ネバタはその爆発で真っ二つにおれ轟沈した。

「よぉし!次は相手は・・」”戦艦紀伊が実戦で初めて戦艦轟沈させた”このことは紀伊の艦長として永田は誇りに思った。


戦艦大和はその46cm砲を轟かしていた。今の所、大和は戦艦1隻、重巡1隻を撃沈させていた。

「司令、雷撃隊です!」と喜びがこちらにも伝わるような声で見張り員から報告があった。たしかに味方が少しだけでも増えるのは心強いが、流石に駆逐艦だけの部隊ではあまり変わらない気がするとこの時大和の航海長をしていた「佐々木 直助」は思っていた。

「よし、第2雷撃隊。済まないが足止めを任せたぞ。」その言葉に佐々木は少し動揺したが、すぐに理解した。

(そうか、”囮”は彼らのことだったのか。)彼は心に中で思った。


実は作戦会議の時に艦隊決戦の際、敵戦艦の攻撃から本陣を援護する”囮”の担当を詳しく言っていなかったのだ。それには理由がある。囮は第2雷撃隊を担当させる予定だったのだが、司令官の羽柴はかなりプライドが高い人柄だったためこのような仕事を納得するはずがないと判断して、かわりに彼らには”奇襲”と知らせて納得させた。だから彼らは自分たちが味方の囮になっていることを知らなかった。(そのことを知らなかった佐々木は第2雷撃隊は援軍かなにかだと思っていた。)


「まぁ、”嘘はついていない”がな。」とニヤリと笑い、心の中で佐々木はつぶやいた。たしかに立場的には”囮”だが、うまくいけば敵への”奇襲”になるからである。


「よぉし!野郎ども、いくぞ~!」と海賊にでもなりきったような口調で羽柴は部下たちに激をを飛ばす。

「アメ公に俺たちの底力みせてやれ~!!」アドレナリンを大量に分泌し、興奮状態になっている羽柴は置いといて、雷撃隊は勇敢に煙幕(機関を不完全燃焼させることで黒煙を吐き出し、その黒煙で敵からの目くらましにする)を巻きながら、第2雷撃部隊は敵戦艦郡に突っ込んでいく。

敵戦艦は雷撃部隊に高射砲で応戦する。主砲だとインターバルや連射性などで高速で動く駆逐艦には不向きであったからである。

「怯むな!戦艦だけに美味しいところを持って行かせるな!」羽柴は連射される高射砲に臆することなく突っ込んでいく、だが、羽柴の感情とは裏腹に次々と被害報告が届く。

”雪風(陽炎型)”主砲に命中、主砲破損。

”風雲(夕雲型)”敵砲弾が環境に命中、走行不能。

これはあくまで被害が大きい艦艇で、被害が小さいのを含めないと被弾していない艦がないくらいであった。

「敵との距離1万2000を切りました!」

「いいぞ!耐えてくれ、皆!」「夕張」自体もすぐ近くに着弾した影響で損傷を受けていた。

「全艦、雷撃戦のよういをしろ!!」羽柴の指示したが、第2雷撃部隊の全艦艇はもうすでに魚雷発射口に魚雷を装填していた。

敵の高射砲が次々と飛来しているなか、それでも彼らは突き進んでいく。そして・・

「敵艦隊との距離1万を切りました。」

「全艦面舵いっぱい!」第2雷撃部隊は米戦艦群に対して、平行になる位置づけで航路を行った。

「俺の合図で魚雷発射だ。」羽柴は先程までの興奮を抑えたような口調で言った。そして全艦が敵戦艦群と平行になった時に、

「今だ、発射~!!」第2雷撃部隊の全艦艇が右舷の魚雷発射口から次々と九五式酸素魚雷を発射していく、その数は52本。

酸素魚雷とは、通常の魚雷で使用される圧縮空気ではなく酸化剤として酸素を使用し、燃料と混合して燃焼させ炭酸ガスを排出するのが特徴である。ちなみに雷跡が見えにくいのもその特徴の一つである。

52本の魚雷はそのほとんどが外れたが、軽巡”北上”が射った数本が米戦艦”サウスカロライナ”の左舷に命中、大量の海水が侵入し、船体が大きく左側に傾きはじめる。”北上”の発射した魚雷は、”サウスカロライナ”の左舷後部に被弾した。サウスカロライナは水面上の防弾対策はちゃんとしていた、しかし、水面下の装甲はそれと比べて明らかに薄かったのだ。そこに魚雷を集中的にくらってしまい艦内の大部分が浸水し始め、もはやタメージコントロールも間に合わない状況であった。

第2雷撃部隊の成果は、戦艦1隻を撃沈と巡洋艦2隻を大破、また別働隊では軽巡3隻撃沈に駆逐艦を多数撃沈させた。


「・・・”あれ”はあいつに使用・・」と望遠レンズを眺めながら永田は言った。

「鈴木少尉、面舵50に進度を取ってくれ。」

「宜候!」と女性ながら自分と同じくらいの大きさの舵を全身を使って回す。

永田は艦内電話の受話器を取り、ダイヤルを回し、しばらくたって電話が繋がった。話し相手は砲撃長であった。

「砲撃長、次の砲撃だが、九六式から”九九式水中弾”に変更してくれないか。」

「え、あ・・はい了解しました。」砲撃長は少し動揺したのか言葉を詰まらせたが、すぐに承知した。永田が言った”九六式”とは”九六式通常弾”のことで”九九式”とは・・

「ふふふ、お待たせ子猫ちゃん」と目標にしている標的に向かって黒い笑顔をする永田、「またか」と半分呆れながら見ている石川中将と副館長、それを見て少し引いている鈴木少尉以下参謀長たちで紀伊の艦橋内では異様な雰囲気になっていた。鈴木はこの海戦のあとに石川中将に聞いてみたら永田は勝利を勝ち誇るとこのような黒い笑顔になるだしい。

狙っている艦は「ミシシッピ」である。もうすでに夾叉はとっている、”九九式”を試すのにちょうどいい獲物だ。永田は舌なめずりをし、額から冷や汗が流れた。

(はぁ、大砲屋としてこんなチャンスはめったにないな)と”満足のため息”を吐きながら永田は思った。

「第12射、撃て~!!」叫びつづけたせいか声が若干枯れている永田は今まで一番の大声を出し、それに共鳴してか、主砲の砲撃の際の爆炎も先ほどよりも巨大に見えた。

紀伊より発射された8発の砲弾は5発は遠弾だったが、3発はすぐ側に着弾した。着弾した砲弾は着水と同時に先端部分が外れそれが魚雷のように”ミシシッピ”に突っ込み信管が作動、巨大な水蒸気爆発(水が非常に温度の高い物質と接触することにより気化されて発生する爆発現象のこと)が発生。命中した右舷は根こそぎ抉られそのまま火薬庫に引火し、爆沈した。

「・・・・・」その光景を見ていた者は言葉を失った。九九式とは”九九式水中弾”のことで水中に着水後先端が外れ、真っ直ぐ突き進んでいく砲弾である。

その後、これ以上の被害が出ないようにするため、アメリカ太平洋艦隊は撤退を開始、これによりこの海戦、後に「ハワイ沖海戦」は集結した。


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